証言 羽生世代

証言 羽生世代

ビジネス・実用
1,100円 (税込)

5pt

開催中のキャンペーン

■■■彼らはなぜ「強かった」のか?■■■

■■■「一つの時代」は本当に終わったのか?■■■

世代交代が進む中で
天才たちはいま、何を思い、考えているのか。

危機感と劣等感、痛恨と意地
敬意と憧憬、そして誇り―。

羽生善治・渡辺明・谷川浩司・佐藤康光
森内俊之・藤井猛・郷田真隆・久保利明・先崎学ら
計16人の棋士のロングインタビューを収録。

・・

将棋界において30年以上にわたり
その頂点に君臨し続けてきた「羽生世代」。

しかし50歳が近づくにつれて
彼らの成績はゆるやかに下降し始めた。

そして近年は、藤井聡太ら精鋭たちに押され、
以前のような圧倒的な結果を残せなくなっている。

世代交代が現実のものになったのだ。

羽生世代の棋士だけでなく
羽生世代の突き上げを食らった年上棋士
羽生世代の牙城に挑んできた年下棋士たちが
はじめて明かした本音とは。

「奇跡の世代」の深層に気鋭の将棋観戦記者が迫った。

【本書のおもな内容】
■序 章 将棋界で起きた「31年ぶりの一大事」:大きな転換期を迎えた羽生世代

■第1章 羽生世代はなぜ「強かった」のか:突き上げを受けた棋士の視点
谷川浩司 黄金世代と対峙してきた“光速流”の本音
島 朗 「55年組」やいまの若手と彼らは何が違うのか
森下 卓 世代の狭間で気持ちを崩した俊英の告白
室岡克彦 強豪たちに大きな影響を与えた先達の見解

■第2章 同じ世代に括られることの葛藤:同時代に生を受けた棋士の視点
藤井 猛 棋界の頂点に立っても拭えなかった劣等感
先崎 学 早熟の天才が明かす同年代ゆえの「複雑さ」
豊川孝弘 奨励会入会が同じだった年上棋士の意地
飯塚祐紀 タイトル戦で競っていない奨励会同期の思い

■第3章 いかにして下剋上を果たすか:世代交代に挑んだ棋士の視点
渡辺 明 将棋ソフトがもたらした“世代交代”の現実
深浦康市 いまも忘れ難い「控室での検討風景」
久保利明 “さばきのアーティスト”が抱いていた危機感と憧憬
佐藤天彦 難攻不落の牙城を撃破した“貴族”の視座

■第4章 羽生世代の「これから」:一時代を築いた棋士の視点
佐藤康光 人間の限界に挑んできたことの誇り
郷田真隆 定跡を一からつくってきた者たちの痛恨と自負
森内俊之 小学4年からの将棋仲間が「天才」だったことの幸せ
羽生善治 “年相応の難しさ”をどう乗り越えていくか

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証言 羽生世代 のユーザーレビュー

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    Posted by ブクログ

    「世代」というと野球で言えば、「まーくん世代」や「ハンカチ世代」、サッカーなら「中田世代」等だろうか。
    しかし「羽生世代」はそのどの世代くくりと比べても頭一つ抜きん出ていると思う。
    そんな「羽生世代」という質量ともに類まれなる世代を先達・同輩・後進のインタビューを元に構成して解き明かそうという本書。
    実に面白かった。

    「世代」という言葉で括られる人達は誇らしく思ったり、忸怩たる思いをする人もいるだろう。
    ただ、「羽生世代」そしてその前後の世代、誰のインタビューを読んでも相手をリスペクトし、将棋という文化に敬虔を払っていることが分かる。
    読んでいて清々しい。

    羽生世代は今のコンピューターやAIを駆使する棋士とその前時代の棋士とのちょうど狭間だったのかな。
    その中で自分の頭での読みの質・量ともにすごいものがあったのだと思う。それに加えてコンピューターを利用して「データベース化」が進んだ。あくまでも手筋や局面の整理ができるというだけで、今のようにある局面でその先の手を読んだり、有利不利を数値化したりなんて使い方はしない。



    そのあたりのバランスの良さがあったのかも。
    そして今もなお羽生世代は将棋界の上位に留まる。
    それは本文中に
    『ダメな局面でもきっちり結論を出すまで突き詰めて考えなくてはいけなかった。それは現代の視点からすれば無駄な作業かもしれないが、その過程で考え続けたことの蓄積があらゆるところで役に立っている』
    このあたりにあるのかも。


    羽生世代はなぜ強かったのか。

    それはインタビュー中にあった
    『羽生世代というのは、高いレベルで争っていかなければいけない。低いレベルでは意味がない。』
    『みんなが上位に行くことはわかっていたし、もちろん自分もそのつもりでした。低レベルで争うつもりは一切なかった』
    このあたりが言葉にしなくてもみんなの心の中に共通してあったのかも。

    そしてロマンとして
    ・村山聖の存在の大きさ。
    その姿を間近で見て、将棋を指せることの幸せを実感しているから。

    そんなこともあるかもという説はいいなぁ。



    0
    2025年01月13日

    Posted by ブクログ

    1045

    大川 慎太郎
    (おおかわ しんたろう)1976年静岡県生まれ。日本大学法学部新聞学科卒業後、出版社勤務を経てフリーに。2006年より将棋界で観戦記者として活動する。著書に、将棋ソフトとの関わりや将棋観について羽生善治や渡辺明ら棋士11人へのロングインタビューを収録した『不屈の棋士』(講談社現代新書)のほか、『将棋・名局の記録』(マイナビ出版)、共著に『一点突破 岩手高校将棋部の勝負哲学』(ポプラ社)がある。

    証言 羽生世代 (講談社現代新書)
    by 大川慎太郎
    棋士は、勝負師と研究者と芸術家の三つの顔が必要です。普段は将棋の真理を追究する研究者で、対局の序・中盤はファンを魅了する芸術家で、終盤は勝つために勝負師に徹するのがいい。それをバランスよく持てる人がトップ棋士ですが、いちばん自然に実践できているのが羽生さんなんです。

    あと羽生さんは誰よりも好奇心が旺盛で、それが羽生将棋を支えています。節目や急所ではもちろん勝負に徹してこられますが、実は勝敗やタイトルの数にはそれほどこだわっていない。将棋の真理を追究して、拮抗した中・終盤の戦いが長く続くことを楽しんでいるような感じがあります。相手が悪手を指すと羽生さんが嫌な顔というか、ガッカリするという話がありますよね。ここからがおもしろいところだったのに、と(笑)。こちらは負かされたうえに、さらに恥ずかしくなるということがありますね。

    谷川さんは羽生さんたちのように同世代の棋士と競っていません。それなのになぜ若くして大活躍できたのですか?

    ガツガツしていない人。島に対して私が長年抱いている印象である。私が将棋界に入るきっかけは島だった。出版社を辞めて暇を持て余していた私が島の定跡書の編集を手伝うことになり、それから将棋界にかかわるようになった。取材で島の研究室を訪れたことは何度もあるが、いわゆる「都会的なセンスを持った、よい家柄の人」という印象を受けた。東京都出身で、家がそれなりに裕福で、やさしい両親がやりたいことを応援してくれる。もちろんいろいろな葛藤はあっただろうが、最初から多くを持っている人なのである。 「一人っ子なので甘やかされて育てられましたが、幸いうちの一門には厳しい兄弟子が多かったので、そこでかなり鍛えられました」と島は振り返る。

    ──皆に聞いている質問なのですが、なぜ「羽生世代」にはこれだけすごい棋士が集まったのでしょうか。 島  羽生さんたちは最後の「精神世代」ですよね。いまはほとんど使われなくなった言葉ですけど、「気持ち」や「根性」を彼らは持っていました。羽生さんたちは勝負を合理的に追究していましたし、その流れが現在の将棋界をつくっています。ただ現在の論評では「合理性」の部分があまりに強調されすぎている気もします。実は羽生さんたちの将棋は、終盤で説明できないようなわけのわからない手が出て、そこが勝負を決めていたりしたんですよ。でも藤井聡太さんにはそういう手は少ない気がします。いまはソフトがあるから、指し手も全部数値化されてしまうでしょう。でも勝負を決めるのは数値じゃない。七冠時代、そしてそれ以降の羽生さんにはミステリアスな部分もあって、そこもすごく魅力的でした。

    ─恐怖を消すために死ぬ気で勉強をしていたんですね。

    ──ほかに羽生さんのどんなところがすごいと思われますか? 森下  意志の強さですね。私が若くして気持ちが崩れてしまった話をしましたけど、羽生さんにだってそういう瞬間はあったはずなんです。でもそこで意志の力で踏みとどまって勉強を続けている。あと羽生さんはずば抜けてセンスがいいですよね。将棋のセンスはもちろん、人生のセンスも抜群です。例えば羽生さんはマネージャーがいなくて、大量の仕事を自分でこなしています。対局以外にもいろいろな依頼が殺到しているのですが、まずは将棋に勝たなきゃいけないから全部は引き受けられない。でも将棋界のためと思えば引き受けたい。そのあたりの取捨選択のバランスが絶妙だと思います。 ──信じられないような過密スケジュールを自分で管理していますよね。そういう状況でも、私が観戦した将棋についてメールで質問をするとすぐに返事をいただいて恐縮します。

    森下  羽生さんの頭のよさを表すエピソードがあります。羽生さんが 18 歳の時、道案内の地図を書いてもらったことがあるのですが、それがめちゃくちゃわかりやすかった。当時はグーグルマップなんてなかったですけど、いま思うとそれよりもわかりやすかったですね。世の中にはわかりにくい地図を書く人っているでしょう。 ──いますね(笑)。羽生さんは案内の急所をつかんでいて、しかもそれをわかりやすく説明できるんですね。 森下  余計なことは一切書いていないのもよかったです。米長先生に「わかりやすい地図なんですよ」と見せたら、「ホントだな」ってエラい感心をされていましたからね(笑)。

    読者は、室岡克彦という棋士をご存じだろうか。1959年生まれで、羽生たちが奨励会に入る1年前の1981年 12 月にプロ入りしており、同時期に第4回若駒戦で優勝している。名人戦につながる棋戦の順位戦では、一度昇級してC級1組に 19 年在籍した。現在は順位戦からは退いてフリークラスに在籍しており、あと数年で引退が決まっている。地元の東京都荒川区で「荒川こども将棋教室」を開いており、将棋の魅力を伝えることを生きがいにしている。  近年、室岡にスポットが当たる機会があった。2017年6月に藤井聡太がデビューから公式戦 29 連勝という将棋界の新記録を達成した時のことだ。それまでの記録は神谷広志の 28 連勝だったが、それを止めたのが室岡だった(1987年)。

    将棋の元となるボードゲームはインドで生まれた「チャトランガ」で、それが東に伝わったのが将棋、シルクロードを通って西に伝わったのがチェスと言われている。二つは親戚のような関係なのだ。  チェスは相手の駒を取っても使えないことが特徴で、そこが将棋と違う。余談だが、チェスは持ち駒を使わずにチェス盤の中で駒を動かすので、「指す」という言い方をする。将棋も将棋盤の中で駒を動かす場合は「指す」だが、持ち駒を使う時だけは「打つ」と言う。ちなみに盤外から碁石を盤上に置く囲碁は「打つ」と言うのだ。

    藤井がシステムをはじめて採用したのは1995年 12 月。B級2組順位戦で井上慶太にわずか 47 手で圧勝し、棋界に衝撃を与えた。必殺の戦法を編み出した藤井は活躍を加速させていく。翌 96 年は新人王戦で優勝、全日本プロトーナメントで準優勝、 97 年は新人王戦で2回目の優勝、そして 98 年は竜王戦の挑戦者決定戦で羽生に勝ち、挑戦権を獲得する。羽生世代を意識したことのなかった男が、ついに羽生を破ってタイトル戦に出場したのだ。

    あともう一つ、彼は体力がずば抜けています。 ──へえ。瘦せているので意外です。 先崎  羽生さんはものすごい健康なんです。八王子の山道を自転車をこいで鍛えたんだよね(笑)。いや、冗談じゃなくて。中学生の時は自宅から八王子駅までの山道を片道 20 分ぐらいかけて自転車をこいでいたんです。

    ──皆に聞いている質問なのですが、なぜ羽生世代にはこれだけ強い棋士が集まったと思いますか? 先崎  結局は羽生さんですよ。そこに尽きる。僕も周りも羽生さんについていけば間違いないと思っていたから。彼がいなかったら森内、佐藤、郷田、先崎はいまほどにはなっていない。とにかく羽生が偉大なんです。もちろん彼は「俺についてこい」とは言ってないけど、結果的に周囲を引き上げましたよね。彼以外は普通の将棋指しだと、いまでも思います。

    将棋が強くなるためには若い時に始めるのが有利だ。そしてプロ棋士になるのも若いほどいい。将棋界には「中学生棋士は大成する」という定説がある。加藤一二三、谷川浩司、羽生善治、渡辺明、藤井聡太。中学生でプロになったこの5人の名前は、将棋に詳しくない方でもご存じだろう。  豊川が将棋を覚え、夢中になったのは中学1年生だった。プロを目指すにはあまりに遅いスタートだったが、寝食を忘れて熱中できるものを見つけた少年の目は輝いていた。 「クラスで流行ったんですよ。忘れもしない。中学1年の( 80 年) 2月に下の道場(このインタビューは東京・将棋会館の4階で行った。道場は2階にある) に来て、アマチュア7級でスタートしました」  豊川は天才少年だった。わずか7ヵ月、中学2年の9月にはアマチュア四段まで駆け上がったのである。そしてこの時期に、「下の道場」で羽生と対戦していた。

    なぜ飯塚は羽生たちの棋譜に惹かれるのか。それは「僕自身がいい手が思い浮かばないタイプ」だからだという。直感的に手が浮かばなければ、理屈で導き出すしかない。その時に、羽生たちの論理性の高い指し手が大いに参考になるのだという。 「羽生さん以前の将棋界は職人的な世界だったと思うんです。将棋の話をしても、『ここはこうやるもんなんだ』という感覚的な話が多かったんですね。でも羽生さんたちの将棋は、一手一手の意味を筋道を立てて説明できる。羽生さんの定跡書や実戦集も、『こういう理由があるからこう指した』と書かれています。そこが羽生世代が盤上で起こしたいちばんの革命ではないかと思っています」

    「私は三段リーグで苦戦して、突破するのに5期、つまり2年半かかったんです。その間の蓄積がデビュー後に爆発したのでしょう。 15 歳で一人暮らしを始めてから、毎日 10 時間は勉強していましたからね。家にテレビも置いていませんでしたし。いまの目で棋譜を見たら拙い部分は多々ありますし、勝てたのは運もありました。羽生戦は勢いのまま勝ってしまったという感じで、これでいいのかなと当惑したくらいです」

    「移動の時間に詰将棋を解いたりと、隙間時間にも勉強するように工夫しています。この世界は少しでも気持ちが切れたらガタッと落ちてしまいますからね。いまが踏ん張りどころだと思っています」

    ──最後の質問です。深浦さんが羽生世代の棋士から学んだいちばん大きなことは何ですか? 深浦  自分の頭で考えること。これに尽きます。教えられたことを守るとかではなくて、自分で一から考え抜いて結論を出さなくてはいけない。直接そう言われたことはありませんが、彼らの姿にそう教えられました。羽生世代のことを考えると、いつも思い浮かぶのは前述した控室の光景なんです。皆が一言も発せずに盤上をにらんで読みふけっている。あの環境に身を置けたというのは、私のかけがえのない財産です。

    佐藤天彦(さとう・あまひこ) 難攻不落の牙城を撃破した〝貴族〟の視座 1988年1月 16 日、福岡県福岡市出身。 98 年に6級で関西奨励会に入会。師匠は中田功。2004年、三段リーグで2度目の次点を獲得したがプロ入りの権利を放棄したことで話題を集める。 06 年 10 月に四段昇段。 08 年、第 39 回新人王戦で優勝。 15 年、順位戦A級昇級と同時に八段昇段。 16 年、第 74 期名人戦で羽生善治を破って名人位に就く。以後、名人3連覇。ニックネームは「貴族」で、ヨーロッパの文化に深い関心を持つ。取材は 20 年8月下旬に行った。

     佐藤の愛称は「貴族」。ヨーロッパの伝統的な価値観を好み、趣味はクラシック音楽、バレエ、絵画鑑賞だ。ファッションにも強い関心を抱いており、ベルギーのブランド「アン・ドゥムルメステール」がフェイバリットだ。自宅はバロック風の家具や調度品で埋め尽くされており、まるで宮殿の一室のようである。

    強い好奇心を持ち、自分が興味を抱いた物事は深く探究し、学ぶ。美しいものやよいものから刺激を受けて自身を向上させることが「文化」だと私は思うが、佐藤という人間からは教養の香りが漂ってくる。

    「羽生さんを見ていると、いろいろなことに好奇心や興味を示してこられたのがわかります。実際、将棋にもそういう価値観や美意識が反映されていますよね。物事に対して広い視野で柔軟に対応したり、好奇心を持ってアプローチをしたりする姿勢が将棋にもよく現れています」

    室岡はマルクスの「すべては疑いうる」をモットーにしており、影響を受けた佐藤は定跡を鵜吞みにせず、一から検証するようになった。それがのちに独自の戦法を編み出す下地になっている。室岡とは「 20 回くらい、2人で海外旅行をしました。ヨーロッパでチェスの大会を何度も観戦しています」と言うほどの仲だった。

    「中途半端に勉強をしないほうがいいと思っているんです。なんというか、棋士人生でまったく勉強しない時期があってもいいのかな、と。勉強時間が取れなくても将棋を勝つ方法があるんじゃないかとポジティブに考えています。例えば内藤先生(國雄九段) は『おゆき』を大ヒットさせて歌手活動をされていた時は、将棋の勉強はほとんどできなかったはずかな、と。でも、その後に王位を獲得されていますから」  どうすれば勉強しなくても勝てると考えているのか。 「大事なのは次の3つです。流行に毒されないこと。自分の経験をうまく生かすこと。自分に自信を持ち続けること」

    昭和の先輩方に共通しているのは、胸を張って生きていたことです。「俺たちは将棋という、世界に誇れる日本の伝統文化を仕事にしたんだ」というプライドを持っていた。それが将棋界から消えてしまうのは、僕としてはいちばん悲しいことです。将棋界は「ただ将棋が強い人たちの団体」じゃいけない。技術と精神性の両方が求められるんです。

    羽生さんは自分だけではなくて、周りの棋士を強くしてきました。例えばそれまでの将棋界は、序盤戦の情報などは外に出さず、自分と仲間だけで共有することが多かった。でも羽生さんはそうではありません。羽生さんにしかわかっていないような技術や考え方を隠さずに開示していました。秘術を明かすわけですから、短期的な視点で見れば、羽生さんが損をすることはあったと思います。でももっと大きな視野で考えれば、将棋界全体の技術を底上げしているわけです。羽生さんの功績は計り知れないものがあります。

    ──皆に尋ねている質問ですが、なぜ羽生世代にこれだけ強い棋士が集まったのでしょうか。 森内  いろいろな要素があると思います。単純に子どもの数が多い時代でしたし、趣味がいまほど多くなかったので、将棋に向かう人が多かった。あと1983年に谷川さんが 21 歳の最年少名人になられて将棋界が注目を集めたことも大きいでしょう。ただやっぱり羽生さんの影響は計り知れないと思います。彼が中心となっていろいろな物事を成し遂げていくことに刺激を受けて、周りの人も高いモチベーションを維持しながら自分のよさを引き出して伸びていった。周りに優秀な仲間がいれば底上げにもつながりますし、全体のレベルや考え方にも影響を与えます。それは羽生さんにとってもプラスだったでしょう。才能があって可能性がある人たちが集まることで、さらに活性化していったのだと思います。

    「いまは先の見通しが立ちにくい世の中なので、遠いことを考えるよりも、目の前の一年一年をしっかりと過ごすことが大事だと思っています。わからないことを考えるよりも、目の前の一局一局を大事にしていきたい」

    私が最も強く感じたのは、彼らの謙虚な姿勢だ。羽生世代について語る時、彼らは深く 頭 を垂れていた。羽生たちにとってそれは普段の態度でもある。相手の立場に関係なく、誰とでも同じ目線で話をする。決して尊大な振る舞いをすることはない。ネガティブな要素を一ミリも発しない彼らは、全世界と人間を肯定する力に満ち溢れている。

    0
    2024年06月17日

    Posted by ブクログ

     将棋は全く指さないが、棋士の言動には心動かされる。「3月のライオン」派の私としては、心から楽しんだ一冊。

    0
    2021年06月15日

    Posted by ブクログ

    野球で非常に高い実績を残した選手が特に多い「松坂世代」という1980年生まれの世代があるように、棋界にも異常に強い棋士が集中している年代があり、それが1970年生まれの「羽生世代」です。羽生善治氏をはじめ、佐藤康光氏、森内俊之氏、と言った実力棋士が集中しています。その際立ったデータとしては、羽生世代がタイトル戦に初出場以来、2020年までの約30年間の200回を超えるタイトル戦のうち、約8割のタイトル戦には羽生世代の誰かが出場し、そのうちの8割のタイトルは羽生世代が保持していた程です。また名人位を通算5期保持すれば得られる永世名人の称号を持つ棋士はやはり世代交代もあって年齢が20歳程度離れるケースが多いのですが、羽生世代には羽生善治氏と森内俊之氏の2名がおられるという稀な世代でもあります。
    この世代になぜ、これほど実力のある棋士が多いのか、それを1)羽生世代に突き上げを食らった羽生世代より年代が上の棋士、2)羽生世代としのぎを削った羽生世代に近い棋士、3)羽生世代を目標にしてきた若い棋士、4)羽生世代の実力棋士 という4つの年代に分けて羽生氏自身も含め16人のインタビューで構成されています。
    私自身、それほど将棋を見る方ではないので、登場する棋士の半分以上は顔も分かりませんし、なにより棋士の個性ともいえる棋風も知りません。それでもインタビューに応える棋士の皆さんは語る言葉が豊かで、”棋士とはこういう考え方なんだ”とか”どの世界もトップレベルは、とにかく凄い”という事が伝わってきます。
    そして何より本書に登場する棋士の全員から伝わるのは”謙虚さ”であったり、他人の実力を認めて尊敬の念を持たれている事です。著者もこの点には触れていますが、将棋が”投了”という自ら負けを受け入れる行為で成り立つからこそはぐくまれた資質かもしれません。本書の読後も大変清々しい気持ちになりました。時々対局の様子がテレビ等で映りますが、その所作の美しさといい、本書で紹介される人間性と言い、こういう人になりたいと感じさせられました。
    羽生世代の棋士も50歳を過ぎ、実力的にはピークを過ぎつつあります。羽生善治氏も2018年に27年ぶりに無冠になりました。でも今だ若い棋士と渡り合う姿に、体力の衰えを感じながらも仕事に向かう同い年の自分自身を重ねてしまいます。300ページ超のちょっと分厚い目の1冊ですが、登場する棋士の人柄がよく伝わってくる内容充実の1冊です。

    0
    2021年04月22日

    Posted by ブクログ

    羽生善治というスーパーヒーローをとりまく棋士たちの価値観、考え方に触れられてとても面白かった。将棋自体に対してリスペクトがあるから謙虚であり、だからこそのトッププロなのだと感じた。
    どのゲームも、芸術も、仕事も、「全部理解した、これが正解だ」と思った瞬間奢りはでるし、成長もできないし、後進に尊敬されるような人物にはなり得ないと思った。

    0
    2021年01月11日

    Posted by ブクログ

    羽生善治世代の棋士が将棋界を席巻している背景を世代前後の棋士にインタビューして浮き彫りにしている。羽生世代の強さだけではなく、インタビューを受けた棋士の思いまでにじみ出ていて興味深い。丸山九段や木村九段のインタビューもあったらというのは望みすぎかな。

    0
    2021年01月07日

    Posted by ブクログ

    棋士として脳漿を限界まで鍛え、実践で一滴も残さず絞り尽くすという超人たちであるが、その上に知情意が円満に備わったインタビュー受け答えであり、驚嘆。

    0
    2020年12月28日

    Posted by ブクログ

    将棋のことを知らない人でも、羽生善治の名前は知っているのではないか。トップを長くはり続けている超一流の棋士だ。その実績は将棋界の歴史の中でも、突出している。
    羽生は1970年生まれであるが、羽生と同世代には強い棋士が集中している。佐藤、森内、郷田、藤井猛、等だ。これだけの強い棋士を生み出した世代は、たしかに他にはない。どうして、羽生世代はこんなに強かったのか、というのが、筆者の疑問であり、この疑問を解くために、筆者は16名の棋士にインタビューを行う。本書は、そのインタビュー集である。
    一般的に棋士のインタビューは面白い。彼らは、深く考えることが仕事なので、何かを問われたときに、通り一遍の無難な答えを返さない。慎重ではあるが、よく考えたオリジナルな答えを返すことが多いからだと私は思う。この本の16人のインタビューも、とても面白かった。
    特に面白かったのは、羽生世代である佐藤、森内、郷田、藤井猛へのインタビュー。驚くほどの率直さで質問に答えているが、いずれも、羽生へのリスペクト、羽生と一緒に切磋琢磨できた矜持、一時代を築いた誇りみたいなものを感じられた。

    0
    2020年12月27日

    Posted by ブクログ

    羽生善治のほか森内俊之・佐藤康光ら羽生世代をテーマとして、棋士16名に行なったインタビューを1冊にまとめたもの。羽生よりも上の世代、同世代、若手世代、そして羽生世代自身が均等に扱われている。羽生世代についての語りが同時に、その語り手自身の棋士人生への語りにもなっているのが特長。

    それぞれのインタビューは何れも、「なぜ、羽生世代は強かったのか?」で統一されていて、時代環境の変化に注目するものや精神面に注目するものなど、さまざまな回答を楽しむことができる。個人的には、谷川浩司の答えが一番印象的であった。

    0
    2020年12月20日

    Posted by ブクログ

    羽生、佐藤康光、森内らの羽生世代と、それを取り巻く棋士のインタビュー集。

    羽生世代の棋士のみならず、彼らが将棋界に与えた影響について知ることができた。

    0
    2024年11月25日

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