あらすじ
おおきくなる、つよく逞しく、この夜を越えてゆけ。
自分の、ひとつひとつの輪郭がぼやけて、危機感をもてないまま
今日も一日をやり過ごす。就職して恋愛結婚して、その先に何があるだろう。
地震に金融崩壊。カタストロフに満ちた社会で、丁寧な明日をうまく保てない。
ある日、夜の川のたもとで出会った少年。女友達の幼い子ども。
そして舞い込んできたルームメイト。時を重ねて、夜の時間がほどけてゆく。
黄昏日本の、みずみずしさをたたえた青春物語。
「しずけさ」「愛が嫌い」「生きるからだ」の3作を収録した
新芥川賞作家の飛翔作。
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
埼玉、少年期に過ごした昭和のマンション、元荒川、出版社勤務、男性、ゆううつ。
条件を共有した三つの"かれ"は、もしかしたら同一人物でないのかもしれません。そのぐらい自己同一性を失ってしまったという暗喩なのかも。
かれが語る言葉は、ぶつ切りになった時間の中を漂うように虚ろで幼く感じました。身体は新陳代謝されるのに、思考や感覚や記憶が代謝されないとは限らないよね?と問われた気がします。
過去と現在と未来、昨日と今日と明日。
実家と自宅と会社、家族と友人と恋人。
ペルソナを使い分ける社会性のほうが、もしかすると不健全だなあと思います。記憶や関係性や、誰かに同化してしまえたら楽なのに・・・そんな自我のゆらぎを捉えた連作でした。