【感想・ネタバレ】本の読み方 スロー・リーディングの実践(PHP文庫)のレビュー

あらすじ

本はどう読んだらいいのか? 速読は本当に効果があるのか? 闇雲に活字を追うだけの貧しい読書から、深く感じる豊かな読書へ。『マチネの終わりに』の平野啓一郎が、自身も実践している、「速読コンプレックス」から解放される、差がつく読書術を大公開。 「スロー・リーディング」でも、必要な本は十分に読めるし、少なくとも、生きていく上で使える本が増えることは確かであり、それは思考や会話に着実に反映される。決して、私に特別な能力ではない。ただ、本書で書いたようなことに気をつけながら、ゆっくり読めば、誰でも自ずとそうなるのである。(中略)読書は何よりも楽しみであり、慌てることはないのである。(「文庫版に寄せて」より)情報が氾濫している現代社会だからこそ、著者は「スロー・リーディング」を提唱する。「量」より「質」を重視した読書経験は、5年後、10年後にも役立つ教養を授け、人生を豊かにしてくれるだろう。夏目漱石、森鴎外、フランツ・カフカ、川端康成、三島由紀夫など不朽の名作から自作の『葬送』まで――。深く理解することが可能になる、知的で実践的な読み方を紹介する。新書版を加筆・修正し再編集。 ●「速読コンプレックス」からの解放 ●「量」の読書から「質」の読書へ ●なぜ小説は速読できないのか ●5年後、10年後のための読書 ●小説には様々なノイズがある ●書き手の視点で読んでみる

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Posted by ブクログ

ネタバレ

これまでレビューを書いたことはありませんでしたが、「人に説明することを前提に読む」(93頁以下)ことを意識し、1冊読み通した今感じたことを卑見ながら公にしたいと思いました。

法学部の教授で、問題演習などは一度もせず、基本書一冊だけで司法試験に合格をしたという天才の話を聞いたことがあります。単に「問題集を何冊をやるな」というような話ではなく、一文一文に疑問を持ち、それを解消するためにほかの本にあたるということを繰り返し、そうした読み方をしたために1冊読み切るのに何年もかかり、それだけで終わってしまった、という事情です。

そのような天才には到底なれないことは承知の上で、ここで重要なのは、「どうしてその言葉を選択したのか」「突然この発言をさせたのはなぜだろうか」という違和感をキャッチできるような余裕を持つことだと思います。少なくとも名著として残り続けている文章を残した著者は、言葉の選択、文章のつながり、全体の構造に推敲に推敲を重ねたものだと推測されます。それを読む私は、言葉一つ読み飛ばしてよいはずがありません。人並みに文字を読んできた自負はありましたが、「実践編」で平野氏の感じた違和感には気づけませんでした。

「より「先に」ではなく、より「奥に」」(82頁)は理想的な読み手の姿勢を端的に表した言葉だと感じました。いま隣にある本棚には多くの書籍が並んでいますが、読んだ実績を並べたものではなく、背後の広がりを持った奥行きのある世界となるかは私次第であると確信しました。

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2023年08月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

自分は本を読むスピードが遅い方なのでこの本を読んで、今までは読むスピードを早くして色々な本を読みたいと思っていたが、それよりも本の理解度や深く考える時間に費やしたほうが、より読書を楽しめて為になると思えた。

再読について書かれていたが、これは小説に限った話じゃなくて漫画、ドラマ、映画、アニメにも当てはまることだと思ったので、基本的に1回しか見ないので試してみたいと思う。
この本も再読しようと思う。

「自分だったらどうするだろう」と考えるのは元々、自然とやっていたので良い事だと知って嬉しかった。

「辞書癖」をつける、と書かれているがこれは前から実践してはいるが難しい言葉や読めない漢字が続くと調べることに一生懸命になり、話の内容が入ってこないということがあるので、今後の課題。

後半の実践編は全部を理解するのは難しかったが、できる事から実践しようと思う。

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2023年09月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

スローリーディングを訴える、今の時代にこそ必要な良書。自分自身、早く読まないとと焦って読んでしまったことが何度もあった。それは、速読とか多読といった情報をいかに早く要点だけに絞って取り入れるかという観点のもの。一方で、スローリーディング、とりわけなぜ作者はこの一文を入れたんだろうか、なぜこんな表現なんだろうか、と立ち止まって自分なりの考えと照らし合わせてみたり、思考をさらに深めてみたりしてみてはどうだろうか?というススメである。長い時間をかけてじっくりと読んでいく、量ではなく質こそ大事、その人となりを大きく、豊かにしてくれる。そんな読書をしたいものだと思うから、じっくり腰を据えて本と向き合う。特に内容を、センテンスを選び、色々仕掛けている小説においては。
自分自身、忙しい日々だから、この行為がいかに贅沢で、幸せなんだろうかと思いながら読んでいるのだけれど、改めて平野氏の速読へのアンチテーゼはグッとくるものがあった。読書を無駄にしない、時間の浪費にしない、これは逆をいうと早く読めば読むほど、無駄だと感じてより速読しなければならなくなるのかもしれない。どんなフレーズが、どんな風に感じたが、それは何を意味するのか、筆者の意図を考えながら読み進めていくことが作者との対話そのものなんだという考え方であり、本を先に進めるのではなく奥に進んでいくことで、人生を豊かにしてくれるはずだと説く。
カフカの橋、川端康成、三島由紀夫の作品を通して、スローリーディングを実践していく。5W1Hに気をつけながら、なぜ筆者がこの話を出してきているのかを考えると、橋が示すのは官僚だったりする訳だけど、そして高瀬舟が高い関心を今でも集めるテーマを含むのは、殺人と自殺の正しさか、悪かという問いだからである。これをすっ飛ばして読んで、理解できるのか、それがどういう構成で導かれているか、じっくり読まずして、その奥深さがわかるわけがないではないか、という筆者からのメッセージである。

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2023年02月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

⚫︎受け取ったメッセージ
※引用
「一冊の本を価値あるものにするかどうかは、
 読み方次第」

「読者が本を選ぶように、本も読者を選ぶ」



⚫︎あらすじ(本概要より転載)

"本はどう読んだらいいのか? 速読は本当に効果があるのか?
闇雲に活字を追うだけの貧しい読書から、深く感じる豊かな読書へ。
『マチネの終わりに』の平野啓一郎が、自身も実践している、
「速読コンプレックス」から解放される、差がつく読書術を大公開。

「スロー・リーディング」でも、必要な本は十分に読めるし、
少なくとも、生きていく上で使える本が増えることは確かであり、
それは思考や会話に着実に反映される。
決して、私に特別な能力ではない。
ただ、本書で書いたようなことに気をつけながら、
ゆっくり読めば、誰でも自ずとそうなるのである。(中略)
読書は何よりも楽しみであり、慌てることはないのである。



⚫︎感想
夏目漱石のこころ、森鴎外の高瀬舟、三島由紀夫の金閣寺カフカの橋、金原ひとみの蛇にピアスなど、一部分を取り上げて、小説家がどのような工夫やテクニックを凝らして書いているか、いかに気付きながら読むことができるか、実践を交えて丁寧に解説してくれる。

・作中で登場人物が疑問を発した時、
 その答えは特に重要

・成功している比喩は重奏的

・作中の唐突に起きる違和感は注意喚起=主題に関わる
・「不自然さ」は場面転換の印

・「お茶を飲む」という何気ない動作→緊張しているから→この先重要な言葉が語られるかも

・ポリフォニー小説…登場人物がそれぞれに完全に独立した思想を持ち、彼らが対話を通じて対決するタイプの小説

・書き出しの一文に意味がある

・形容詞、形容動詞、副詞に着目する

・間を取るための風景描写や心理描写の挿入。
一般的に、こうした間の後には重要な発言が控えている。



など、たくさんの書く側の配慮を知ることができた。このようなタイプの本は初めて読んだので、このように書く側からのテクニックを知って、もっと深く小説を味わいたいと思った。

(以下引用)
小説というのは、マジックミラーのようなものである。しっかりと目を凝らせば、向こう側に作者が見えるかもしれない。しかし同時に、そこに映し出された自分自身を見てしまうのかもしれない。

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2023年11月25日

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