【感想・ネタバレ】数の女王のレビュー

あらすじ

主人公のナジャは、メルセイン王国の王女。この世界では、人々はみな神から「運命数」を授けられているという言い伝えがある。
十三歳のナジャは、母である王妃から愛されず、使用人同様の扱いを受けていた。
ある日、数年前に死んだ最愛の姉ビアンカが、実は王妃によって呪い殺されたという噂を耳にする。真相を追う中でナジャは不思議な鏡を手に入れ、導かれるようにその鏡のなかに吸い込まれた。そこで、王妃の呪いの手伝いをさせられている妖精たちと出会い、彼らから王妃の秘密を知らされる。
物語に関係する数学的テーマ:素因数分解/素数、疑似素数、カーマイケル数/フィボナッチ数列、リュカ数列/メルセンヌ素数/完全数/友愛数/三角数/巡回数、カプレカ数/フェルマーの小定理/コラッツ予想

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Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かった〜各人に「運命数」という数が割り当てられている世界でのファンタジー。(たまたま一つ手前で読んでいた『上限の月を喰べる獅子』と共通部分もあって、同じ人から同じタイミングでもらった本なので気になる、、)
数学が厳しく統制されている設定は、国の発展度合いなどを考えて、そんなこと可能?wって思ったり、邪視や喰数霊といった魔法世界的な設定など、気になるところもあるけど、そこはまあファンタジー!なので!!
主人公である13歳のナジャが自分の頭で考え、間違えながら、数字と出会っていく話、と考えると、テーマ設定やら話の筋やら面白く、読めました。
そして出版元が教科書でお馴染みの東京書籍なので、それも面白かった笑。こういった本も出版してるんだなあ。それもあってなのか?、教科書のように、横書きで左綴じです。

以下好きだったところ
「『私なんか』、ですか。あなたがご自分を誰と比べてそう言っているのか分かりませんが、あなたにとっては唯一の、大切な自分自身ですよ。そのように言ったら、あなた自身が可哀想です」(p.130)

ー血が繋がっていようといまいと、人が人と「いい関係」を保ち続けるには途方もない努力が必要で、難しいことよ。そして、その困難を乗り越えるのに挫折する人もいれば、最初から乗り越えようとしない人もいる。そういう人に傷つけられたとき、その相手を許す必要はない。自分が相手を憎む気持ちを否定する必要もない。でも、考えなければならないのは、「自分は何をするのか」っていうこと。…もちろん、やり返すのも一つの選択肢。でも、そうしないという選択肢もある。私がいつも考えているのは、自分が何をするのかを選ぶとき、私は自由なのだということ。(p.186)
ここは十二国記の陽子を思い出した

…人間はみな、心の中に恐怖を抱えている。そしてそれは人間が、本来自分に属さないものにしがみつこうとするからなのだ。持ち物。財産。能力。健康。若さ。美しさ。身体。心。そして、運命数。それらはどれも、人間という存在の本質ではない。しかし人間はそれらを自分のものだと思い込み、自分の本質だと思い込み、それらを失うと自分が自分でなくなると思い込み、それゆえ失うことを恐れる。
人間を含め、あらゆる存在は、この世界の源であるたった一つの数から作られている。人間は、生まれる前も、生きている間も、死んだ後も、その数そのものであり、それ以外の何者でもないのだ。個人に与えられた運命数も、その<母なる数>が一時的に取っている状態に過ぎない。よって、運命すうが個人に与える姿形、能力、そして心のありようも、一時的に現れては消えていく幻のようなもの。
ー私たちがそういった幻にしがみついているかぎり、私たちは真実から逃げ続け、もがき苦しみ続けることになる。(p.236)
ここは仏教のことを思い出した

これがあなたにとって祝福になるか、それとも呪詛になるか。それはあなた次第だ(p.320)

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2025年10月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 数学の知識を物語の中で学べる作品となっています。私はこのような作品を今まで様々なものを読んできましたが、本書はその中で、最も「カッコいい」作品でした。設定は理解するまでに時間がかかりましたが、一度理解してしまえば手に汗握るストーリー展開や数学に詳しく無くても「なるほど」と言えるものばかりでした。 

 本書で私が最も感動したのは大学数学レベルの領域や、未解決問題も取り上げられているのにもかかわらず、そのほとんどが四則演算に知識で理解ができると言うことです。そしてこれらの説明が淡々と方られるのでは無く、方法や答えに物語としての意味が関連づけされていることで、より興味をそそられました。 
 例えば物語の最後に語られる「コラッツの予想」これは未解決問題です。内容としてはどんな数もたった2つの作業を繰り返すことで1になるというものです。ここまでは多くの数学書で語られていることですが、その1がただの数字では無く「最高神の数」であると語られています。こういった表現をされると数学的な美徳だけで無く物語としてのロマンも感じられ、様々な面から本作品を楽しむことができました。

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2020年07月27日

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