あらすじ
片桐達夫、五十九歳。顔には豹柄の刺青がびっしりと彫られ、左手は義手。傷害事件を起こして服役して以来、三十二年の間に誘拐事件を三回、強盗を一回起こし、刑務所を出たり入ったりの生活を送る男には、胸に秘めた思いがあった――。
菊池正弘が営む居酒屋「菊屋」に、刑務所を出所したばかりだという片桐達夫が現れた。三十五年来の友人を迎える菊池だが、刑務所から離れられない人生を送る彼に、忸怩たる思いを持っていた。片桐が犯罪に手を染めるようになったきっかけは、彼が「菊屋」で起こした傷害事件だった。しかしそれは因縁をつけてきた暴力団員から、店と菊池の妻を守るための行動だったのだ――。
片桐は、なぜ、罪を重ねることになったのか? 涙腺崩壊必至! 心奪われる、入魂のミステリ。
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Posted by ブクログ
人生は幸と不幸とちょうど半分ずつになるようにできているなんて言う人もいるけれど、到底そうだとは思えない。
明るく真面目で人の好い青年が、良き伴侶と共に夢を叶えようとしていた矢先、その性格ゆえにチンピラの行いを見過ごせずに刺してしまう。以降30年以上にわたり、刑務所とシャバを行ったり来たり。まともな暮らしに戻ろうという素振りすら見せない彼は、いったい何を考えているのか。
薬丸さんの書く「事件その後の人生」はいつもとてつもなく苦しく切ない。電車の中で読んでいたら、ラストは嗚咽しそうになりました。彼の微笑みが救い。
Posted by ブクログ
薄い本だから軽く読もうと思って手に取ったのに、すっかり引き込まれてしまった。
顔面に豹柄の刺青をいれ、犯罪を繰り返す片桐。
昔に起こした傷害事件で最愛の妻と子と別れることになり、自暴自棄になっていると誰もが思っていたが…
うわー衝撃…
なんて悲しい人生なのか。
「悪い人じゃないのに」という人が辛い思いをする本に最近やたらあたるけど、本当に胸が痛い。
人として真っ当な人生を送るためには、優しさだけではなくて強さと賢さがないといけないんだなと考えさせられる。今回の片桐に関しては相手が悪かっただけではあるけれど、相手を刺してしまったり、人生を棒に振った復讐の仕方を選んでしまったり。
生き残っている娘のことや、お世話になった弁護士や菊屋の主人など、周りの人を不幸にしない方法もあるだろうに。
そして梶原が最悪すぎて。あー頭くる。