あらすじ
研究成果が社会に還元されない限り、
社会は1ミリも変わらない。
どれだけ有益な技術であっても、
世間から認知され、プレーヤーが増え、
マーケットがつくられないことには、
その研究は日の目を見ないで終わってしまう。
ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食品利用市場を大きく広げ、東証一部上場企業となったバイオベンチャーのユーグレナ社。食品市場に続き、ユーグレナの油脂分を原料の一部に使ったバイオ燃料の製造にも乗り出している。昨年には、バス、船舶の燃料としての利用が始まり、現在は、ユーグレナを原料の一部に使ったバイオジェット燃料による飛行機の有料フライトの実現を目指している。
こうしたユーグレナ社の成長を技術面から支えた立役者が、ユーグレナ社の創業者の一人となり、世界で初めてユーグレナの食用大量培養を実現させた、同社執行役員 研究開発担当の鈴木健吾氏だ。
なぜ、鈴木氏は画期的なブレークスルーを実現できたのか。
そこには、研究者の視点とともに、社会の変革を意識した視点を併せ持つ鈴木氏ならではの発想がある。
優秀な人ほどスタートアップの起業を目指すという時代。ユーグレナに関して鈴木氏がこれまで成し遂げてきた成功は、理系出身の若者、大学発スタートアップの設立を目指す起業家にとっての新たな生き方のロールモデルになる。
鈴木氏の発想を支えた「ロジックツリー」「ランチェスター戦略」「比較優位の原則」といった経済・経営理論をどう実際の研究開発に適用してきたのかも具体的に紹介。
スタートアップや新規事業の立ち上げを目指す人なら、文系、理系両方の視点から読める新しい経営書。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
既に成功したといっていい企業のユーグレナの研究を一手に担う著者が、起業とサイエンスを両輪で行ってきた体験・経験・考え方をまとめた本。研究者としても、過去に誰もなし得なかったことを達成したが、「誰も試みていないことではない」という違いがとても重要、という主張は説得力がある。
ただ好きなことだけを研究してきたら今がありました的な、偶然じゃん!とか、あー運がいいですねとか、思わず突っ込みを入れたくなる本が、それこそ掃いて捨てるほどありますが、冒頭に「サイエンスの力で世の中の課題を解決し、より良い未来を築くなら、研究に全力を挙げるのは当然だが、やはり研究結果を「社会実装」するというもう一つの軸を科学者自ら意識し続けることが必要だと強く思う」とあるように、その実現してきた過程が、他のビジネス本とは一線を画すでしょう。
研究面においても、大規模実験に拡大してはいけない条件として
・失敗した時の原因が特定できない実験
・「100回やって数回成功した」という段階の実験
という拘りが、誰もなしえなかったユーグレナの大規模培養の成功につながったという下りは研究者、特に企業に所属する研究者には参考になる考えでしょう。
ビジネス本としてみた時には、自分のなすべきことを迷った時のフレームワーク「will、can、must」は参考になるのではないでしょうか。
自分のしたいことは何だ(will)、自分にできることって何だ(can)、周りから必要とされることって何だ(must)を「仕事の三原色」と名付けるところがセンスありますね。したいことが分からないのが、一番厄介なので、とにかくやりたいことに出会うまで、いろんな人とのつながりも大事という指摘も、そうでしょう。
企業かアカデミアか、という研究者として迷うところも、著者は両輪なので、その点もユニークです。特に、企業研究者では、ビジョンを語り続けるとグループ企業全体として、数億円単位を扱っているというところも誰も行っていないことではないでしょうか。
最後のビジネスパーソンと研究社との考え方のギャップは、膝をうちました。
これから研究者を志す人やベンチャーで一旗揚げようという人には特におすすめと思います。