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Posted by ブクログ
羽生さん世代の棋士がなぜこれほど強かったのかを各棋士へのインタビューで語ってもらう形式となっている。読み手としてこの本に何を期待したのか、を考えてみた。羽生世代にとってタイトルをとることがだんだん難しくなった今、昔はもっと強かった、そんなことを知りたいわけではなかった。
将棋が好きでAbemaやNHK将棋をみたり、将棋ウォーズで1日3回無料でオンライン対局している素人の身からすると、AI全盛でAIを使いこなす若手が台頭しているなかでどのようなことを考えているのか、そして状況が厳しい中で将棋を続けるモチベーションはどういうところにあるのかそういったことを知りたいと思って読み始めた。
羽生世代の棋士に限らずAIが台頭する前の棋士に共通しているのは、ただひたすら盤面に向かって考え続ける時間を経てプロになり、プロとして活躍しているということだった。またそのときの経験が今でも生きていることも多くの棋士が語っていた。
インターネットが台頭して簡単に情報が手に入り分析できるようになった時代の営みと、情報が手に入れにくかった時代において人が情報を手に入れるために知らず知らず試行錯誤し、またゆっくりとものを考えていた時代のそれとは大きな違いがある。先になんとなくの答えを知ってから考えることと、答えが見えていない状態で考えることの違いだ。
自分には時々考えたことをノートに書いて整理したくなるときがある。それはインターネット登場前にその手段しかなく自然に行っていたやり方である。それがPC・スマホやインターネットだけを使ってものを考えるときのベースになっていると感じることが多々ある。
羽生世代の棋士と若手世代の棋士の違いというのはそのような違いがあるのではないかとこの本を読んでいて思った。つまり自分の考えを何の手がかりもなしに、ただひたすら長時間整理していくような経験があるか、ないか。単にある、なしではなく長時間あるのか、ないのか。それはその人の思考法に大きな影響を与えるだろうと思う。
羽生世代は当時は常識だった序盤の手順について1手1手考えて疑問に思ってよりよい手順を見つけたという。AIによる示唆はなく。考えようと思ったきっかけは自発的なものだ。
自分はそのような営みに意味があるのかないのか、そういったところをこの本から感じ取りたかったのだと思うし、AI全盛となった今においてもそれには意味があるのだと感じることができた。