東南アジアに位置する他民族・多言語・他宗教の国家であるビルマ(ミャンマー)について、近現代史を中心にその歴史を解説。
結構な分量であるが、2013年時点までのビルマ(ミャンマー)の歴史のエッセンスがよくまとまっており、2021年2月に発生した国軍のクーデターの歴史的背景を知る上でも勉強になった。
ま
...続きを読むた、本書では、ビルマ人の名前には姓がないということや、ビルマのことわざ(「弟子のデキの悪さは先生の頭の悪さ」、「建ててはじめて檀家」など)などの小ネタが随所にコラムとして挿入されており、それも(知的に)面白かった。
英国の植民地支配期や日本の占領期における「抵抗と協力のはざま」といえるビルマ人の対応が印象的だった。また、日本軍の中国への加害についてはよく取り上げられるが、日本軍のビルマの侵入と占領における加害も、あまり知られていないだけで相当なものだと感じた。
アウンサン将軍やアウンサンスーチー氏についても、その生い立ちや思想について理解が深まった。アウンサン将軍が暗殺されなかったら、国軍独裁にはならなかったのではなかろうかとも思いを馳せた。また、アウンサンスーチー氏の「私は魔術師ではない」という言明が印象的で、アウンサンスーチー氏依存というのはビルマ(ミャンマー)の民主化における大きな宿痾であるように感じた。
余談的内容として、ビルマ式社会主義が国民からいかに支持されていなかったかを示すアネクドートの紹介が面白かった。