ヘーゲルの法哲学・国家論を現代の公共哲学の観点から読み解き、その思想がもつ可能性について考察をおこなっている本です。
本書では、新興国家プロイセンの御用学者だとみなされがちだったヘーゲルが、じっさいには自由主義者だったと論じられており、そうした立場から、法哲学における家族・市民社会・国家の弁証法的
...続きを読む関係についての解説がなされています。さらに、ヘーゲルが自由主義をベースとしながらも、自立した個人による「自助」、職業共同団体における「共助」、そして福祉行政による「公助」の「福祉ミックス」を重要視していることに注目し、彼の国家論を「福祉自由主義」と特徴づけることができると論じられています。また著者は、現代の公共哲学でしばしばとりあげられる「グローカル」な観点から、ヘーゲルの社会思想がEUの理念のうちに生きているという見かたを提示しています。