【感想・ネタバレ】興亡の世界史 モンゴル帝国と長いその後のレビュー

あらすじ

13世紀初頭にチンギス・カンが興した「大モンゴル国」は、ユーラシア全域をゆるやかに統合して、東西の大交流をもたらした。この大帝国は、従来は「元朝」と呼ばれ、中国史やアジア史の枠でのみ語られがちだったが、近年は、この「モンゴル時代」を、世界史の重大な画期とみなす考え方が、「日本発信の世界史像」として、内外に広まりつつある。壮大な歴史観と筆力で多くのファンを持つ著者が、新たな世界史の地平を描き出す。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

モンゴル軍の軍事的な意味での強さが伝わっているのは、ヨーロッパやロシアが自国の歴史を喧伝するために過大評価してきたもの、つまり西欧中心史観が根底にあることを著者は繰り返し説いている。実際のモンゴル軍は情報収集と内部工作に長け、戦わずしてバグダードまでもを開城させていたという。確かに、従来のモンゴル軍への見方とはがらりと変わってくる。
モンゴル帝国の影響も、予想以上に大きい。
ティムールもイヴァン4世もホンタイジも、チンギス王家ゆかりの王女と結婚することでモンゴル帝国の威光にあやかる、という政略結婚を行なっていた。ユーラシアという世界を東から西まで繋いだ、という点において、モンゴルは空前絶後の帝国であったと分かる。15世紀ヨーロッパの航路発見も、後退していたヨーロッパの幸運であり、アジアが海への進出をみずから閉ざしていった結果としている。

1
2018年01月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

モンゴル帝国はユーラシアからヨーロッパにかかる広大な世界を征服し、統治した。
本書は、疾風怒濤のごとく各地へ攻め入って暴れまくり殺しまくったという、モンゴルの従来のイメージを全く覆すもの。
当時はヨーロッパもロシアもたいした文明国ではなく、また、モンゴルが野蛮なやり方で諸国を蹂躙したという事実はなく、なるべく戦わずに調略などを駆使して勢力を拡大した。

著者は従来の「西洋中心主義」の歴史のあり方に強く抗議・詠嘆しつつ、モンゴルがユーラシア大陸全体に残した遺産について指摘している。

広い世界を支配したチンギス・カンの系譜は長く尊崇され、後世まで統治者たちはこれを無視できず、栄光を継承しようとしたという。

個人的には、モンゴルは教科書の世界史上では一瞬にして過ぎる部分なので、それこそ出来上がった世界に一時的に入ってきて、すぐに去っていったイメージだった。しかし、これを読んでモンゴルが世界史に果たした重要性がおぼろげながらわかってきた。

そもそもユーラシアを東から西まで眺めて書かれた世界史の本はこれが初めてだ。著者はその状況そのものを嘆いてこれを書いたのだろう。

本書の記述は現イランのホーラーサーンに拠点をおいたフレグ・ウルスにおいている。

フレグ・ウルスはイスラムに改宗して統治しやすさを狙ったこともあるが、芯からイスラム政権になったとは言えず、ネストリウス派キリスト教を擁護しヨーロッパへ使節を派遣したこともある。

政権内にはイラン人はじめ様々な民族・宗教の人材を登用し、使用言語はこの頃の共通語であるペルシャ語だった。

東方の元と史料の言語が違うため、モンゴル帝国全体のシステムを解明する研究が今ひとつなのだとか。これがもっと進めば、さらにモンゴルのイメージを変える事実が出てくるかもしれない。

要は、世界史研究の穴であり、研究不足!
全体を見られる研究者がいないというのは、わかる。本も少ないけれど、もっと読んでみたいと思った。

エジプトのマムルーク朝というのは、実はキプチャクの草原からやってきた遊牧民であり……など、ところどころに「えっ、そうなの?」という情報が入っていて面白かった。

ただし、本書は周辺や後世への影響について書いているため、モンゴル史そのものについてはやや薄い印象。
モンゴル史は別の本で先に読んだほうが良かったかも。

1
2019年11月05日

Posted by ブクログ

北方謙三氏の『チンギス・ハン』を読むための予備知識を得ようと、本書を手に取りました。

本書を読んで最も新鮮だったのは、チンギス・ハンを単なる英雄として崇めるような「英雄譚」の側面が一切排除されていた点です。それどころか、巷に溢れる「モンゴル軍最強論」に対しても、専門家の視点から冷静に疑問を投げかけている姿勢に強く惹きつけられました。

特に、日本とモンゴルの関係を「世界と日本」、あるいは「アメリカと日本」といった現代の単純な二元論の鋳型(ステレオタイプ)に当てはめすぎていないか、という著者の指摘にはハッとさせられました。これまでの「元寇」を巡る語りは、両軍の現実的な軍事力や戦術のきちんとした分析・議論がなされないまま、都合のよい物語として消費されてきたのではないか――その批評眼は非常に鋭く、これまでの私の認識を覆すものでした。

また、視野がモンゴル国内にとどまらず、ロシアやヨーロッパ、そして日本を含む周辺地域へと多角的に広がっていく点も大きな収穫でした。単なる戦争の歴史ではなく、モンゴル帝国という巨大なネットワークが日本にもたらした文化、学術、思想、宗教、芸術、そして美術といった「世界様式」の流入と、それが日本に与えた多大な影響を無視してはならないという言説には、目から鱗が落ちる思いがしました。

ただ、恥ずかしながら私自身に世界史の基礎知識が乏しかったため、こうした重厚な論考を完全に噛み砕いて読み解くには、やや難解に感じられる部分もありました。

だからこそ、著者の杉山正明先生がすでにお亡くなりになっていることは、本当に残念でなりません。今のような混迷する日本情勢や世界情勢を前にして、先生がどのような視点から歴史を紐解き、どのような言葉を残されたのか……その解説をぜひ伺いたかったです。

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2026年06月09日

Posted by ブクログ

ユーラシア大陸全体をダイナミックに動かしたモンゴル帝国。
現在の中東情勢、中央アジアに影響を与えていたとは。

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2020年01月19日

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