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グローバリスト:帝国の終焉とネオリベラリズムの誕生
ハプスブルク帝国の灰塵から 本書は、1920年代から現在に至るまで百年にわたる国際政治経済史を背景に据えながら、この40年、散々語り尽くされてきたように思われるネオリベラリズムの起源と発展に関して、理論的にも歴史的にも新たな光を当てる試みである。 ネオリベラリズムというとき、その焦点はアメリカのシカゴ学派に置かれるが、本書は、ジュネーヴ学派という、これまで顧みられなかった思想家群像に注目している。 とりわけ重要なのは、ネオリベラル理論の核心が制度設計に置かれていたということである。それは、ハプスブルク帝国の灰塵を揺籃とした、その出自に刻印されていた。すなわち、帝国後の世界にふたたび秩序をもたらすことが目的の思想運動だったのである。その際、脱植民地化と民主化の波といかに対峙するかがこの運動には重要だった。 本書が提示するのは、1920年代ウィーンのミーゼス・サークルに始まり、1980年代にWTOの創設で絶頂を迎える、三世代にまたがる思想家たちの物語である。国民国家(インぺリウム)と世界経済(ドミニウム)を融合させる連邦を夢見た者たちの勝利ではなく、敗北の軌跡。 -
破壊系資本主義――民主主義から脱出するリバタリアンたち
〈もはや自由と民主主義が両立するとは思っていない。自由至上主義者が取り組むべき大仕事は、あらゆる形態の政治から逃れる方法を見つけることだ〉。テック業界の世界的な大立者で、リバタリアンとしても有名なピーター・ティールは、民主主義なき資本主義という夢をこうぶち上げた。だが、大仕事に着手したのは彼ではない。徹底的な市場原理に基づいて経営されていた香港。十全の経済的自由を実現しながら民主主義的には不完全な領域……。この「ゾーン」に心酔したのは、新自由主義の偶像ミルトン・フリードマンだ。新自由主義知識人らは、香港をテンプレートとして、ゾーンを世界中に広めることを夢見た。この夢想は、タックスヘイブン、自由港、経済特区など、さまざまな姿をとった。既存国家の規制から自由な海上都市というSF的構想すら真剣に取り組まれている。ロンドン、シンガポール、南アフリカ、米国、未承認国家ソマリランド、ドバイ、メタバース……実験場は世界各地に及ぶ。「低能な多数者の専制」を脱出し、ゾーンを建設する願望は、低能とされた人種からの隔離主義や21世紀版植民地主義にしばしば結びつく。テック右派に影響を及ぼすカーティス・ヤービンは、シリコンバレーによるホンジュラスでのゾーン建設構想を〈非欧州人は欧州人に支配されていたときのほうが豊かだった〉と絶賛した。新自由主義研究の画期を成す歴史家が、急進的市場主義者の夢想と実践を追跡する。