感情タグBEST3
Posted by ブクログ
本当の幸せというもの
は毎日の食事がきちん
とできる程度の家庭に
こそある、というのは
至言だなと思いました。
多少の不自由があって
こそわずかな楽しみが
大きな喜びに変わると
いうものですよね。
物語の舞台は十九世紀。
日本でいえば明治時代
です。
この時代に比べ現代は
技術の発展から家事の
負担が軽減されました
が、
核家族化の進行による
家事の担い手の減少や
共働き化によって、
けっきょく女性の大変
さというものはさほど
変わっていないのかも
しれません。
とはいえ、冒頭の通り、
幾らかの不自由は人生
という料理を美味しく
いただく為のスパイス
だと思うようにします。
Posted by ブクログ
以下、引用。
「まあ、土曜の夜にはみんな、遊んでばかりで働かないことが、働いてばかりで遊べないのと同じくらいつまらないということがわかると思うわ」
「家事っていうのは遊びごとなんかじゃありませんよ」というハンナの口癖が真実であることに気づかされた。
「でも、かぶってく! これって最高だもの。日よけになるし、軽いし、大きいし。それにおもしろいじゃない。笑われたって平気、自分が快適だったら」
イギリス人たちはなかなかうまかったが、アメリカ人のほうがもっとうまかった。みんなは、まるで一七七六年の独立戦争時の亡霊が乗り移ったかのように激しく競りあった。
「あなたのお城には、馬とインクスタンドと小説しかないんでしょ」
「でも自分のお城に入る前に、何かすばらしいことをやりとげたいな。感動的というか、つまり人が感嘆するようなことをねーわたしが死んでからもずっと忘れられないようなこと。」
この屋根裏部屋のジョーの机は台所で使っていた古いブリキ製のオーブンで、それを壁に留めて使っていた。その中に原稿用紙や本などを入れていて、ネズミのスクラブルの被害に遭わないようにしていた。
「だれかがきみを連れ出しに来るとしたら…、それだったら、いいんじゃない?」
「そんなことする人の顔を見てやりたい」ジョーは荒々しく叫んだ。
「ぼくも見てみたい!」ローリーは、その場面を想像して、くすくす笑った。
彼は、自分の作戦に大満足だった。というのも、髪をふりみだし目をぎらつかせ、真っ赤な頬で息を弾ませてゴールしたわがアタランテ姫(自分と競争して勝った者の妻になると言ったギリシャ神話中の人物)の顔には、もうさきほどのような不満の色はまったく見られなかったからだ。
「いまどき、そんなふうに財産を残せる人なんかいないのよ。男の人は働かなくちゃいけないし、女性は、お金のために結婚するんだわ。世の中、とんでもなくまちがっているのよ」メグが苦々しく吐き捨てた。
「ジョーとわたしで、みんなのために財産を作るわ。一〇年、待ってて。きっとできるわ」部屋の隅で粘土の小鳥や果物やお面(ハンナに言わせるとぜんぶ「泥まんじゅう」)を作りながら、エイミーが言った。
「心なんかなければいいのに。だって、こんなに痛いんですもの」しばらくして、メグがため息をついた。
「こんなつらいことがしょっちゅうあるんだったら、わたしたち、人生をどうやって生きていけばいいんだろ?」ジョーも沈みこんで姉の言葉に答えた。
「うーん、わたしがメグと結婚できたら、家に大事にいさせてやれるのになあ」
「でも、わたしの経験から言うなら、ほんとうの幸せというものは、毎日の食事がきちんとできる程度の家庭にこそあるのよ。多少の不自由があってこそ、わずかなたのしみが大きな喜びに変わるということ。」