あらすじ
桃子は高校1年生。中学時代に親友だった綾美も同じ高校に入学したが、まもなく不登校になった。それは中学時代に体験した壮絶ないじめが尾を引いているからだったらしい。一方、人数不足の「うた部」(短歌)に思いがけなく入部した桃子は綾美に対して、高校で友達は作らないという宣言までしてしまう。そしてある日の放課後、うた部で短歌甲子園に出場しようという話が持ち上がって…。第53回野間児童文芸賞受賞作。
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Posted by ブクログ
短歌を詠む「うた部」の高校生のひと夏を描いた物語です。
主人公の桃子は、「高校では友人を作らない」と決めで新生活をスタートさせます。同じ中学校から進学したものの引きこもりになってしまったかつての親友・綾美との関係もぎくしゃくしたまま。
そんな中、2年生の清ら先輩に強引に「うた部」連れていかれて短歌に出会い、「うた部」の先輩たちとともに短歌甲子園への出場をめざして県予選に挑みます。
作中に出てくる石川啄木や在原業平の歌とその解釈は講釈臭くなくてストレスなく頭に入ってきますし、登場人物が折々に詠む短歌は物語と合わさって心に響きます。
ストーリー展開は少しご都合主義というか、「そんな風に上手くいくかね?」というところもありましたが、非現実的な展開ではありませんでしたし、感動的で心地よい読後感でした。
シリーズ作品ですので、続刊も手に取りたいと思います。
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言葉の可能性を信じることができる作品にしたい…と、作者は短歌を一から勉強してこの小説を書いたと知り驚いた。
いじめが原因で引きこもってしまった綾美、親友を裏切ってしまった桃子の気持ちがリアルに伝わってくる。
高校の"うた部"の仲間と短歌を通して繋がっていくうちに、物語は明るい方へ動き出す。
いと先輩や清らの恋バナがストレートにうたとして詠まれたり、短歌大会の題詠が「恋」とは、今どきの高校生らしいなと微笑ましく思えた。
傷つきながら、戸惑いながらもそれぞれが懸命に生きている姿に感動した。
表題の「うたうとは小さないのちひろいあげ」が
連歌の上の句であったことが終盤になって明かされる。
桃子の想いを受け止め、綾美が下の句「宇宙へ返す
ぬくもりをそえ」と詠んだ時、やっと二人の気持ちが通じ合った。
私は1人じゃないと信じて生きる!
作者が伝えたかった想いを、私も読み手の1人としてしっかり受け取りたいと思った。
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桃子は高校のうた部に強引に勧誘される。短歌で気持ちや情景をうたうことや、先輩たちに心惹かれる。しかし桃子は幼なじみで不登校となった綾子と、高校では友達を作らないと約束しているのだった。
友達を守れなかった後悔、自分の気持ちがわからず殻に閉じこもってしまう。そんな不登校の苦しみとふたりの友情、それと短歌の魅力が見事に融合された作品。
短歌の魅力を理屈で説明するのではなく、各々が自分の短歌を披露し批評し合う様子で示しているので、桃子とともに自然と受け容れています。
そこに挿入される綾子のブログの形をとった気持ちの吐露。
友人や両親に無理難題を押し付けて、攻撃的になることで己を守ろうとする。しかしそのままでいたくない、友人や両親を嫌いになりたくない。外に出て学校にも行きたい。でも怖い。そんな感情の波がそのまま書かれています。
このブログと短歌は繋がり合うものかもしれません。
自分の気持ちをどう表わすか。
短歌では五七五七七の31文字で表現すると決まっています。制限があるから気持ちをまとめることもできるのでしょう。
そして自分の気持ちをただ吐き出せばいいのではない。伝えたい相手に伝えるためのものである。そのことを意識することで、自分にも届く言葉となるのでしょう。
不登校を扱う物語は、現在たくさんあります。
そこでは自分で制御できない自分の気持ちと、どう取り組むかが問題ともなります。
そしてここでは短歌が核となり、桃子や綾子の気持ちを掬い上げています。
ひとりはいいけど、ひとりぼっちはだめ。重荷は自分ひとりで背負ってはだめ。つらい時に人に頼ることも大切だ。そのために仲間がいる、友達がいる。
うた部の先輩と顧問の先生。素敵な仲間とともに過ごす時間。その心地好さも魅力となっています。
Posted by ブクログ
凄く良かった。
「うたう」ことを通して前に進んでいく…
いじめとか不登校とか友情とか。心臓をギュッと捕まれるようなことなのに、がっつり短歌、「うたう」話です。
タイトルの「うたうとは 小さないのち ひろいあげ」に続く下の句をよんだとき、泣けました。
短歌の授業のとき、そっと生徒に進めてみたい一冊でした。
Posted by ブクログ
うーーん やられた
読んでいるときも
読み終わった後も
心地よい感動が心に溜まっていくような
気がしました
「和歌」を持つ国に
「言霊」が生きている国に
生まれてよかったなぁ
と 思わせられました
「ゆらゆらと 雲のあいまに 浮かぶ月
わたしはなにを 失くしましたか」
「うたうとは …」よりも
桃子さんの 星空から 降りてきた この一首に
じーーん と してしまいました
Posted by ブクログ
31文字。
のびやかに、はずんで、とどめておけない。
時にかすかに、時に打ち付けるような激しさで
自分の中からあふれでる、かたまり。
「うた部」という短歌を詠む部活に出会う高1の桃子。
部屋に引きこもってしまった友達の綾美。
個性豊かな「うた部」の先輩、いい距離感の顧問の先生。
それぞれが、それぞれに抱えていること。
そこから生まれてくる短歌が、どれもどれも愛おしい。
表題に一目ぼれして、手に取りました。
この下の句、気になりませんか?
うたうってすごいな、生そのものなんだなぁと
唸ってしまうお気に入りの一句になりました。
今まで短歌には、全然興味ありませんでした。
うた部のみんなが詠んだ短歌にビックリしてしまい…。
鮮やかで、艶やかで、
生きている言葉がその人そのものを、その瞬間に形作るんですね。
人としての成長がこんなに視覚に残るなんて。
自分で詠めるようになるかはさておき…。
遅ればせながら、いろいろ短歌を知っていこうって思います。
Posted by ブクログ
短歌に最近興味を持ち、短歌を扱っている作品を知り手に取ってみました。
最初の方はブログが痛々しくて読むのがしんどかったのだが登場人物達の背景を知ると気持ち的に寄り添うことができ、最終的には綺麗な着地を見せる作品でした。
先生が出来すぎでもないところがバランス良き笑
2023.12.9
190
Posted by ブクログ
短歌っていいなあと改めて思った。
ブログでも自分の気持ちは記せるけれど、
限られた字数にギュッと凝縮させる。
しかも他人の批評を受けて直すことで、
自分の気持ちに他人が共感してくれるようになる。
高校の授業で、短歌作りをすると、
意外なほどに頑張る。
やっぱり人は誰かに何かを伝えたいんだなと思う。
Posted by ブクログ
堅苦しくない短歌もありなんだな、と思った。
そして、言葉の背景を知っているだけで、楽しみ方感じ方が広がるんだな、とも思った。
桃子が綾美に泣いて謝るところがすごい。
自分がひどいことをした相手に、真正面から謝るって、よほどの覚悟だろう。
Posted by ブクログ
子どもの読み聞かせで、村上しいこはこれまでに数えきれないほど読んできた。特に「はじめての俳句」「はじめての詩」「はじめての標語」のシリーズは、子どもたちも僕も大好きで、子どもたちの作るユーモラスな詩がどれも楽しかった。
このうた部三部作では、部のみんながそれぞれに短歌をつくるのだが、それが本当にその心情をよく映していて、心を打つ。短歌の良しあしは正直よくわからないところもあるし、先生が指導して直すのも半分くらいは「本当にそのほうがいいの」と思ってしまうところもあったりするが、高校生たちがつくる短歌はとても真摯で嘘がない。これを一つ一つ作者が作ったのだと思うと、本当にすごい。
物語に関しては、桃子ちゃんのうじうじしたところが少々うっとうしいが、いとさんや清らさん、きっぱりした周りの人にはげまされ前に進んでいくところはなかなか悪くない。
Posted by ブクログ
同じ高校に入学した2人。親友だったのだが、綾美は中学時代の辛い経験からその親友の桃子のことも信じきれず、不登校になる。桃子もなんとか綾美を助けたいが重荷に感じてしまう自分もいる。学校生活を楽しまないように自分を縛るが、ひょんなことからうた部に入部することになる。
クラスの日の当たる場所でなくてもいい、誰しも自分が受け入れられる場所が必要。1人では抱えられないことも、信頼出来る人の手があれば軽くなる。その信頼する、ということが一度覆されると本当に難しいことになるのだが…。2018.6
Posted by ブクログ
桃子と綾美が清らさん、いと先輩、業平先輩、難波江先生と、優しい言葉だけではなく、少しキツイことでも、ちゃんと自分の言葉で思いを伝えてくれる人に出会えて、少し立ち止まってしまったかもしれないけれど、また二人で同じ道を歩めるようになれてよかった。二人を、綾美と世界を結びつけてくれた言葉と歌っていいなと思いました。つらかったこと、苦しかったこと、悔しかったこと、それらを乗り越えても不安はまだある。それでも私は何も失ってはいない。明日がある限り、何も失ってはいない。
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弱さを抱えながら前を向いて歩く高校生の姿が痛々しくもすがすがしい。人に寄り添うには、その人に寄り添う人が必要。そうやって人がつながりあえたらいい。心ない言葉を言う人の貧しさに引きずられてはいけない。
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いじめをきっかけに学校に行けなくなった綾美。
その綾美を傷つけてしまったことで立ち止まっている桃子。
ささやかなきっかけで入った「うた部」そのメンバーの存在と、うたうことで少しずつ前に進んでいく話。
良かった。
Posted by ブクログ
日常の一瞬をハッとするような言葉で掴んで表現する。
短歌ってスゴい!と思ったし、そしてそれを創りだす高校生たちのキラキラとした才能に胸が熱くなる作品だった。
短歌をつくってみたくなったな~。
Posted by ブクログ
タイトルのインパクトにやられた作品。もちろん、作品もインパクトがあって良かった。『短歌』をテーマにした作品なのだが、キラキラした青春って感じがしてさわやかだった。いじめ問題など、ちょっと闇の部分もあるが青春小説なので、リアリティーを出すためには必要だったのかもしれない。短歌甲子園を目指し、奮闘する姿はすごくかっこよく見えた。
Posted by ブクログ
よかった。
最後に、綾美が下の句を詠み始めたシーンは感動した。
うたうとは小さないのちひろいあげ宇宙へ返すぬくもりをそえ
短歌って心の格闘技みたいだって、心を表す、でも言葉の羅列では表せない。そんな短歌を題材にして、高校生や中学生のころのいざこざやなんとなく学校へ行きたくなくなった気持ちとかが描かれてる。
清らさんや、いと先輩、業平先輩、先生のキャラもいい。
彩さんがもっと出てきてもよかったなー
ってとこで星4つ!
Posted by ブクログ
短歌が素晴らしい。
うた部の各部員、顧問の先生のキャラクターが皆魅力的でバランスも良い。
このキャラクター、レベルに合った短歌を詠ませているのがこの小説の見所だと思う。
新入部員の短歌のレベルがたんだん上がってくる過程も面白い。
綾美へのメッセージとして桃子が詠んだうたとふたりの連歌が胸にせまる。普通の文章で説明しているのと異なり何度も読んでかみしめて鑑賞してしまう短歌の力を感じた作品。
Posted by ブクログ
素直に感動してしまった。
中学時代に受けたいじめの影響で引き込もっている女子高生というありがちな設定で、平文だと理屈っぽかったり、くどくなりそうな場面もあるが、挿入された短歌の効果か全く気にならない。
試合以降に詠まれる短歌はどれもとても良いのだが、特に最終盤の2首、主人公二人の連歌と部長の惜別の歌は、何度も読み返して味わいたくなる。
巧拙含め、登場人物がいかにも詠みそうな歌を作れる作者の詠歌力には感心する。
さすが作家は言葉のプロだと思う。
伏線の中で、主要周辺人物1人の訳ありげな過去が回収されずに残されたが、敢えて回収しなかったか、それともいつか続編が書かれるのか。
Posted by ブクログ
短歌というテーマと、いじめというテーマ、それぞれ独立して物語が成立するところ、あえてこれらを融合させようという試みが意欲的だと感じました。
個人的には、登場人物の言葉遣いがかなりカジュアルなため緊張感に欠ける点と、物語の展開が急すぎて心情を重ねづらい(もう少し出来事を減らして、心理描写を重点的にした方が、感情移入しやすい)ような印象を受けました。
ただ作中にはたくさん面白い短歌が載っており、短歌に興味を持つきっかけとして、いい一冊だと思います。
Posted by ブクログ
ことばがほら,想いを伝えるから。
高校一年生の桃子は,通学時に出会った関西弁の先輩・清らから「うた部」に勧誘される。クールな恋愛の達人・いと先輩,理屈的で水泳部の業平先輩,ちょっぴり情けない難波江先生。しかし桃子にはなかなか踏み出せない理由が。それは不登校中の友人・綾美の存在。新たなクラスメイト・彩の干渉も気になる中,桃子は歌を詠み始める。
青春小説である。挟み込まれている短歌がまたそれぞれの登場人物を描き,桃子の変化,綾美の変化を感じさせる。綾美に関しては,ブログも。ことばというのは,ただ発するだけでなく,伝えなくては力を発揮しないのだ,と。生の表現から,その感動を伝えられることばにする。それが短歌の表現。本当は短歌だけではなくて,すべてのことばがそうだけど,独り言から,届けられることばになれ。
Posted by ブクログ
短歌青春小説
中学校でのいじめが原因でひきこもりになり高校にも通えない親友と短歌部を通して再生する話
エロ部長がよかった
いとさんカッコイイしうたもすてき
業平くんも理屈っぽいうたがいいなーー
挫折をしってる大人な高校生
かっこいいかこいい
業平くんに恋してる恥ずかしいポイントがいちいちウブな清らさんもいいな
ひきこもりブログがいたいたしいけどリアルっちゃリアル・・・
出てくるうたがいちいちイイ
先生もイイ
おもしろかった!
うたうとは小さないのちひろいあげ
宇宙へ返すぬくもりをそえ
っていいなーいいうた
じーんとした
たんかすきなのでつくりたいけど文才がない
無意識に生きているからいいのです鼻は呼吸器口は消化器
ってのがなんかすきかな
Posted by ブクログ
短歌を扱ってるのはとてもステキだったし、うた部、めちゃ良かった。
でも村上さんはティーンの葛藤を描くのはそんなに得意じゃないと思うので、題材間違えてる気がするなぁ。
最初の構想通り、ラブコメにした方が良かったのでは。
とにかく短歌を作りたくなる良作。
Posted by ブクログ
近ごろの日本の児童書、YAは、本当にいじめ、不登校がらみのものが多く、それは書き手である大人にも、読み手である子どもにも、日常化した、リアルな問題なのだろうとは思う。が、あんまり多いので「またか」という感じだし、よほど出来が良くないと、感心も感動もできない。
で、これは、物語自体はたいしたことなく、市川朔久子の『よるの美容院』なんかの方が、よほど上手くて面白いのだが、なんと言っても短歌がきちんと書かれているところが素晴らしい。
ちゃんと詠み手のキャラクターを考えて作ってあるだけでなく、だんだん上手くなっていく様子も表現されている。
先日読んだ『ぱりぱり』など、主人公が高校生デビューした天才詩人という設定なのに、他の登場人物の人生を変えるほどの詩の、言葉は全くでてこない。「で、一体どんな詩なのよ!」とイライラした。
その点この本は評価したい。
物語が、もう少し練られていればもっと良かったのだが。