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-吉野の紀行文と思わせる出だしから、同級生の男の早くに失った母親の生家探しが語られ、母の面影を思うあまり、生家の姪を許婚(いいなずけ)にするという展開が一気に語られる「吉野葛」。『蘆刈』も、紀行文から夢ともうつつともつかない物語に変容し、出会った男から語られる父のせつない恋愛話がテーマである。未亡人に恋し、その妹をめとり、姉思いの妹との関係が語られてゆく。その息子であるこの男はいったいだれの子供なのか、未亡人はもうすでに高齢になっているのではないかという疑問をのこしながら、男は消えてゆく。大阪移住以来、谷崎潤一郎の作風がだんだん純日本的なものに移行していった時期の代表作。
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-【矢田津世子】女性視点から書かれており、まさに女流作家と呼ばれるにふさわしい。川端康成から女優になるように勧められたほどの美貌の持ち主。文章力を兼ね備えた女流作家として人気を集めた。坂口安吾の恋人とされる。「茶粥の記」亭主に先立たれた妻と姑。亡夫は食通で通っていたが、ご馳走はほとんど食べたことがなかった。郷里への途中寄った温泉宿でこれからの姑との暮らしを思いやる。「凍雲」一度は結婚したものの親の反対で引き裂かれた夫婦。しかしお腹には赤ん坊が。何とか親を説得しようとする二人だが……。「反逆」夫に死別したお松は貧困で食うや食わずの生活だった。それを助けたのは教会の神父。しかしそれは単に利用されただけであった。しかしお松は娘の病気が神の奇跡で治ることを信じて……。「罠を跳び越える女」槙子は銀行の事務員。しかしある活動をしていた。それが上司にバレて勤めをエサに説得されるが……。たくましくしたたかに生きていく女性を描いた作品。文壇デビュー作。短編四本を収録。※読みやすくするため現代の言葉に近づけていますが、作品の性質上、そのままの表現を使用している場合があります。
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