あらすじ
オロナミンC ごきぶりホイホイ アースレッド ダニアース
大ヒット・ロングセラー商品を生み続けた経営者の思考と発想を、マーケティングの第一人者が徹底解剖します。
壁際を素早く走り回り、家具などの狭い隙間に逃げ込む。そんなゴキブリを捕獲するアース製薬の「ごきぶりホイホイ」が発売されたのは1973年3月。集合住宅の登場や暖房効率の向上などがゴキブリの天下を招いていた。
この商品が世に出る3年前、アース製薬(当時は木村製薬)は経営不振に陥っていた。このため、大塚製薬グループが資本参加、同社の大塚正富氏が社長に就任した。大塚製薬社長だった兄の正士氏が会長となり、正富氏に「3年でヒット商品を出せなければクビ」と申し渡したという。最初のターゲットはゴキブリ。
「必死になって考えれば、答えは出るものだ」――1970年夏、冷房が効かないバスで窓を開けると蝉の声が耳に飛び込んできた。「トリモチは蝉どころか鳥も捕る。これだ! 」――早速、10人のプロジェクトチームを編成。工場併設の研究所で数十万匹のゴキブリを相手に、まず誘引剤入りの接着剤から開発を始めた。
「オロナミンC」「ごきぶりホイホイ」「アースレッド」「ダニアース」――大塚正士氏と二人三脚で超ロングセラー商品を生み出し続けた正富氏へのインタビュー、日経ビジネススクールでの講義などをもとに、マーケティングの第一人者が、そのヒット商品開発の秘密を、実際の事例とともに分析。事例の1つひとつが、企業の商品開発担当者やマーケティング担当者にとって参考になる、生きた商品開発ストーリーです。
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Posted by ブクログ
オロナミンCやごきぶりホイホイといったロングセラー商品を多く生み出した大塚正富氏の半生と功績を前半に、そして後半ではそのヒット誕生の裏側にある戦略をマーケティングの観点から解説を2部構成で書いた一冊。
前半ではオロナミンCやごきぶりホイホイなどの商品の誕生までの苦悩が本人や関係者の証言から書かれており、勉強になりました。
そのなかで正富氏が兄正士氏から受けた影響が強くあると感じました。
また、後半では2人の顧客やビジネスインサイトやJOB理論といったマーケティング思考と氏が開発した商品がどのように結びついているのかを39のパターンに区分して解説されており、こちらも大変勉強になりました。
そんな本書のなかでもオロナミンCの価格戦略と自信には感服し、ごきぶりホイホイやコバエがホイホイなど対象となる虫に対する飽くなき探究心には舌を巻きました。
あと、オロナミンCやごきぶりホイホイといったネーミングのセンスもヒットにつながる要因であると感じました。
視点を変え既存製品の欠点を見抜いてそこを解消する開発をすることによって顧客から圧倒的な支持を得て、アースノーマットやごきぶりホイホイなどが不動のロングセラー商品としての地位を築いていることが理解できました。
またEQや創造性というものが今後ますます商品開発において存在感が増すなかで、成功に向けて諦めずに挑戦することで道を拓いていくことができ、そのヒントが詰まった一冊だと感じました。