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Posted by ブクログ
小説には必ずデブが出てくることから個人的に名付けた「デブ専作家」須藤靖貴。そしてまたデブの汗が何故か爽やかに感ずるがごとく青春応援歌を奏でるのがその作品に共通するテーマだ。その中で本作はデブのなかのデブ相撲取りと青春が揃った王道の作品だ。
本書は今年の9月に出ていたにも関わらず二ヶ月余りも知らずにいたのは、本書は所謂「児童書」の扱いで書店でも通常の小説・男性作家の棚には置いてなかったためだ。だが中身は決して児童書ではなく大人でも十二分に楽しめる作品だ。
中学三年生の治は剣道部を退部して将来どうしようかと漠然と考えながら中華料理屋で食事をしていたところ、隣に座った見知らぬ男に「相撲取りになれ。君が雲竜型で土俵入りしている姿が見える。」といきなり言われたところから物語は始まる。相撲など頭の片隅にも無かったのが、次第に相撲も良いかも知れないと考えるようになり卒業後は相撲部屋に入門する決意をする。
成人式までにはなんとしても関取になるんだ、と稽古を積み重ね序の口、序二段、三段目、幕下と徐々に番付も上がっていく。だが何故か番付運が悪く幕下上位からあと一歩の十両に上がれず関取直前で足踏みをしてしまううちに時間はどんどん経ってしまう。果たして治は関取になれるのか?そんなある日、中学生のころに出会い相撲取りになれと勧めた不思議な男からの手紙が部屋のおかみさんが預かって居た。そこに書かれて居るのは何か、そしてその男は誰なのか。ちょっぴりファンタジーの要素をも取り入れた須藤の青春物語だ。
尚、題名の「セキタン!」は蒸気機関車が速度を上げるために石炭を沢山燃やして馬力を付ける、ということから「急ぐ」「頑張る」という意味で使われる相撲界の隠語から取ったもの。「力士ふたたび」の中でも元兄弟子に「急いで来い」と呼びつけられるときにこの表現が使われていた。
「力士ふたたび」そして本作「セキタン!」と相撲小説二作を続けて読んだ形になったが、須藤は本当に相撲が好きなんだなぁと改めて感じさせる。
Posted by ブクログ
見知らぬ兄ちゃんに「力士になったらどうかな」と声をかけられた。相撲なんてなんの興味もないし、第一ナゾの兄ちゃんにいわれたから力士になるなんて変だろ? そんな時同級生がジョッキーになる試験に受かったという。なんとなく高校に行こうとしていたおれの心に一つの選択肢が浮かんできた。相撲部屋に入る…?
特殊な世界と思っていた相撲界。そこにいる力士の卵たちは、本当に普通のティーンエイジャーなんだと、改めて思った。青春のまっすぐさが心地よい物語。
Posted by ブクログ
物語の落とし所は中途半端というか疑問符が残ったけど、相撲の世界の中が垣間見えて興味深かった。やる気のない力士も多いのね。好きな女の子を振り向かせたいがために努力する姿は、素直に応援したくなった。家を出る前の晩、食卓を囲みながら弟が泣き出すシーンは思わず貰い泣き。