佐藤利恵の作品一覧
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小説・文芸
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Posted by ブクログ
淡々と流れる話で、大きな盛り上がりもなく、ロマンス小説らしいエモーショナル描写もない。
ただ、若いシングルマザーの女性と砂漠の王国の王太子がたまたま出逢い、互いに激しく惹かれ合いながらも、その立場と境遇のありの違いゆえに、それぞれの想いに正直になれないというだけの話。
だが、私は逆に、その平坦な現実的な物語が何故か、とても心に残った。
恐らく、この広い地球上のどこかでは、このような秘めたるロイヤルロマンスが現実に起こり得るのではないかと容易に信じられるーそのリアリティさがとても良いと思ったし、ちっとも俺様でも強引でもないヒーローと、自分の恋より家庭や幼い我が子を優先し守ろうとする慎み深いヒロインにも好感が持てた。
また、ヒロインがただ慎ましいだけでなく、意外にお喋り好きで陽気なところもかえって人間味があって好ましい。
身を焦がすような情熱的な恋を描くのに、何も必ずしも官能的シーンが必須というわけではない。
このように、当人たちが秘めよう、抑えようとすればするほどに切ない眼差しや一人の物想いの描写からも、激しい恋情を表現することはできるのだと学べる。
逆に、その手の描写が一切ないからこそ、この物語は一種の清々しさや二人の切なさがより感じられるのではないか。
恐らく物語りの冒頭からラストまで、二人が出逢って数日程度の時間しか流れていないのではないかと思うが、運命に導かれるようにして出逢い、一瞬で恋に落ちた若い二人が真実の想いから眼を背けようとしつつも、互いを恋する心に抗いがたい様子がよく描かれていた。
まさに、二人の出逢いも結婚も、「アッラーの思し召し」だったに相違ない。
Posted by ブクログ
とても面白かったです。
内容としては、王の弟である王子が兄の婚約者が家出してしまったので、兄王に頼まれて婚約者を捜しにいきました。そこで見つけた婚約者を兄の元に連れてゆこうとする中に、彼女に惹かれ、また彼女の方もろくに逢ったこともない婚約者よりも弟に恋してしまったという話。
途中までスリリングに話が進み、ついに二人が兄を裏切る関係になってしまったところで、私、はたと当惑してしまいました。
これから、二人はどうなるのだろう?
婚約者がいるにしては、どうも彼女を避けて逃げ回っているみたいな王の行動もミソでした。実は王にも恋人がいたんですね。
しかし、まだ王と婚約中の状況で、弟と婚約者が不義を犯してしまった―この状況でストーリー展開をどのように持っていくのかに非常に興味がありました。
結局、王は恋人と別れられず、彼女が妊娠してしまったために退位して弟に王位を譲るという形で落ち着きました。しかし、国同士の約束のため、信義を守るために婚約者の彼女は新しい王となる弟とそのまま結婚する、つまり花嫁が兄から弟に譲られたということになりました。
なるほど、そう来たかと唸りました。これなら、不自然でもなく主役の二人が結婚できますね。
しかし、更なる試練がヒロインを待ち受けます。兄思いの弟王子は兄の婚約者であった彼女を奪ってしまったことは兄への裏切りだと思い込み、運良く結婚できることになったというのに、かえって彼女から距離を置こうとするのです。
この辺りが読んでいて、もどかしかった。。。
最後はもちろん、ハッピーエンドです。お互いにやはり
どれだけ愛し必要としているかを知ります。まさに愛し合う二人に「運命が味方をした」のでしょうね。
Posted by ブクログ
内容としては、結婚と即位を控えた砂漠のシーク、皇太子が昔ながらの許嫁と結婚するというもの。そして、その許嫁の女性がうり二つの双子で、結婚をためらう姉の代わりに妹が入れ替わる、いわば王道ものだ。
ただ、私はこの作品を通しても、とても大切なことを教わったと思っている。
ー父上は悪くありません。原因は僕の愚かな行為にあります。
ー例のぺてん師ジャーナリストのことを言っているのか?
ー誰も信用せずに生きられる者はいない。お前の判断は適切だ。自信を持ちなさい。私はおまえを信頼しているのだから、心の命ずるままに決断しなければならないよ。
本書からの抜粋部分は、父王と息子である皇太子の会話である。
彼は過去に愛した女性に手酷く裏切られ、女性を愛することにトラウマを持つようになっている。
女性を信頼して愛してしまった我が身を責め続ける皇太子に対して、王がかけた言葉がとても印象深い。
「誰も信頼せずに生きられる者ははいない」。特にこの部分が深く響いた。
自身も最近、恋愛ではないが、似たような体験をしたからだ。もちろん、私の場合、相手の方は微塵も悪いことをしたという自覚はないし、事実、そのときはそうだったのだろう。
しかし、結果として、私は長く苦しむ痛みを身体的に抱えることになってしまった。
自分の決断と選択を幾度責めたかしれない。相手を信頼して、大切な健康を任せてしまったことが結果として大きな不幸を招いてしまった。
だが、あのときの私は、相手を心から信頼し、この人であれば任せられると信じて疑わなかった。今の後悔と罪悪感は、やり場のない怒りと焦燥感が招いたものであり、過去の自分が悪かったとは言えないし、自分を責めて苦しめても意味はない。
国王が皇太子に向けたこの言葉は、図らずも深い私の懊悩をいくばくなりとも軽くしてくれた。
相手の罪を許し、事実を受け容れなければ、試練を乗り越えて先に進むことはできない。
改めて感じた次第である。