【感想・ネタバレ】アメリカの政党政治 建国から250年の軌跡のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

アメリカの政党は建国と憲法制定の時点で、政治の担い手として想定されなかった。党派の存在は共通善の実現を妨げるからだ。それでも連邦派と共和派が登場し、共和派の一党支配を経て民主党とホイッグ党による競争が始まる。以後19世紀末までに、二大政党は社会に深く浸透し「政党の時代」が訪れた。市民は支持政党を持つようになる。南北対立の際、共和党が奴隷制への反対政党として成立した。当時、奴隷一人を五分の三人として数えた。南部は奴隷を自由人にすることで、選挙人配分の基礎となる州人口を増やしたい。1861年からの南北戦争は、黒人奴隷解放のため白人が戦った。戦争は連邦が勝利し、リンカンは奴隷制を廃止する。20世紀に入ると党の候補者を決定する手段が党大会から直接予備選挙に変わり、誰でも政治家になれるようになった。政党の解放性が強まり、利益団体や社会運動の影響を受けやすくなる。

1970年代以降、共和党が保守、民主党がリベラルへと分極化する。それぞれの争点に関わるイデオロギー的な支持者層への配慮から、政策が明らかなリベラルあるいは保守になり、有権者の分極化も進んだ。政党政治家は幅広い層から支持を受けるのが困難になる。一方で連邦レベルの「決められない政治」と対照的に、多くの州では多数党がイデオロギー色の強い政策を実現させた。民主党は概ねリベラリズムが共有されており、主に女性・人種的性的マイノリティ・非プロテスタント・低所得者の支持を受けた。一方保守共和党の実態は、様々な分野の反リベラル勢力の連合であった。党内の諸勢力は、減税や人口中絶規制などお互いの主要目標の実現に向けて協力した。

アメリカの選挙は候補者中心に戦われる。連邦・州を問わず、公職の選挙では本選挙の前の予備選挙に勝つ必要がある。それは政党内の規律を弱めた。各自で選挙資金や人員を集めて選挙対策組織をつくり、有権者に個人を売り込まないといけないためだ。そのため議会では、党議拘束による議員の行動統制が難しい。また党員制度や恒久的な党綱領、党首に相当する役職が存在せず、党指導部が党内の政治家を指揮できる仕組みが発達していない。一方でアメリカの政治過程では、官僚制や裁判官といった日本などでは党派制が排除されている政府機関までに政党が入り込んでいる。アメリカの政党は組織構成の面でも、規律の面でもまとまりがない。まさに大きなテントのような存在なのである。

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2020年12月21日

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