【感想・ネタバレ】幕間のモノローグのレビュー

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Posted by ブクログ

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 毎回着眼点に唸らされる、長岡弘樹さんの短編ミステリ。今回の探偵役の職業は、ベテラン俳優。長岡作品としてはひねりがない気もしないでもないが、内容はやはり長岡流ミステリであった。

 スクリプターを探偵役に据えた前作『つながりません スクリプター事件File』と、空気感は似ている。どちらも映像業界を描いているのだから、当然といえば当然だが、裏方と役者で立場が違えば、違う風景が見えてくる。俳優もまた、スクリプターとは違う意味で、観察力が必要な職業ではあるだろう。

 前作同様、トラブルが多い現場ばかりで苦笑するが、ミステリ性は薄いだろうか。本作収録の各編に、明確な解決編はない。探偵役たるベテラン俳優・南雲も、告発するというより指摘している。相手同様に、読者も南雲の観察眼には畏怖するものの、南雲本人に相手を指弾しようという意図は毛頭ないように思える。

 南雲が優れた役者であろうことは察せられる。役になりきり、作中にも溶け込む南雲というキャラクターが、各編の印象を薄くしているのは否めない。自分が思うに、南雲という俳優は、主演型ではなくバイプレイヤー型なのだろう。決して出すぎず、作品を引き締める。派手な解決編にならないのは、ある意味当然だった。

 本作の最大の謎は、南雲自身の事情であるとだけ書いておこう。「一拍遅れのプロローグ」と「一拍早いエピローグ」。各編に挟まれたこの小編2編を、なぜこのような配置にしたのか。最後まで読み終えて考えてみると、わかったようなわからないような。南雲は食えない男である。読者に簡単に尻尾を掴ませることはないのだ。

 最後の1編は、役者の道を断念して脚本家になった人物の視点で描かれる。役者の資質とは何だろう。「演技力」などと一言で括られることが多いが、では「演技力」の本質とは何か。本作に描かれたのは、事件というより南雲という俳優の流儀だと思う。

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2021年03月29日

Posted by ブクログ

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ベテラン俳優の南雲が、生徒、共演者、スタッフの中で起こる事件を解決する話。
最後全てが繋がるのかとか考えて読んだが、肩透かしを食らった状態だった。でも、読みやすい。

終始メガネに触れられていたが、答えが出せなかったのが悔しい。
多様な役者仲間、監督と役者、役者とマネージャーなどの関係が興味深い。ミザンセヌ

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2022年01月29日

Posted by ブクログ

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アクターズスクールの講師とその生徒たちの連作集。

構成的には「教場」の舞台を変えた焼き直しと思います。
いつものように薀蓄が鼻につく感じがありますが、面白く読みやすかったです。
役者という職業を掘下げた内容を期待していたのですが、全体的には生徒がかかわる事件を扱っていて、軽い感じでした。
その中でも、「汚れ役の歌」「白紙の応援歌」「ヘッドボイスの行方」は習作だと思います。

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2021年10月13日

Posted by ブクログ

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ベテラン俳優でアクターズスクールの講師も務める南雲草介と、元警察官という異色の経歴を持つマネージャー・友寄栄支のコンビが謎を解く、8章の連作短編集。


カメラの前でいくつもの顔を演じるには、人間の生々しい感情の動きと、無意識に取る身体の動きを知って演技に活かす能力が必要なのだろう。
マネージャーで元警察官の友寄が推理担当、謎解きの答えをアウトプットするのは表現に長けた南雲が担当というのも面白い。
コンビ誕生のきっかけが脳梗塞で、高性能眼鏡を通して手がかりを得るというのは、ちと無理やりな気もするけれど…

「殺陣の向こう側」「汚れ役の歌」「黒い代役」「白紙の応援歌」が良かった。

『つながりません』と今作を見るに、芸能界を舞台にしたシリーズを模索中かも?

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2021年09月28日

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