【感想・ネタバレ】ニムロッドのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

本作に通底しているテーマの一つには「存在証明」があると思う.

無から生み出され,存在が記述され,多くの人に求められることでその価値を保つBTCをはじめ,
「ダメな飛行機」(=飛べない飛行機)という本来の目的を果たせない造形物や
子孫繁栄を命題とする動物の一種でありながら中絶を行う田久保紀子は本来の役割を果たせないものの象徴であり,その例示である.
感情の伴わない涙も,ただ堆く高さだけを誇る塔も.

果たして,本来の役割を果たせないものたちは無価値なものなのだろうか.

本作においてこれら全てに共通して投げかけられるのは「存在」と「価値」の関係に関する問いである.

「ダメな飛行機コレクション」の飛行機は誰がどう考えたってジャンクである.実際,作中でも鉄屑以下と形容される.しかし,nimrodや田久保,中本からは「欲」され,「面白」がられ,そこには本来の文脈と違えど価値が生まれている.
これはBTCの価格が天井知らずに高騰していくメカニズムもこれに通ずる(中本がマイニングしなくても誰かがマイニングしてその価値を担保する).

これらを以てして私は
「凡ゆる事象において,価値は元々規定されたものではない(≒本人の意図とは関係なく何処かの誰かによって価値は付与され得る)」であるため,無価値なものは存在し得ないというポジティブなメッセージを受け取った気がする.

飛べない飛行機やBitcoinそれ自体には本来的な価値を果たせないが,無価値ではない.
中絶をする判断を行った女性も誰にも読まれない小説もまた然りだし,中本の感情を伴わない涙は人を癒す.

ただ,この文脈でバベルの塔やドロドロ人類を読み解くには未だ読みが足りない(or誤解している)ようにおもうので,日を改めて読み直したい.

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2024年01月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

初上田。芥川賞受賞作。僕、中本、田久保女史、そして"ニムロッド"こと荷室仁。道中繰り返し紹介される「ダメな飛行機コレクション」がすごく好きだ。きっと何かの暗喩なんだろう…。不完全な人間か、それとも紹介しているニムロッド自身を指すのか——。三者三様の結果だが、中本の未来(新たな仮想通貨の作成)のみ、希望に満ちている気がする…。

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2024年05月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

昔読んでも心には残らなかった気がする。
「小難しい言葉を使っていて、よく分からない小説だな。」で終わっていた気がする。

この歳になったからかは分からないが、
読んだ直後は久しぶりに自分の考えを頭の中で整理してた。瞑想してた。自分と久しぶりに会話したというか。

主題が読み手によって変わる本な気がする。
比喩的で曖昧で物語もフワッと終わる。
そこが、考えさせられて、面白い。

私が感じた主題は、「日常の空虚さ」「特別でありたいともがく姿」「実は何もない自分自身」こんな感じ。
上の言葉はネガティブなイメージはなくて、ただ事実として作者が捉えてる事を描いてる感じ。
だから、読み手によって受け取り方が変わるんだと思う。


登場人物はサーバー保守をやっている「僕」、その先輩で友人の荷室=ニムロッド、「僕」の恋人の田久保紀子。
「僕」は社長命令で仮想通貨の採掘を業務指示される。
仮想通貨は普通の通過と違い、信頼性という概念はない。日本という国が保証してるから成り立つ円だが、それと違い仮想通貨はただ存在しているだけ。ただ求める人がいるから価値が発生する。

ニムロッドは「僕」の1つ上の歳で会社の先輩。仕事と並行して小説を描いている。並行してと書いてはいるが、本人にとっては小説執筆がメイン。
新人賞に3度応募し、3度とも最終選考まで残ったが全て選ばれず、恐らくそれが原因で鬱になる。そして、「僕」と同じ東京支社から名古屋支社へ異動する。
田久保紀子は39歳、有名な外資企業に勤務。数ヶ月に1回は出張で海外へ行くようなキャリアウーマン。離婚歴があり、元旦那とは子供ができたがおろす決断を1人で下す事になったせいで亀裂が入り、今でもその傷が心に残っている。

話は3人の登場人物の会話や日常に、ニムロッドの書いている小説の内容を挟む形で構成されている。

空虚さやから回るイメージは、仮想通貨・ニムロッド・田久保紀子・ニムロッドの小説に出てくるダメな飛行機コレクションで感じるんだと思う。

ダメな飛行機コレクションというのは、今までの歴史上、今ある飛行機が出来るまでに造られた飛行機のこと。原子炉を積んでいたり、縦に飛んだり、そもそも飛べなかったり。様々な飛行機が登場する。「失敗があるからこそ今があるんだから、ダメな飛行機コレクションは愛らしい。」と書いてあった気がする。
荷室が書いている小説の中の人類の王ニムロッドはダメな飛行機を集めている。

小説の中での人類は寿命がなくなっている。寿命を無くすか、死を選ぶか人間は2択を迫られ、寿命を無くした人間のみが小説では生きている。
小説のニムロッドも寿命はない状態。
ニムロッドは自分の作った仮想通貨のおかげで資産は有り余り、昔から作りたかった世界一高い雲の上に突き出るくらい塔を建て、その中にダメな飛行機をコレクションしてる。
寿命の無くなった人類は次第に自分の欲望を満たし尽くして、より効率的に生きるためにひとつになり、人間であることを辞める。仮想通貨を運営する"あのファンド"という何かと一体化するらしい。

ここがすごく怖い。欲望を満たした人間は死ぬか個を無くすかしかないらしい。

ニムロッドと田久保紀子は、己の無力さに虚さを覚え、それが満たされない人生を過ごしているという自覚を持って生活してる。何のために自分が小説を描いているのか、働いているのかよく分からなくなっている。代わりはたくさんいると。
「僕」は自分を唯一無二と信じ、自分の周りを大切に思いながら過ごしているように感じる。
(→どちらかと言うと鈍感に生きているからそこまで深く考えてないと言えるかも。)
「僕」については詳しく小説内で触れてないが、ニムロッドと田久保紀子をより深く描写する事で対比させ、そう感じさせてるのかもしれない。

小説の中の人類の王ニムロッドは、帰還設計が考えられていないダメな飛行機で太陽に向かって飛んでいく最後で終わる。人間を辞めることはしない。

すごく小さな距離かもしれないけど、太陽に向かって飛び続けること、人間で居続ける事を辞めることは出来ない。
それがニムロッド(反逆者)が決めた事らしい。

空虚さなんて誰もが味わったことがある気持ちだと思う。自分が何者かも分からない。情報がありふれる現代で自分の気持ちも分からない。
色んなものに振り回されて、ある意味檻の中に自ら入っている感じ。
そんなイメージを小説で伝えたかったんじゃないかと思う。

あとこの小説で印象的だったのが、最後の方。
「僕」と付き合っている田久保紀子がニムロッドの小説を読んで気に入り、タイミングがあった際に3人で通話した後の部分。

「僕」は田久保紀子と連絡がつかなくなる。
そして、ニムロッドも田久保紀子もそれぞれ東方洋上にさるという描写がされている。
東方洋上にさるというのは歴史上の人物が自殺する前に残した最後の言葉らしい。結局生きて戻り、長生きするらしいが。
この3人の関係性が変わったのか、2人は東方洋上にどう去ったのかすごく気になる。一緒に去ったのか、それぞれ個別に去ったのか。

人間、そんなに大したことは出来ないんじゃないかな。歴史上に残る事が偉大ではなくて、些細な事をいかに自分事として感じ、自分の人生を過ごすかって事が私は大事だと思う。
自分の気持ちって見えづらくて、色んなものに隠されやすいから、
敏感に生きていきたいなとこの小説を読んで改めて感じた。

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2022年05月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

なんとなくすっきりしない感じ。
なんだろうなぁ。

とりあえず、主人公は触媒役なのかな。
ニムロッドと紀子さんが曖昧すぎて気にはなるが(そもそもニムロッドは同僚なら多少はどうなったかはわかりそうなもんだが)

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2021年02月07日

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