第1章:人材不足と「全員戦力化」
第2章:組織力という考え方
第3章:職場に宿る組織力
第4章:従業員が働きがい・働きやすさを感じる組織
第5章:組織力としてのインクルージョン
第6章:組織力としてのミドル
第7章:変容するチーム
第8章:組織力としての公平性確保
第9章:働く人のココロをつかむ力
終章:コロナウイルス感染拡大が要請する組織と人材の革新
著者は守島基博さん。学習院大学経済学部教授。米国で産業労使関係研究の博士課程を修了されている。
人手不足が叫ばれる中で打ち手として”全員戦力化”しなければならない。全員戦力化とは組織力開発であり、人材を確保し活用する能力である。
少しむずかしい内容もあるが、比較的イメージがしやすい内容であった。
言わずもがな日本は人口が減少しており、労働人口はますます減る一方である。
そのため人手不足が必至であり、人材の確保がますます困難となることが容易に予想される。
本書では頭数ではなく全従業員がパフォーマンスを発揮し、文字通り”全員戦力化”となることで、この人手不足に対抗しようという考えが書かれている。
戦略人事とは企業が目的達成のために人事を行うことで、戦略上必要な人材を揃えることである。
下記3つの変化に対応するため必要。
1.これまでとは質的に異なった成長戦略をとり始めている
2.技術革新の進展
3.働く人の変化
また人材不足は頭数だけの問題ではなく、戦力となっていない隠れた人材不足も含まれる。
何をするにも人材が重要なのだ。
全員戦力化とは全員対象の人材マネジメントであり、全従業員の力を活用していくための仕組みである。
組織力とは組織能力の一部で、基盤的なものから高度なものへと進化していくものである。
また組織力開発も同様で、下記の8つのポイントがある。
1.職場が機能する
2.働きがい・働きやすさ
3.ダイバーシティ・インクルージョン
4.ミドルが機能する
5.チームが機能する
6.働き手を尊重、公平に扱う
7.エンゲージメントを高める
8.コロナウィルスに負けない(環境の変化に対応)
日本はかつては組織力が高かったが近年は弱体化の兆候にある。
理由は下記の通り。
1.できる人に仕事が集中
2.育成機能低下=OJTの機能不全
3.協力しあう雰囲気低下
4.業務においてのオモテとウラのアンバランス=ウラ機能の肥大化
5.バブル崩壊と経営改革=成果主義導入、組織弱体化の兆候、非正規社員の増加
症状として下記が問題となっている。
1.結束力低下
2.モチベーション低下
3.活気がない
4.コミュニケーション減
5.OJT機能不全
6.メンタル増
働きがいとは人材を前へ押し出す力であり、働きやすさとは阻害要因を取り除くことである。
働きがいには達成感と成長感が、働きやすさは個別ニーズへの対応が必要である。
経営視点から従業員視点への転換が必要。
また、働き手の参加が必須であり、コミュニケーションが基盤となる。
ダイバーシティ&インクルージョン
近年よく聞くワードであるがダイバーシティだけでは不十分でありインクルージョンが求められている。
ダイバーシティは見た目などではわからない深層のものと、性別や人種など見た目でわかる表層のものに分かれる。
インクルージョンは意見表明しやすい、組織文化・風土による多様性の包含、一段上の目標の共有、人材を尊重(リスペクト)が重要であり、経営的メリットを考えると積極的に取り入れることが重要。
組織としてのミドルの役割が重要である、
ミドルはトップと現場の境界に位置し、上から下・下から上への情報伝達に加え自分の発想や考え方を盛り込む。
そのミドルの力が低下している。
1.OJTの機能不全
2.上司の数の削減
3.チャレンジする経験減少
4.職場寒冷化
職場の寒冷化については下記の通り。
1.職場構成員の変化
2.組織構造の変化
3.情報環境の変化
4.目標達成管理の強化
5.マネジメント役割過多
社会情勢の変化や働く人の変化に伴い、ミドルの難易度が上がっており、いわゆる中間管理職と呼ばれるポジションが機能していない。
今すべきことは役割明確化、組織図修正、フォロワー育成への投資である。
組織として公平性の確保が必要。
まずは同一労働同一賃金の考え方である。
ここは法的にも言われているところであるが、まず必要なところ。
つぎに衡平原則の課題である。
1.比較者の選択
2.比較基準
3.格差の許容
そして過程の公平性。
1.情報開示
2.分配決定プロセスでのボイス
3.分配システム設計段階でのボイス
最後に働く人のココロをつかむ力として、エンゲージメントがあげられている。
エンゲージメントとはステークホルダーと企業との関係性の強さや質を表現する概念である。
日本企業は各国に比べ低くなっており、弱体化している。
理由は下記の通り。
1.職務の定義が曖昧
2.人事評価の曖昧さ
3.オーナーシップが低い
4.個別事情への配慮
まずは職務を明確化し、組織による従業員のサポート・支援・心配りが必要である。
エンゲージメントは企業の業績へ大きな影響を与えることがわかっている。