あらすじ
■■■彼らはなぜ「強かった」のか?■■■
■■■「一つの時代」は本当に終わったのか?■■■
世代交代が進む中で
天才たちはいま、何を思い、考えているのか。
危機感と劣等感、痛恨と意地
敬意と憧憬、そして誇り―。
羽生善治・渡辺明・谷川浩司・佐藤康光
森内俊之・藤井猛・郷田真隆・久保利明・先崎学ら
計16人の棋士のロングインタビューを収録。
・・
将棋界において30年以上にわたり
その頂点に君臨し続けてきた「羽生世代」。
しかし50歳が近づくにつれて
彼らの成績はゆるやかに下降し始めた。
そして近年は、藤井聡太ら精鋭たちに押され、
以前のような圧倒的な結果を残せなくなっている。
世代交代が現実のものになったのだ。
羽生世代の棋士だけでなく
羽生世代の突き上げを食らった年上棋士
羽生世代の牙城に挑んできた年下棋士たちが
はじめて明かした本音とは。
「奇跡の世代」の深層に気鋭の将棋観戦記者が迫った。
【本書のおもな内容】
■序 章 将棋界で起きた「31年ぶりの一大事」:大きな転換期を迎えた羽生世代
■第1章 羽生世代はなぜ「強かった」のか:突き上げを受けた棋士の視点
谷川浩司 黄金世代と対峙してきた“光速流”の本音
島 朗 「55年組」やいまの若手と彼らは何が違うのか
森下 卓 世代の狭間で気持ちを崩した俊英の告白
室岡克彦 強豪たちに大きな影響を与えた先達の見解
■第2章 同じ世代に括られることの葛藤:同時代に生を受けた棋士の視点
藤井 猛 棋界の頂点に立っても拭えなかった劣等感
先崎 学 早熟の天才が明かす同年代ゆえの「複雑さ」
豊川孝弘 奨励会入会が同じだった年上棋士の意地
飯塚祐紀 タイトル戦で競っていない奨励会同期の思い
■第3章 いかにして下剋上を果たすか:世代交代に挑んだ棋士の視点
渡辺 明 将棋ソフトがもたらした“世代交代”の現実
深浦康市 いまも忘れ難い「控室での検討風景」
久保利明 “さばきのアーティスト”が抱いていた危機感と憧憬
佐藤天彦 難攻不落の牙城を撃破した“貴族”の視座
■第4章 羽生世代の「これから」:一時代を築いた棋士の視点
佐藤康光 人間の限界に挑んできたことの誇り
郷田真隆 定跡を一からつくってきた者たちの痛恨と自負
森内俊之 小学4年からの将棋仲間が「天才」だったことの幸せ
羽生善治 “年相応の難しさ”をどう乗り越えていくか
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Posted by ブクログ
羽生さん世代の棋士がなぜこれほど強かったのかを各棋士へのインタビューで語ってもらう形式となっている。読み手としてこの本に何を期待したのか、を考えてみた。羽生世代にとってタイトルをとることがだんだん難しくなった今、昔はもっと強かった、そんなことを知りたいわけではなかった。
将棋が好きでAbemaやNHK将棋をみたり、将棋ウォーズで1日3回無料でオンライン対局している素人の身からすると、AI全盛でAIを使いこなす若手が台頭しているなかでどのようなことを考えているのか、そして状況が厳しい中で将棋を続けるモチベーションはどういうところにあるのかそういったことを知りたいと思って読み始めた。
羽生世代の棋士に限らずAIが台頭する前の棋士に共通しているのは、ただひたすら盤面に向かって考え続ける時間を経てプロになり、プロとして活躍しているということだった。またそのときの経験が今でも生きていることも多くの棋士が語っていた。
インターネットが台頭して簡単に情報が手に入り分析できるようになった時代の営みと、情報が手に入れにくかった時代において人が情報を手に入れるために知らず知らず試行錯誤し、またゆっくりとものを考えていた時代のそれとは大きな違いがある。先になんとなくの答えを知ってから考えることと、答えが見えていない状態で考えることの違いだ。
自分には時々考えたことをノートに書いて整理したくなるときがある。それはインターネット登場前にその手段しかなく自然に行っていたやり方である。それがPC・スマホやインターネットだけを使ってものを考えるときのベースになっていると感じることが多々ある。
羽生世代の棋士と若手世代の棋士の違いというのはそのような違いがあるのではないかとこの本を読んでいて思った。つまり自分の考えを何の手がかりもなしに、ただひたすら長時間整理していくような経験があるか、ないか。単にある、なしではなく長時間あるのか、ないのか。それはその人の思考法に大きな影響を与えるだろうと思う。
羽生世代は当時は常識だった序盤の手順について1手1手考えて疑問に思ってよりよい手順を見つけたという。AIによる示唆はなく。考えようと思ったきっかけは自発的なものだ。
自分はそのような営みに意味があるのかないのか、そういったところをこの本から感じ取りたかったのだと思うし、AI全盛となった今においてもそれには意味があるのだと感じることができた。