【感想・ネタバレ】1984年に生まれてのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

折りたたみ北京で著者の作品に初めて触れて、今回こちらを読んでみた。
折りたたみ北京の紹介やこの本のあとがきにもある通り、SFと文学、その両ジャンルを素晴らしい形で両立させていると感じた。

恥ずかしながらオーウェルの1984年は、読んだ当時自分にはまだ難解すぎて理解がほとんどできなかった。
今作は1984年ほどではないにしても、読むのにかなり時間を要してしまって、途中から小説なのか自伝なのかよく分からなくなったまま読み進めており、最終章のウィンストンとの対話シーンによってようやく小説、しかもSF小説であったことを思い出した。

SF的要素が描写に占める割合はかなり小さいものの、最後は見事にSFとして成立させていて、読み終わった後、素直にやられた…と思った。(もちろん良い意味で)

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2022年01月02日

ネタバレ 購入済み

結末を読者に求めるSF

この小説が掲げるテーマはある意味恐ろしく単純で、もっと言うと稚拙な真の自由、世界の真実に対する答えというものである。

主人公の自伝語りで父親と自分の時代を交互に映し、資本主義を取り入れた中国、まさしく『1984年』というフィクションとリンクしたリアルな世界を個人視点で描写している。フィクションでは己の自由を思想を統制され、絶望に陥ると思われた監視社会は存外、上流階級と知識人を増やし、物欲を煽って消費を増大させて国民を満足させた。さらには資本主義を組み合わさって、より国家依存度も高まり、庶民は現状に反旗など翻す気など起こさなくなった。

西洋価値観を大量に導入する中で、現状に満足することなどあってはならないのに、それができない。富裕層との対立やら労働者の団結など古臭い。最早私たちは学んでいるし、他者の視線を無視できないし、そして人間関係の複雑化にうんざりしている。
主人公の自らが信じられる思想にたどり着けないと吐露するのは、現代の多様性が常識となった現代で必須の結末だ。世界公民とはまた違うが、日本も中国もアメリカも全て、この自らが信じたり得る思想(宗教)を失っている。ゆえに答えはなく、この小説も答えを出さない。

ラストの解釈は諧謔とも、視野を広げる希望とも取れる。このまさにフィクションのような国家、世界の中では思ってもない選択肢は驚くほど多い。己の見たいものを見ることは解釈を追求することでもある。まさに伝記系ディストピアジャンルにおいて温故知新のSFだと思う。

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2021年02月08日

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