背徳という言葉に惹かれて購入しました。
こういった類のアンソロは幾つか持っているのですが、その中でも1、2を争うぐらい印象に残る作品が多く、最後まで楽しく読む事が出来ました。個人的には当たりです。
ただ、背徳というだけあって全体的に仄暗く、切ないテイストのお話が多いです。
エロも露骨な物は殆ど無く、全体的に見れば割と大人しめかな方かと思います。
寧ろエロが少ない作品の方が返ってエロく感じるという…(笑)
因みに特に面白いと思った作品は以下の二つ。
▼『かげふみの恋』ロッキー
叔父×甥
表題作であり、初読みの作家さんでした。
受け→叔父→受けの父親と、それぞれ片思いしています。
淡々とストーリーが進んで行き、エロもあっさりめなんですが表題作というだけあって雰囲気はどの作品よりも良かったです。
短編なのに凄く良く纏められていると思いました。
お互い実る事の無い想いを胸に抱えたまま終わるのかと思いきや、叔父が最後、部屋にずっと飾っあった妹夫婦の写真を伏せて「今度は手放せそうにない」と呟いて終わったので救われました(笑)
設定も良ければキャラも良く、震えるぐらい萌えました。
個人的に一番プッシュしたい作品です。
▼『ファイナルチャプター』itz
再会モノ。こちらも初読みの作家さんでした。
高校の時から実は両思いだったのに、一方が不安から逃げ出し、12年経ってから再会するのですが、相手は既に結婚していて自分も同棲している彼女が居て…という救いの無い話です。
相手が結婚している事を知った瞬間、逃げ出したのは自分なのにショックを受け、でも全てを捨ててまでやり直す覚悟もなく…という理不尽な感情の表現が秀逸で、とにかく切なく、もどかしいです。
耳に触れた時、ピアスに結婚指輪が当たるシーンなんて切な過ぎですよ…。
「実らずに根を張り続けるなら 実らせて終わりにしよう」
という言葉で最後は終わっていますが、そんな事言うなよ!と…。
最後まで胸が締め付けられるお話でした。あと、絵がめっちゃ綺麗です。
そしてトリは『さいはて』という小説が載っているのですが、これがまた…予想以上に救いのない話で一番凹みました。
自分の通う高校の教師であり姉の恋人でもある男と密かに関係を持つお話なんですが、これも両思いなのにも関わらず最後は姉と結婚するという後味の悪さが残るお話です。
しかも教師が姉を好きな理由は弟に似ているから。
仮にも教師で、口調も態度も紳士的なのに性格が最低過ぎる…(笑)
まぁ、その分インパクトには残りましたが…。
背徳感のあるお話は好きなんですが、救いの無いオチが苦手な私にとっては読んでいて辛く感じる部分もありましたが、それでもアンソロの中ではかなり楽しめた方なので、背徳だったり仄暗いテーマのお話が好きな方には是非お勧めしたいです!