あらすじ
人生100年時代、どんどん膨らんでいく社会保障費。とくに「医療・介護分野」への対応が待ったなしの日本の課題だ。じつは、日本の「医療・介護分野」は年間55兆円の経済規模に達し、トヨタなど自動車産業にも匹敵する重要な産業なのだ。ただ、産業として意識されることが少ないため、ムダがはびこり、生産性向上の意識が生まれていない。そこで、ムダを取り、生産性向上を実現し、経営体質の強化を図れれば、きちんと利益を取れるビジネスとしてのチャンスがどんどん拡大する。日本経済の発展にもっと貢献できる。本書ではまず、ジャーナリストである著者が「医療・介護分野」のお金に関わる“知られざる真実”を、白日の下にさらす。「なぜ、医療費は高止まりなのか」「クスリはなぜ多く出てくるのか」「医者や薬剤師はどれくらい儲かっているのか」「介護費用はもっと下がらないのか」などの疑問に答えていく。一方で、「国内最大級のリハビリ病院」「高収益のグループホーム・老人介護施設」「介護予算を大幅削減させた地方自治体」「暴利を貪らない地域密着の調剤薬局」「障害者と健常者を一体で戦力化したメーカー」などを徹底取材! 成功しているビジネスモデルの、リアルな状況をルポすることで、「医療・介護分野」の関係者へ、ビジネスヒントを提案する。日本人を不安に駆り立てている「社会保障費のさらなる負担増」とは正反対のシナリオを実現させるための、社会提言書!
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Posted by ブクログ
正直、前半部分は誤植があったり、やや乱暴な論調があったりでちょっと大味な印象があったのですが、後半部分に進むにつれて、ペンの切れ味が鋭さを増してきたような印象を持ちました。
年金を除いた医療・介護を産業として捉えて、持続可能性を考えるよい機会となりましたが、継続性が極めて重視される領域であるが故に、ゼロリセットができないのが実にこの問題の難しいところですね。
付箋は22枚付きました。
Posted by ブクログ
「社会保障制度」は日本国最大の国家課題であるが、総予算150兆円という化け物になった巨体を制御できるものはいない。所管する厚生労働省も、ましてや政治家も小手先の「調整的改善」に終始するだけである。それは戦前の「軍事費」にも似て、国の破綻まで手をつけられないことが危惧される。
本書は「年金・医療・介護」の三位一体から「年金」を外し、「医療・介護産業論」という新たな視点で巨大な国家課題に取り組もうとするものである。産業論なので「効率性」「合理性」を基準に論じることができる。
医師・看護師・介護士・薬剤師といった「専門家」の賛意は得られないが、国家の存続を優先する考え方だと思う。これも例えてみると、軍人が好きに扱った戦前軍事費と似たアナロジーになる。
本書最大のポイントは「医薬分業の政策コスト」コンビニより多い零細薬局6万店が、「2兆円の技術料」で支えられているという不合理。
医療では、先進国では異常に多い「ベッド数」が、年間5百万円の老人施設として収益事業になっていること。また「人工透析」も大きなビジネスに成長している。これらの分析は、「医療はビジネスではない、崇高なミッションだ」として、俗な意見を徹底排除しながら、現実は最もビジネスライクな医療を邁進しているのが実態ではないかと言うこと。要は「医療もマネー次第」を否定できない。
猪瀬直樹氏のように、徹底して「お金」で検証することが、「問題の本質」をつかむ要諦である。
最大の国家課題を「骨太」に整理し、国家としての決断を下すべき時は近いと思うが、国民と政治家に覚悟は出来るだろうか?
それとも二度目の焼け野原と敗戦を甘受しなければならないのだろうか?
Posted by ブクログ
10の勉強をされた方が10の知識を書いた本です。中の人からすると意外な事実や深い考察がある訳ではなく、暴論もみられますが概ね面白かったです。ただ、この業界は労働集約型だと思いますが、現場が労働生産性を追求して果たして利用者が幸せになるのか少し疑問です。
あとこの本に限らず時折り目にしますが、日本医師会は医師全体を代表する団体では全然ないので、医師会や医師会会員がやらかしていることを『これだから医者は…』みたいな責め方されても辛いなぁという思いがあります。
Posted by ブクログ
データや数値に裏付けされた日本の医療業界の現実に絶望を感じる。
日本は薬剤師が多すぎる。
この現状を我々一人一人が変える方法はただ一つ。投票行動のみ。未来を変える政策を打ってくれる政治家を見極める目が求められている。