【感想・ネタバレ】赤い砂を蹴るのレビュー

あらすじ

社会派作品で評価の高い劇作家・石原燃による小説デビュー作にして、第163回 芥川賞候補作!
「――お母さん、聞こえる? 私は、生きていくよ。」

幼くして命を落とした弟。
心ない世間の声に抗い、それでも母は自由に生きた。

画家の母・恭子を亡くした千夏は、母の友人・芽衣子とふたり、ブラジルへ旅に出る。
芽衣子もまた、アルコール依存の夫・雅尚を亡くした直後のことだった。

ブラジルの大地に舞い上がる赤い砂に、母と娘のたましいの邂逅を描く。
渾身のデビュー小説!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かったと同時に読んでいて少し苦しかった。家族と何かわだかまりがある人は読んでいてわかるところがあると思う。
自分の人生を否定したくないから、その人の存在を含めて肯定したい。よかったところだけ覚えておけたら。

お母さん、聞こえる?私はかわいそうじゃない。嫌だったことは忘れない。でも生きていくよ。

太宰治の孫の作品だとは読んだ後に知った。

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2022年03月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「芽衣子」の生まれ故郷のブラジルへの旅において、似た光景を見る度に、過去のエピソードが時系列バラバラに織り込まれる構成は、初読だと分かりづらい部分もあった中で、後半突然に訪れた「千夏」の、母親「恭子」への想いに、こみ上げるものがあった。

それは、お互いの存在意義を認め合うこと。親子だけど対等に相対する関係は、再読すると、その想いに至った過程が丁寧に積み重なっているのが分かるし、既にそうした想いで旅に臨んでいた千夏の気持ちを考えると、また異なる趣がある。

弟「大輝」の死、浅ましい義父、大輝の絵を描き続ける恭子、憶測で偉そうな一般論をひけらかす周囲の他人たち、病気の恭子への気遣いが支配欲だったと悟った千夏、等々、バラバラな構成が実は綿密に組み合わされていることに気付かされる。

そこに加わるのが、恭子の友人の「芽衣子」で、彼女は彼女で、アルコールに依存する夫や、おそらく外国籍を理由に厳しくあたられた義母に対する悩みをもっているが、彼女なりの努力で対応する。

千夏と芽衣子は恭子を共通点に知り合い、それぞれ家族の死をいくつか迎えながらも、お互いの細やかな話でそっと支え合っている光景に、ブラジルの暖色系の風景描写と過去の出来事の寒色系の対比が、重なる様は、なんとも言えない感じがある。

芽衣子の夫や義母にしても、実は同情するような出来事があって、それを思いやる芽衣子の行動が、少々行き過ぎているのではないかとも感じたが、芽衣子の本音も後半に明らかにされ、そこで彼女なりの思いの深さを知る。ここが、上記した千夏の恭子への想いと重なり、これは千夏と芽衣子それぞれが主人公の物語なのだと思った。

最後に、最も印象深かったのは、千夏が、恭子と大輝の死の事実を肯定することで、自分の人生を肯定することになると思ったことです。家族の素晴らしさを感じました。どんなイレギュラーなことがあろうとも、死が訪れようとも、存在意義はある。

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2021年01月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

母を亡くした主人公・千夏が、母の友人・芽衣子とブラジルへ旅に出る話。読みながら、男ってさあ……と頭を抱えたくなった。フィクションなのに。ところどころ、これいつの誰の視点の話をしてる? と迷子になりかけた。表紙が色鮮やかで素敵。
以下の一節が印象に残った。
「自分の痛みに鈍感な人間は、人の痛みにも鈍感になるだけでなく、暴力に対して無防備になる。そして、よりひどい傷を負い、ますます鈍感になっていく。」(93ページ)

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2025年08月01日

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