【感想・ネタバレ】足利兄弟のレビュー

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Posted by ブクログ

南北朝時代の足利尊氏と直義を描いた歴史小説である。尊氏と直義の兄弟が主人公と思いきや、尊氏の正室の赤橋登子も重要な視点人物である。終盤では侍女さきが存在感を持った。尊氏は矛盾した人物であるが、無邪気に他人をだますことに腹立たしさを覚えた。

尊氏を矛盾の塊とする点は『逃げ上手の若君』と重なる。「野心など感じさせない温厚な性格で二度も謀反し、情け深く人を大事にするのにいざとなればあっさり見捨て、いつも隠居したがるくせに自分が天下の中心にいないと気が済まず、心が強く豪胆だがやたら自害したがる上結局死なず、行き当たりばったりに行動するが緻密に計算されたように結果を出し、惨敗したかと思えば次の瞬間圧勝している」(松井優征『逃げ上手の若君 12』集英社、2023年)

尊氏は戦前の皇国史観では逆賊としてマイナス評価されていた。南朝を正統とする立場から逆賊を否定する戦前的価値観からは自由になった方が良いが、尊氏は鎌倉幕府を裏切り、後醍醐天皇を裏切るという裏切りを重ねた人物である。悪くみられることも理由はある。

尊氏の死後は子の義詮が二代目将軍になった。義詮は初代の尊氏と最盛期の義満に挟まれて影が薄い。尊氏死後は尊氏正室で義詮の母の赤橋登子が幕府を支えた。赤橋家は北条一門であり、北条政子の伝統があるのだろう。登子は尊氏の庶子の足利直冬の認知に反対した。この点も政子と重なる。一方で登子の立場は北条政子以上に切実であった。実家が滅ぼされてしまい、後ろ楯がない。義詮を足利家の後継ぎとすることが拠り所になった。

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2023年10月07日

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