【感想・ネタバレ】赤い砂を蹴るのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かったと同時に読んでいて少し苦しかった。家族と何かわだかまりがある人は読んでいてわかるところがあると思う。
自分の人生を否定したくないから、その人の存在を含めて肯定したい。よかったところだけ覚えておけたら。

お母さん、聞こえる?私はかわいそうじゃない。嫌だったことは忘れない。でも生きていくよ。

太宰治の孫の作品だとは読んだ後に知った。

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2022年03月09日

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ネタバレ

「芽衣子」の生まれ故郷のブラジルへの旅において、似た光景を見る度に、過去のエピソードが時系列バラバラに織り込まれる構成は、初読だと分かりづらい部分もあった中で、後半突然に訪れた「千夏」の、母親「恭子」への想いに、こみ上げるものがあった。

それは、お互いの存在意義を認め合うこと。親子だけど対等に相対する関係は、再読すると、その想いに至った過程が丁寧に積み重なっているのが分かるし、既にそうした想いで旅に臨んでいた千夏の気持ちを考えると、また異なる趣がある。

弟「大輝」の死、浅ましい義父、大輝の絵を描き続ける恭子、憶測で偉そうな一般論をひけらかす周囲の他人たち、病気の恭子への気遣いが支配欲だったと悟った千夏、等々、バラバラな構成が実は綿密に組み合わされていることに気付かされる。

そこに加わるのが、恭子の友人の「芽衣子」で、彼女は彼女で、アルコールに依存する夫や、おそらく外国籍を理由に厳しくあたられた義母に対する悩みをもっているが、彼女なりの努力で対応する。

千夏と芽衣子は恭子を共通点に知り合い、それぞれ家族の死をいくつか迎えながらも、お互いの細やかな話でそっと支え合っている光景に、ブラジルの暖色系の風景描写と過去の出来事の寒色系の対比が、重なる様は、なんとも言えない感じがある。

芽衣子の夫や義母にしても、実は同情するような出来事があって、それを思いやる芽衣子の行動が、少々行き過ぎているのではないかとも感じたが、芽衣子の本音も後半に明らかにされ、そこで彼女なりの思いの深さを知る。ここが、上記した千夏の恭子への想いと重なり、これは千夏と芽衣子それぞれが主人公の物語なのだと思った。

最後に、最も印象深かったのは、千夏が、恭子と大輝の死の事実を肯定することで、自分の人生を肯定することになると思ったことです。家族の素晴らしさを感じました。どんなイレギュラーなことがあろうとも、死が訪れようとも、存在意義はある。

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2021年01月29日

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太宰治(津島修治)の孫であり、津島佑子の子。
その身の上を知ったのがきっかけで、読もうと決めた。
比較したいという気持ちはなく、どういう文章を書くのかとても気になった。

母親を亡くした主人公・千夏と、夫を亡くした芽衣子。
芽衣子が育ったブラジルへと旅立った二人の姿を見ていると、景色や習慣は初めて知るものばかりなのに、なぜかとても懐かしい気持ちになった。
読み進めていくうちに、私の記憶が掘り起こされるような感じがした。
千夏の母親が亡くなるシーンでは、今年の夏に亡くなった私の義母のことを重ねてしまい、胸が苦しくなった。
身内を亡くして不安定に揺れる気持ちを、旅の中で記憶とともに少しずつ受け入れていくような物語だった。
とても好きな作品だった。

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2020年12月08日

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太宰治のお孫さんとか,そういう話しはいらない。とてもみずみずしく、親を受け入れること,親から自由になること,自分の生き様を肯定することを静かにブラジルで省察する、素敵な物語だ。

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2020年08月15日

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シンプルで洗練された文章。ひとつひとつのシーンが重なり合って読んでいる私たちの記憶まで想起させようと働きかけてくるような力がある
オートグラフィーを卒論で扱いたいという気持ちが強くなってきた

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2023年08月28日

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読みながら「光の領分」のさまざまなシーンを思い出した。 光あふれるビルの一室、 屋根になげられたおもちゃ、 飲んだくれてベッドから出てこない母親、 そして、娘を連れ出したままなかなか帰ってこない別れた夫への平手打ち。 このシーンが、「赤い砂……」にも出て来た時はどきどきした。 繋がっているってすごいな。 自由奔放な母親は、死ぬまでそうやったんかな。 「子どもには親を嫌う権利があるんだから」 かもしれん。 どうぞ嫌ってくれてもええよ。 たこ八郎の「迷惑かけてありがとう」って言葉も思い出した。

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2021年02月06日

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人生の終活を考えた時。そんな人にオススメしたい。
構成がとても独特でした。
舞台背景や時系列がバラバラな所があるので回想とし紐付けました。この物語の主人公は二人である。母を亡くした千夏とアルコール依存症の夫を亡くした千夏の母の友達芽衣子とブラジルに行く。
『死』に対して生きて行く事を考えさせられる舞台として、遠い国ブラジル旅行を伏線として捉えた。
母を看取る時の親娘の心の会話がこの物語の真骨頂だ。
遥に遠いブラジルの赤い砂を蹴るの千夏の思いは『死』に対し自分に生きる力を誓う様に思える。それを私なりに回収した。

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2022年10月15日

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近しい人の死。故人に思いを馳せるとき、故人への懺悔と後悔、葛藤、さまざまな思いが駆け巡る。
どんな関係性であれ、故人の思いと対峙し、思い出を一つひとつ辿り内省することは、辛くても、その人との関係にきちんとした決着をつける儀式の様なものかもしれない。そのような内省の旅に、ブラジルの風景がしっくりと合う

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2021年04月05日

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身近な人の死を真正面から取り上げた作品だ。主人公の千夏は母を、千夏と共にブラジルに行く芽衣子は夫を、それぞれ亡くしている。思い出はいいことばかりではない。人には言えない気持ちもある。死者に対する様々な思いを抱えて、それでも人は生き続ける。第163回芥川賞候補作。

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2020年09月20日

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第163回 芥川賞候補作、祖父が太宰治ということで話題になった劇作家の石原燃さんの小説デビュー作。画家の母親恭子を亡くした千夏は、母親の友人である芽衣子とふたりでブラジルへ旅に出る。ブラジルの地で千夏は母親を中心とした家族との過去を回想する。テーマは「死」であり、作中さまざまな「死」が語られる。登場人物が多く、頻繁に場面切り替えもあるので、読んでいてなかなか全体像をつかみきれなかったかな。

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2020年09月19日

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サンパウロ州の日本人が開拓した農場で生まれ育った芽衣子。芽衣子は本作品の語り手である千夏の母親のお手伝いをしていた。千夏と芽衣子は、芽衣子の故郷である香月農場にバスで向かう。二人とも母親を病気で亡くしており、芽衣子は酷い旦那を亡くしている。千夏の父親はいない。二人とも男運がないと言ってしまえばそれまでだが、近親者の死や母親との関係、国籍、戦前戦後の女性の地位のようなものが絡まって、なんとも重い。読みやすいのだが、人間関係が複雑で、主題を読みきれなかった。

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2020年08月17日

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