著者が序章で語っているように、中国市場はジャングルのように先を読むことが難しい。その実例豊富な、チャイナビジネス・エンタテインメント。
・一番お金の無駄になる本は、「中国人はメンツを重視する。中国人はどうのこうの。今の中国人はこう思っている」と、中国人の特徴を延々と語っているものです。
こうした本に意味がない理由は、極端に言えば、ケースバイケースだからです。
・歴史的な経緯を考えると、私は台湾人に嫌われても仕方がないはずですが、彼らはとても親切で、礼儀正しかったのです。道を聞いても、とても丁寧に案内してくれました。
思えば、香港でも同様の体験をしました。香港人も礼儀正しく親切でした。同じ中国人でも、大陸で私が目にした人たちとは大違いです。
…台湾旅行の間、「もしかしたら、親切な台湾人の姿は、本来の中国人の姿なのかもしれない」と私は考えていました。儒教の精神を持ち、礼儀を重んじるのが伝統的な中国人の姿だからです。
では今の中国人は、いったい何なのでしょう?
・中国では信頼の基準が何なのかわからないので、商売がやりにくくなっています。日本なら、口約束でも守られます。アメリカでは、契約書を締結した時点で強く拘束されます。中国は、アメリカの考えやスタイルを多く取り入れ、アメリカに近い部分が多いとも言われていますが、契約書の効力が高くありません。では、何に効力があるのでしょうか?分かりません。「コネ」はもちろん欠かせませんが、コネにも限界があります。
…私が中国ビジネスに携わったときは、何度も何度も確認し、電話で話した後、必ず証拠を残すためにメールで同じ内容を送信して再確認させるようにしていました。会議議事録も、必ず24時間以内に日本語と中国語のものを同時に作成し、送信し、確認してもらっています。さらに、確認した会議議事録は、プリントアウトに必ず双方のサインをして、保存しています。
・急速な発展とともに、中国はとても自信を持つようになりました。中国で私がもっともよく耳にする言葉は、「中国には、中国の事情や特色があります。中国には、中国のやり方があります」です。
自信を持つことは大変結構なことですが、正しい自信の持ち方は、謙虚さをベースにしたものではないでしょうか。
・中国企業との取引を通じて私は、請求の技をかなり身につけることができました。おそらく私は失業しても、金融機関の取り立て屋になれるでしょう。それほど過酷な請求トレーニングだったのです。
彼らはどうしてこんなにも払ってくれないのでしょう。本当に払ってくれません。
・欧米では長年、多くの中国崩壊論が語られ、中国の崩壊によって世界情勢が不安定化するかのように論じられてきたが、これは的外れな議論である。正しくは、中国の崩壊によって、また成功によっても、世界は不安定化すると言わなければならない。中国ほどの規模の国がこれほど急速に成長すれば、既存の秩序が揺らぐことは避けられない。中国以外の国は、中国に適応し、中国と競わざるを得なくなる。―リチャード・マグレガー