あらすじ
子ども・子育て支援新制度の施行から3年。解決しない待機児童問題、規制緩和による質の低下、企業参入による責任の所在の曖昧化など、問題は山積し、現場を混乱に陥れている。本書では、新制度と「新指針」を正面から検討し、現状と課題を整理。各地で独自の実践を続ける事例等を通して、今後の保育の在り方を提唱する。
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Posted by ブクログ
故あって保育について学習中。本書はあくまで保育者にとっての保育論(あるべき論)という印象。こうした理念を限られたリソースの中でいかに政策化していくかという点については、もう少し突っ込んだ議論が必要かと思います。(でも理念を語ることは大事)
Posted by ブクログ
保育士業界事情を知るための1冊。
著者は白梅学園大学の学長さん、保育士、保育園運営のベテラン。
最近少子化対策がらみで目まぐるしく改定、増補が行われている保育制度と保育の定義を国の制度面からおさらいしつつ、現場を担う保育者の目線から、長年子どもたちを見守ってきたプロとして、子どもの健やかな成長を慮る。
国は、施設もサービスも、数もメニューも増やした。働く女性のための(労働力を増やすため)無償化なども大胆に行い、待機児童削減のために厚労省管轄でなく内閣府管轄の企業主導型保育所も設定した。
その一方、人員配置や保育者の給与水準は足踏みで、むしろコストカットを図るために基準を下げたりしている。このままでは質の向上はのぞめない。
さらに文科省の学校への連携重視で保育助保育指針の中で「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」像の設定や、教育や発達に細かなゴールを設定することを危惧する。
大変ごもっともな内容だ。
ただ巻末の、著者が理想とするような保育園がいくつか紹介されているのだが、これがもうクラクラする。
見渡す限りの広いナチュラルな園庭、季節や地方文化色豊かな活動や田んぼづくりなど。一体どこの世界の話かとのけぞる。
都心では、線路や高速の騒音にさらされた園庭なしビル内保育園がいくらでもある。
通り魔に怯えながら雑踏をくぐり抜けてお散歩に行けば、他の園庭なし保育園からやってきたおおぜいの子供達が集まり、猫の額のような児童遊園で遊具の奪い合い。
お母さんは夜9時まで残業で、昼も夕飯も、なんなら風呂まで保育園で過ごした子どもたちは12時間以上園で過ごしてぐったり。
保育園のお迎えから直行で塾や英語のダブルスクールに追いまくられる子どもも。
そんな都会の子育てを見ている目からすると、著者の理想の保育はもはやポエムのようだ。