あらすじ
のたうちまわって超えていけ、愛。
『流』の直木賞作家・東山彰良が新たに挑む、自由でボーダレスな短編集!
九州の温泉街、小さな街の団地、ニューヨーク、台北、東京――。
残酷さとやさしさが隣り合わせるパッとしない世界
それでも生きていくむきだしの人間たち。
「猿を焼く」
さえない温泉街に引っ越してきた中三のぼく。無軌道な不良とよそ者の少年は、なぜ猿に火をつけたのか?
「イッツ・プリティ・ニューヨーク」
クレイジーな同級生カメと、そのアバズレな姉。欲求に翻弄されるぼくと彼らの団地の日常。
「恋は鳩のように」
同性婚が合法化された日、歓声に沸く群衆の中、アンディは詩人の恋人・地下室に電話をかける。
「無垢と無情」
人間じゃなくなった「やつら」から身を潜めるように、おれは画面の中のミーティングルームを訪れた。
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Posted by ブクログ
短編集。
淡い恋心を抱いていた少女が、水商売をしていると聞き、現場を見に行った主人公。その後、少女は殺されてしまう。加害者は少女の母親(やはり水商売)の客だった。(『猿を焼く』)
これは恐ろしかった。客の飼っている猿でしょ?猿に対しては何の恨みもないのに、互いに試し合うかのように猿を焼く主人公とその友人。
でも、目には目を~的な理論で行くと理に適ってる。客は、直接的には恨みのない(はずの)女子を殺したんだから。
少年たちの行き場のない怒りみたいなものを感じてゾッとした。
『イッツ・プリティ・ニューヨーク』は同級生の姉に転がされている思春期の性欲の塊である少年が可愛らしかった。同級生の姉をアバズレと蔑みながらも、性的にどうしても惹かれてしまう素直な気持ちが新鮮。
自分を平凡な大人になったと思いたくないが、非凡な才能に触れるとそう思わざるを得なくなる日がやってくる。だからと言って、急にシフトチェンジして才能を表すことは難しい。人生、一度きりなんだなと深く実感。