あらすじ
誕生25周年。トヨタの工場から世界中のスマートフォンへ。
日本発で国際標準になった稀有なイノベーション、50年の記録。
QRコードは1970年代初頭、トヨタの生産現場での「かんばん」の電子化をめざしてデンソーで研究・開発がスタートした。さまざまな技術的障壁や現場からの反発を乗り越え、1994年に完成する。その後の周辺技術、国際標準化への取り組み、オープンソース化、利用現場の開拓など、次々に主導する人物が交代しては進めていった。その後、セブン-イレブンや携帯電話、全日空、銀行ATM、駅のホームドアでの導入など、2000年代に入って利用者が用途を開発し、爆発的に普及していく。圧倒的な情報量(バーコードの350倍)、読み取り速度(Quick Response)とエラー回避、セキュリティ、小さい面積とデザインの自由度などもあって、他のコードを凌駕している。今や中国をはじめ、世界中の主要な電子決済手段にもなっている。2014年には、欧州特許庁が主催する「欧州発明家賞」を日本で初めて受賞した。本書は、関係者への取材を丹念なもとにQRコードの今日に至るストーリーと読み解きながら、トヨタ生産方式、スクラム型開発、両利きの経営、ユーザーイノベーションなどを同時に行った、日本発のイノベーションの稀有な事例として描き出すものである。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
1971年、トヨタの「かんばん」をデジタル情報化する。
60桁以上の情報。
バーコードシステムの独自開発。
NDコード 3桁*21=63桁
1977年導入
CCDでスキャン セブンイレブンPOSにリーダー納入
2次元バーコード開発目標
200桁、ワンタッチ、即時、耐汚れ、生産物に印刷
マトリックス型⇔スタック型
方向性なし
高密度
切り出しシンボル ;早く正確に
ファイダーパターン
電車から目立つビルから発案
「迷ったら、手を動かす」
様々な印刷物のフォントから
白黒比の少ない比率を見つける。3カ月。
■枠:□枠:■=1:1:3
1994年7月完成 先行3社から7年遅れ
QR=Quick Response
数字で7000キャラクタ収納
1秒間30シンボル読み取り
誤り訂正比率30%
自動車業界から標準化
1996年 ISOとIECが国際標準化SC31設立
UPC IBM特許権行使しないことで普及→先行3社も
JAN 特許切れで普及
世界標準化されたものでないと取引先まで普及しない
機械やソフトで商売するポリシー
デンソー社内での実績
eかんばん+QRコード
トヨタ生産管理部門
紙ベースの「かんばん」への信念
人の手を介した 現場・現物・現実の三現主義
物流部門
かんばんで記載しきれない情報も記録
取引伝票のOCR→デジタル情報化
自動車業界の帳票の標準化へのQRコード採用へ
自工会、自部工会
全米自動車産業協会 での標準化に4年
3種コードを使い分けていた
委員会活動にコンサルを採用
デンソー及び日本各社のサポート表明
第三者機関へ試験依頼
毎年3億円の普及活動費
通産省とJIS規格化
2001年 国際標準二次元シンボルへ
デザイン性とセキュリティの進化
フレームQR
誤り訂正領域30%を独自デザインに使用
SQRC
非公開部を設けた
QRに預金者の顔の特徴を非公開領域に記録し
カメラの顔認識とオフラインで照合
複製防止QR
特殊な光だけ通すインクでQRコードを隠し
反射して帰ってくる情報を読み取る
tQR
電車のQRをカメラで読み取りホームドアを開ける
誤り訂正を50%へ
マイクロQR
回路基板の管理
最先端企業の現場が起点
Posted by ブクログ
すごく面白かったです。
QRコードが誕生した背景を知るだけでなく、本書からは、とことんこだわることの大切さが学べます。
若い方に、ぜひ読んで頂きたいです。
著者の著述がとても分かりやすい。
「後述する●●が」などと、読者が迷子にならないような気配りも感じられます。
物語としては、登場する関係者一人ひとりの強いモチベーションに感動しました。ページをめくるたびにわくわくしました。
また、特許権を持っても権利行使をしない「パブリックドメイン」のメリットがよくわかりました。
実は、前半を読んでいる間は「奇跡なんて失礼。関わってきた一人ひとりの努力の成果じゃないか」と思っていました。
「奇跡」は、ユーザーが新しい用途をどんどん発見して、QRコードの価値を引き上げて行ったことを指していたのですね。
カバーデザインのセンスもバツグン! 東洋経済とは思えない遊び心が感じられました。
Posted by ブクログ
いまや目にしない日はないQRコードは、トヨタ生産方式に対応するために、元々トヨタの一部門から独立したデンソーにより生み出された技術。
QRコードが一般化したのは、中国におけるペイメントでの普及の影響も大きいため、日本の技術であることを知らない人も多いのではないだろうか。
この技術に関してデンソーは、世界的な普及のために特許は取得するものの、特許料などは請求しない形をとったことで、元々は製造業の中だけで使われる技術であったが、いまではインターネットの世界でも広く活用されている技術となった。
ただ、単に特許料を取らなかったから広まった、というわけではなく、日本の自動車工業会の標準コードとなり、日本の自動認識工業会規格、国際自動認識工業会、そしてJISを挟んでISO/IECといった世界の規格の標準として認定されている。こうした基礎があって世界に普及したことを忘れてはならない。
本書では、この国際自動認識工業会での承認に至るまでの苦労や国際的な根回し、またJISを管掌していた当時の通産省工業技術院が不必要に足を引っ張っていた姿などが描かれている。
日本が国際規格に翻弄される中、数少ない成功例としてのQRコードの存在を忘れてはならない。また、こうした取り組みに、現在の経産省が足を引っ張ることもあることを意識しておく必要がある。
ここまで本書の内容についてまとめてみたが、いくらリーダーで儲けようという意図があったからとはいえ、無料で開放する意図のあったQRコードの国際規格化に尽力されたデンソー(現在のデンソーウェーブ)の社員の方々の努力には本当に頭が下がる思いである。
Posted by ブクログ
普段何気なく使っているQRコードがもともと工場で使うためのものと知らずに過ごしていた。
これを読むとQRコードが世界中で使われている理由がよくわかった。
Posted by ブクログ
以下の教訓は、組織間だけでなく、個人間でも役立つと思う。別の本で、自分を売り込むためには貸しを作る(信頼残高を貯める)ことが重要であると書かれていたのを思い出した。
●柴田彰氏の言葉:
・「委員会に積極的に参加し、委員長役を担い、自社のためでなく他社のためにも努力を惜しまないことで、いざというときに自社がどうしても実現したいことを進めることを他社が認めてくれるようになる」
・「自社の利害とは関係ない案件についても一生懸命、委員(長)や代表者として取り組む。有事の際に自分たちが本当にやりたいことを通させてもらうには、平時にしっかりと他の人たちの利害も考えて行動しておくことが非常に重要」
●具体的には、このような取り組みを続けてきたことにより、他社や外部組織から以下のような協力を引き出すことができた。
・全米自動車産業協会での標準化の際、日系自動車メーカー(トヨタ、日産、ホンダ)に支援を要請し、当該協会の活動に積極的に参画してもらえることになった。
・全米自動車産業協会での標準化の際、自工会や自部工会から標準化要請の手紙を出してもらったり、プレゼンテーションに自工会として出席してもらったりするなど、大きな支援を得られた。
Posted by ブクログ
1つの技術が生まれ、世界標準となり、普及していくプロセスを追っている。全体的にデンソー万歳な論調になるのは、デンソー社からの聞き取りプロセスを考えるにしょうがないかと。そこをさっぴいても、非常に為になる本。国際標準化の工程でどれだけのカネが動いたのだろうか。。。 自動認識業界だと、RFIDやカメラ技術がこれから普及していくはずだけど、裏側どうなってんのかな。
Posted by ブクログ
トヨタの「かんばん」方式に伴うアナログな手間を省力化するためデンソーの技術者が「かんばん」用のバーコードと読取機を開発。後年、車種や部品点数の増大に伴い、バーコードを超える情報量を取り扱える2次元コードを開発が急務となり、QRコードが開発された。バーコード読取機開発にあたり、今では完全にアウトであるが、松下電器に見学に行き、一人が先方の担当者を質問攻めにしている間、コッソリと読取機を分解して回路構造を取得した逸話が面白かった。
QRコード開発後は海外のトヨタ工場でも使用できるようにするため標準化に向けた活動を行う。国際標準コードとなった後、パブリックドメイン化した事により、開発者であるデンソーが想定していなかった、URLのリンクや飛行機の搭乗、キャッシュレス決済といった現在の使用方法に展開されていった。
Posted by ブクログ
たった一人の天才の功績ではなく、チームの総力戦で大成功を成し遂げた物語。
これは参考にできる点が多い。
平成の30年間、さらに令和時代の現在でも日本企業ではなかなか画期的なイノベーションを生み出せずに停滞感が漂っている。
今でも試行錯誤を繰り返している会社が多いと思うが、このQRコードの話はものすごく示唆に富むのではないだろうか。
結局飛躍するような発想や技術力が必要なのは確かだが、それだけでは決してイノベーションは成功しない。
一歩も二歩も高く飛躍していくための手法が本書では数々語られている。
特徴的なのは、それらが決して最初から計画されたものではないということだ。
確かに戦略についてはそれなりに最初からあった。しかしすべてが計画通りに進んだ訳では決して無い。
何度も何度も壁が立ちはだかり、その度に不屈の精神でバトンをつないで乗り越える。
この総力戦の具合が本当に心地いい。
いかにも日本人的であるが、こういう話で心が打たれるのは民族の特徴なのかもしれない。
最初の壁は、現場からだった。
コンピューターすら無かった時代。
自動車の組み立てもすべて人力で行っていた。
部品を組み立てる工程で無駄が出ないようにジャストインタイムで管理する「カンバン方式」を編み出して克服したのは有名な話だ。
しかしこのカンバン方式も決して完璧ではない。
もっとこういうことができないか?という現場からの要請で、数々の改良がなされていく。
その一つがバーコードだ。
つまるところ、この組み立て工場の現場課題の本質は「情報の管理」しかもそれがタイムラグなしに発生することに意味がある。
「今、何の部品が何個仕入れられて、何個製品に使われ、何個残っているのか」
現代のようなコンピューターネットワークが前提の社会であれば、これらの管理は当たり前に出来るだろう。
今となれば、高性能のセンサーもある訳だから、人間が情報を手入力しなくてもセンサーで情報を取得し、サーバーに自動的にUPすることも出来る。
しかしそれらが何も存在しない時代はどうだったのだろうか。
これもすべて人力で伝票に記入し、受け取ったらチェックして、次に回していく、なんてことをしていたのではないだろうか。
つまり最初は、非効率的な人力での伝票入力の仕組みを改善するところから始めたのだった。
それがまさにバーコードを利用することで課題を解決することとなり、やがてQRコードの発明につながっていくのだ。
発明の物語であれば、ここで話は終わってもよい訳であるが、ここからバトンは引き継がれていく。
QRコード、世界標準への道のりだ。
本書に記載の通り、特許を守りQRコードを利用ごとにライセンス料を得ていたら、今のような世界標準の発展はなかっただろう。
特許を早めに開放し、逆にバーコードリーダーを売るという戦略でビジネス的に成功を収める。
まずはQRコード普及に命を懸けて取り組んだ訳だ。
これがまさに奏功したのであるが、ここのエピソードも本当に示唆に富む。
イノベーションを起こす時は経営トップの後ろ盾が必須であるということは最早常識であるが、このQRコードについても同様だった。
「世界標準を目指し、特許は開放する」この方針だけでも経営トップの援護がないと、進めるのは相当に難しいだろう。
短期的利益を考えてしまうと、特許取得にかけた費用の早期回収を図ろうとしてしまうからだ。
ここを堪えて、敢えて長期視点で世界標準を目指すという目標設定に切り替えた。
さらに世界標準化のためにかかるランニングコストの捻出も、経営トップが手厚くサポートしたのだ。
これらのエピソードだけを見ても、事業を興すというのは本当に難しい。
数々の偶然によって成功するものであるが、そこには最低でも素晴らしいメンバーに恵まれたことが成功要因として上げられると思う。
たった一人ではイノベーションは起こせない。
メンバーを信じ、熱い気持ちで高い目標に向かってみんなで取り組んでいく。
経営トップの援護も然りだ。
これからの時代はまさに「パーパス経営」と言われているが、従業員自身が会社の目的に共感しなければ、心が離れパフォーマンスが決して上がらないだろう。
どれだけ人を熱くさせる仕事を生み出していけるか。
これは経営陣にも難題として降りかかってきている。
まさに経営者の人格すらも試されている時代なのだと思う。
そんなことを感じながら読み終えた本だった。
ちなみにQRが「Quick Response」の略だとは本書を読むまでは知らなかったことを付け加えたい。
(2022/1/29)
Posted by ブクログ
QRコードについて理解ができていないことがあったので、開発者の記録を読みたく、手に取りました。
様々な困難があっても乗り越え、その結果を広く世間に広めるために特許についても工夫を施したのが課題を解決したいということに焦点を当てて取り組んでいるのが良いなと思いました。
Posted by ブクログ
QRコードがどうやって出来たのかが分かりやすく書いてある。
最初は工場で効率よく荷物をやり取りするにはどうしたらいいのか?から始まる。
荷物が動くと伝票が発生し、それを処理するのに時間がかかるので、どうにかできないか?荷物自体に情報をのせてはどうか?バーコードより情報を増やして読みとりやすくするには…など課題を解決するにあたって、たくさんの人と時間とお金がつぎこまれていく。また、海外でも共通して使うには?ほかの使い方はあるのか?と、どんどん広がっていく様がおもしろかった。
簡単に使えるものこそ、いろいろと手がかかっているのだなぁと思った。