【感想・ネタバレ】エクソダス――移民は世界をどう変えつつあるかのレビュー

あらすじ

「本書は、もっとも貧しい社会、「最底辺の10億人」に関する私の研究の一環である…欧米諸国の移民政策は不用意で見過ごされがちな影響を彼らにおよぼす…[また]本書はリベラルな人々の主流見解を批判するものでもある…国をまたぐ移住が一般的になり国民的アイデンティティがなくなれば、社会は脱国家的になる。それに問題があるだろうか? 私は大きな問題があると考える…本書の中核を成すメッセージは、「移住が良いか悪か」という質問が間違っているということだ…緩やかな移住は利益をもたらし、大量移住は損失をもたらす。したがって重要なのは「どのくらいが最適か」だ…恥ずべきなのは移住制限の内容が不適切なことだ。転じて、これは真剣な議論を妨げてきたタブーを反映するものでもある。本書は、そのタブーを打ち破ろうとする試みなのだ」(本文より)〈移民自身〉〈受入国の住民〉〈送出国に残された人々〉という三つの立場にバランスよく目配りしつつ、移住のグローバルな経済的、社会的、文化的影響を分析する。

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Posted by ブクログ

「コミュニティ内の移民の割合が上がれば、移民と先住人口の相互信頼の割合が下がる」
感覚的に理解していた現象が言語化されたフレーズ。

移住は善か悪かの話ではなく、どの程度移住を進めると、移民自身、受け入れ国の住民、送り出し国に残された人々にとって最善なのかを、考えないといけない。

3つの立場で移住を論じているのが自分の中では新しく、重要な考え方だった。

多文化主義をとれば移民の先住人口への統合が遅れる。その分、相互信頼の度合いが高まることはなく公共財の所得再分配を、受け入れ国側が行うインセンティブが下がるという皮肉な帰結。

「家族を越えた信頼と助け合いは、近代の繁栄した社会の中に蓄積する機能的態度の一環(中略)貧しい社会が貧しい理由のひとつは、この態度が欠けているからだ」という議論はちょっと強引な気もするが興味深かった。

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2020年12月28日

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