【感想・ネタバレ】牧師、閉鎖病棟に入る。のレビュー

あらすじ

なぜ人を傷つけてはいけないのかがわからない少年。
自傷行為がやめられない少年。
いつも流し台の狭い縁に“止まっている”おじさん。
50年以上入院しているおじさん。
「うるさいから」と薬を投与されて眠る青年。
泥のようなコーヒー。
監視される中で浴びるシャワー。
葛藤する看護師。
向き合ってくれた主治医。

「あなたはありのままでいいんですよ」と語ってきた牧師が
ありのまま生きられない人たちと過ごした閉鎖病棟での2ヶ月。

これまで牧師としてスーツを着て見舞いに行っていた病院へ、わたしは患者として入院しに行く。その病棟は、自分では自由に開閉することのできない分厚い扉で仕切られている。
(序章より)


<目次>
序章 肩章を剥ぎ取られる
事件の顛末

第一章 牧師が患者になる
ショックの連続
トイレの掟
ヨガ行者のおじさん
etc…

第二章 少年たち
競い合う少年たち
1頁読むのに10分かかる
おねしょ

第三章 十字架
彫り物のおじさん
泥コーヒー
元少年A
看護師の十字架
etc…

第四章 診断
知能検査
認知行動療法
「ありのままのわたし」でいいのか?
医師を操ろうとする
SNS依存
etc…

第五章 過去
自分の顔
震災
脱走
伝道者
一切口を聞いてくれない青年
etc…

終章 こだわるのでもなく、卑下するのでもなく
珍しい患者
主治医の家に行く
介入するのがよいか、見守るのがよいか
etc…

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

自己との対話、主治医との格闘がかかれており、自分を変えることはすごく苦しいと思うが、向き合う過程が迫ってくる。

誇るべきは強さではなく、弱さ。
語るべきは自己の一貫性ではなく、綻び。

この文章に心が動いた。

牧師である沼田さんが、ケアしたり指導する立場だと思っていたが、自分も同じく弱い人間だ、という気づきは、福祉業界にいるものとして響くものがあった。

0
2025年08月16日

Posted by ブクログ

実はクリスチャンの私。
実はうつ病治療中の私。
タイトルで惹かれて読みました。
今まで自分が信じていた神様、信仰、ありのままの自分を大切にするキリスト教の教えがわからなくなったんですけど、沼田先生も同じ事を触れていていて読んでて思わず涙が出ました。共感と励ましの本でした。
沼田先生の他の本も読んでみようと思います。

0
2024年03月27日

Posted by ブクログ

こちらとそちら側
境界を垣間見た気がした
そんな感情を抱いた私も認めたくないけど、偏見の心があったのかと驚かされた

ありのまま、ただそこに居ることの難しさ

めちゃくちゃ良い本に出会った

久しぶりに一気読みした本。

0
2023年06月26日

Posted by ブクログ

牧師さんが閉鎖病棟に入って気がついた真理だったり、諸行無常が綴られています。

どんなことでもそうだけど「出逢い」によって、岐路が大きく変わりますよね。
良い先生に出逢えてよかったですね、沼田さん。
それでも少年たちや社会的入院の方たちを思うと、この問題の根深さに面食らいます(わたしが面食らったところで、どうしようもありませんが)。
この業界で働く方々のハード面、ソフト面のケアはもっと叫ばれても良いのかもしれませんね。

わたしが知れたのは、ほんの一面に過ぎないでしょうが、それでも読むことができてよかった1冊です。

自分と徹底的に向き合うって、怖くてなかなかできないです。


【本文より】
彼がここに拘束されているから、世のなかは「まともな」人たちだけで独占していられるのだ。

0
2022年09月12日

Posted by ブクログ

読みやすい。それでいて学び多い。

「ありのままのわたし」は、本当にありのままのわたしだろうか?

小中高の教育カリキュラム、あるいは親からの呪文、社会からの圧力、そんなものによって、アイデンティティという幻想が形作られてはいないだろうか。

そんなベキ論に囚われ、決められたことを守り切れるほど、人は強くないのだ。
「ありのままのわたし」など幻想だ。そんなものに縛られる必要はない。他者と語り、弱さを見せ合って、もっと楽に生きていいのだ。

時に「わたし」を手放し、他者にゆだねよう。

著者のメッセージを私はこう誤読した。

0
2022年01月23日

Posted by ブクログ

精神科の病は単なる薬の処方だけではなく、治療者との根気強い対話によって回復することが実感として語られている。昨今注目を集めているオープンダイアローグに通じるものがあると思う。
本書に出てくる少年たちと対話をする支援者が現れることを、切に願う。

0
2021年09月07日

Posted by ブクログ

“「ありのまま」という言葉を武器にして、多弁な言い訳によって自分を糊塗し、なんでも人のせいにする。自分は無垢な被害者なのであり、つねに他者こそがわたしへの加害者であると、他者を断罪し続ける。それでいいのかが、今、わたしに問われていることなのである。”
(p.122)


“誇るべきはおのれの強さではなくて弱さ。語るべきは自分の一貫性ではなく綻び。ほんとうの輝きは、弱いもののなかにこそあるのだと。”(p.206)

0
2021年08月02日

Posted by ブクログ

終章と、最後のあとがきのページの衝撃。世間一般の方々の、精神病、また、「先生」とよばれる職業への固定観念、偏見の強さよ、、、

ヌマタさん、いい先生に出会えてよかったね。こんな風につきあってくれる先生、ほんとなかなかいないよ。

そして、たくさんの人に注目されているようだが、入院日記部分を読んで、精神病や閉鎖病棟のことをわかったつもりにならないでね。これは、たったひとつのケース。心底そう願います。

0
2021年07月10日

Posted by ブクログ

2021/06/03リクエスト 1

この本を書くのにどれだけ、ご本人はいろいろなものを投げ打ったのだろう。
ドクターに
私を操ろうとしている
私を恫喝してもなんともなりませんよ
などの言葉は、読んでいるわたしにもとても響いた。
心療内科に10年以上通った私も、自分がドクターに言われているように感じるほど、素直な気持ちが綴られている。

先生や弁護士などの人は、どんなに精神科のドクターが言葉を尽くして伝えても、反論する術を持っているから、まず治療ベースに上がることがない、その点でこのドクターも初めての体験に戸惑い悩み、この牧師先生の恩師にも相談したと後で書いてある。

いいドクターに会えてよかった。
このような診療科はドクターとの相性次第で、良くも悪くもなると思うので。

0
2021年06月19日

Posted by ブクログ

尊敬する牧師さんの本。閉鎖病棟での日常や、震災時の出来事等、経験した事のない事が読み易く書かれていて一気に読んでしまった。月並みな言い方だけど人は弱いものだなあ

0
2021年06月01日

Posted by ブクログ

ちゃんとした文章を書ける(失礼)牧師の精神病院入院体験記。

精神病院の中での暮らしや、そこに長期入院してる人のこと、看護師のこと、主治医の話など分かりやすく書いてあり面白かった。

自閉で他責的な著者が、忍耐強い医師との面談(治療?)を通して少しずつ「相手にも言い分がある」というのを理解したという話は衝撃だった。

たまにいる頭はいいけどめちゃくちゃ性格悪い人とかも精神科にかかったら結構な割合で病名付くのではと感じた。

0
2025年08月16日

Posted by ブクログ

タイトルの通り、牧師さんが閉鎖病棟に入院し、そこで見て、聞いて、会話して、考えたことが書かれています。

一緒に体験しているような気持ちで読みました。

知的障害があり、読み書きに困難を抱えている若者との出会い、
なぜ人を殺めてはいけないのか理解できない方との出会い、
「きれい」がわからない方との出会い。
何十年も、ずっと病棟で暮らしている方との出会い。

患者の立場から見える情景や感じたこと、主治医とのまっすぐなぶつかり合い。

自分の中にある感情も呼び起こされ、決して他人ごとではないと感じました。

著者は牧師として復職されたとのこと、本当に良かった、と思いました。

0
2024年01月09日

Posted by ブクログ

閉鎖病棟の少年達を思うとキツイ。
勉強したいのにできない環境…
少年達とちゃんと向き合うことのできる人達が現れることを望みます。

鬱になるのは、男性の方が多い
その理由に、男だから、男なのになどと言われたりして自分の気持ちに正直に思い泣くことができなかったり

子供に、男の子なんだから泣かないのって言うのはやめます。

0
2021年09月12日

Posted by ブクログ

発達障害があり、問題を起こしてしまい閉鎖病棟へ入院となった牧師の体験記。

自分の弱さと向き合うって本当にしんどいことだなぁ。
まず弱さを認める事の難しさ。
「先生」と呼ばれる職業ゆえのプライド。
自分自身で認めて変わりたいと思わない限り何も変われない。

心に残ったのが、同室だったマレという少年。妹を金槌で殴ってしまい入院した経緯がある。本人はそれを「悪いこと」とどうしても認識できていない。反省を、、というがそもそもそれ自体が悪いと感じる事ができない以上は難しいのではないかといった事が書かれていた。いろんな体験や自分が感じた部分から罪悪感や善悪の区別がついていく過程をえるのだとすれば、それには一体どんな治療が有効なのかと考えてしまった。

0
2021年08月14日

「ノンフィクション」ランキング