漱石や芥川などと比べれば知名度が高いとは言えない田山花袋に焦点を当て、柳田國男と絡ませる漫画なんて色んな意味で凄い、と思い手に取りました。
結論から言えば目の付け所は良かったけれど表現しきれていないのでは、という感想になってしまいます。
何だかイメージビデオを見せられているような、強めの曇り硝子一枚
...続きを読む隔ててぼんやり眺めているような印象で、面白いとか心を動かされるという作品には感じられませんでした。
共感を拒むような登場人物たちに加え歴史と文壇の流れを一通り把握していないと理解が難しいであろう物語で説明はほとんど削ぎ落されているため、こういうのが好きな人にははまるかもしれませんがこれを商業誌で2年も連載して単行本まで出すっていうのは正直に言えば驚愕です。
「その時代の若者に、その刹那しか感じ取れない何か」、それを私も感じてみたかったけれど、原作者も「わかり兼ねる」と言い、私にも「わかり兼ね」た結果、このようなぼんやりとした読後感になってしまったのかなと思いました。それもこの作品の味なのかもしれませんが。