【感想・ネタバレ】議院内閣制―変貌する英国モデルのレビュー

あらすじ

政権交代のある二大政党制、強いリーダーシップ……英国の議院内閣制は、日本など各国から理想的な政治モデルと見られてきた。しかし、スキャンダルや政策の失敗により、保守党と労働党はともに国民の信頼を失い、支持基盤の空洞化が進む。さらにEU離脱をめぐる混乱は世界の失望を招いている。危機に直面した英国は、国家構造を改革し、議院内閣制を変貌させる道を選んだ。この英国の挑戦から日本は何を学ぶか。

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Posted by ブクログ

1990年代の日本の一連の政治改革はイギリスのような政権交代可能な二大政党制を導入することを目的に行われた。しかし、そんな理想化された議院内閣制の「本場」であるイギリスでも、二大政党だけでは国民の意志を代表出来なくなりつつあり、地域政党のSNPや第三極の自由民主党が存在感を増している。
また、相次ぐ不祥事による政治不信に対処する形で、国家構造改革と呼ばれる改革が行われ、議会改革(特別委員会、貴族院)、権限委譲(スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)、法典化改革、司法改革などが次々に実施された。いずれも、議院内閣制を外部から拘束しようとするものである。政治エリートへの不信感から、権力を分散させて透明性と手続きの明確化を志向している。
本筋からは逸れるが、イギリスの政党への公的助成には野党にのみ配られる「ショート資金」と呼ばれるものがある。与党に比べてスタッフ、資金面で劣る野党が政府と与党を監視し、いずれ政権を担うであろうことを前提としている。もちろん、国民の支持を調達出来ず、退場すべき党を生きながらえさせてしまう可能性もあるが、政党間競争を促す公的助成の在り方としては、参考になる制度である。議席数に応じて分配される日本の政党助成金とは真逆の発想と言える。

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2025年01月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

英国議会の成立と歴史、英国二大政党の特徴(対照的な起源、凝集性の模索など)、英国の議院内閣制の原理(集合的決定、各省の自律性、首相の主導)など、英国の議院内閣制が概観できる。その上で、英国の議院内閣制が抱える課題(民意の反映、各省に対する統制不能など)が明らかにされている。
政党に対する助成は、議院内閣制において政党こそが民意を最もよく反映できるとの信頼の上に成り立つとの原理や、選挙制度と議会における会派構成との関係性のほか、英国においても日本と同様に首相権限の強化がなされ、それに対し課題が指摘されていることなど、興味深い点が多々あった。

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2021年02月03日

Posted by ブクログ

議院内閣制の例として多くの国で理想とされている英国の国家構造を取り上げ、その制度的特徴やいかにして政治体制として存続してきたかを解説した上で、比較政治論として日本の国家構造との対比を試みている。
議会と政府が強く結びつく議院内閣制が民主主義や三権分立の政治体制としてなぜ受容されているのか、長いこと疑問に感じていたが、ある程度の示唆を受けることができた。議院内閣制の下においては原理的に政府に権力が集中してしまうことが避けられず、むしろ政治的エリートに対する信頼を前提として成り立ってきたとの解説が本書を通じて強調されている。この点を勘案したときに現代の国内政治がどのような状況におかれているのか、考えてみたいと思った。

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2020年03月17日

Posted by ブクログ

日本において政治改革の参照点となる理想的な政治モデルとみなされてきたものの、近年、EU離脱問題等で危機に直面している英国の議院内閣制について、根源的かつ多角的に検討。具体的には、総論、政府と政策運営、政権党、政党システムと政党政治、国家構造という5つの視座から論じ、日本政治への示唆についても言及している。
知ってるようであまり知らなかった英国の議院内閣制について、その歴史、長所と欠陥、機能する前提条件、それを支える政党、近年の変化など、多面的に理解を深めることができた。
英国(型)の議院内閣制は、安定的な政府の創出と責任の所在の明確化といったメリットがあるものの、権力のコントロールや社会の利益や考え方の集約が不十分になりやすいといった欠陥を内包するものであり、それが機能するには、競合する政党による有権者の利益や考え方の集約、政治エリートに対する有権者からの信頼とその裏返しとしての権力の抑制的行使といった前提が必要という指摘は、英国(型)の議院内閣制の本質を突くものだと感じた。特に、英国(型)の議院内閣制が機能するためには、政党間競争が重要だということを再認識した。その点で、「安倍一強」とも言われる現在の日本の議院内閣制が、あまりよろしくない状況であることは疑いない。
現在の英国政治も正直ボロボロの状況とはいえ、政治エリートへの国民の不信を受けた、議院内閣制を外から拘束する「マディソン主義的システム」を取り入れる国家構造改革や、政党間競争を促す、野党に重点的な政党への公的助成など、英国の議院内閣制から日本が学ぶべき点はまだまだ多いと感じた。

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2019年03月20日

Posted by ブクログ

タイトルに惹かれて購入。
議院内閣制のイギリスモデルは果たして現在の日本政治の見本となりうるのか?という大きなテーマを、イギリスの議院内閣制の歴史的経緯、課題、将来展望を織り交ぜながら語っている。
ただただイギリスモデルを盲信するだけでは能がない、ということか…

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2018年05月28日

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