【感想・ネタバレ】甲子園という病(新潮新書)のレビュー

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Posted by ブクログ 2022年11月16日

野球に限らずスポーツ全部に言える問題ですね。
難しい問題だと思う。

自分も若い頃、結構真剣にスポーツに取り組んでいて上のほうを目指していましたから、監督の気持ち、選手の気持ちはとてもよくわかるつもりです。(親の気持ちは???)

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Posted by ブクログ 2020年12月28日

今後の学生スポーツを考える上で、大事なテーマが多く考察されています。関わる多くの人がこの本に書かれているようなことを、考えるべき大事なテーマだと認識することが必要だと感じました。

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Posted by ブクログ 2019年10月24日

 「甲子園至上主義」の高校野球に対して,もっと高校生らしい野球,部活動,ひいては若者の育成を行うよう,警鐘を鳴らすルポ。けっして甲子園で身体を壊した悲劇のヒーローに焦点を当てるだけではなく,現代にふさわしい監督の指導方法とは何か,文武両立に対する高校生の取り組み方はどんなものか,著者は,複数の事例を...続きを読む挙げながら,提唱する。
 第1章では,2013年に木更津総合高校のエースだった千葉投手を紹介。高校生のがむしゃらさを止められるだけの大人の意見や環境づくりの必要性を訴えかける。千葉投手の「異常な」投球は,ネット動画にもアップロードされているので,それを見ながら本章を読むと,問題の大きさを把握しやすい。
 第2章は,いわゆる指導者のエゴを問うもの。ここにケガに泣いた選手として,岸潤一郎選手が紹介されているが,彼は2019年のドラフト会議で埼玉西武に8巡目で指名された。右肘の靱帯を損傷しながらも,プロ入りが叶った同選手には,著者も今後さらなる取材をしたかろう。
 第3章では,松坂大輔と黒田博樹から考える”早熟化”がテーマとなっている。選手生命の末路として,どちらが良かったのか,横浜高校の恩師の言葉も交えて陳述している。
 第4章では,メディアが潰した「スーパー1年生」として,酒田南高校のスラッガーだった美濃一平選手のエピソードを語る。地方都市においては,おらが町にヒーローが突如誕生すると,それを周囲が持ち上げてしまう傾向にあるが,やはり10代の若者に背負わせる期待はあまりにも大きい。こうした高校球児の学校生活に対して,大人の責任を投げかける。
 第5章では,野球の指導方法や指導者の在り方について論説。プロ・アマを問わず,「しっかりと指導者が勉強をする,研修を受けるような機関を作って,段階を踏んで指導者になるべき」(94頁)と持論を展開させる。
 第6章では,「プレイヤーズ・ファースト」の概念が,とりわけ高野連に欠如している点を追求する。高校野球の制度自体も近年タイブレークを導入するなど,変わりつつはあるが,それでも,その変革の遅さを痛烈に批判する。
 第7章は,「楽しく」野球をやる原点を,福知山成美高校の事例を通じて紹介。とくに「食事トレーニング」に対しては拷問であるとして,厳しく批判する。
 第8章は,沖縄県立美里工業高校の指導者を事例に,高校生に対して求められる野球以上教育的観点について言及。高校のレベルに応じて,生徒たちが野球だけでないものを高校全体で身に付ける重要性を訴える。
 第9章では,安田尚憲選手(履正社→千葉ロッテ),根尾昂選手(大阪桐蔭→中日)へのインタビューをもとに,野球を身に付ける下地になったものを紹介。とくに安田選手は歴史書の多読から勉強への理解力を修得し,根尾選手はスキーで鍛えた体幹が野球にも活かされていることを謳った。
 最終の第10章では,近年の高校野球が形式的なものにとらわれ過ぎて,高校生の個性やエネルギーの発動にブレーキをかけている物足りなさを批判し,本来の高校野球が「教育」の一過程に過ぎない点,そして大人の都合で彼らの可能性を狭めている点を強調している。
 読書前は,現行の「甲子園」,すなわち春夏の高校野球制度自体への批判かと思っていたが,本書を読み込んでいくうちに,話題は日本の中等教育の現状と改善点への進化していく。これは,野球なり,部活動なりで収まる範疇ではなく,肝心の勉強面自体が大学受験至上主義になっていることとも重複してくるだろう。勉強も,部活も,プライベートも,楽しいと思えるような高校生を増加させる努力を,「大人」は今後さまざまな場面で考えていかなければならないだろう。

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Posted by ブクログ 2023年01月01日

高校野球が好きで毎回各大会を楽しみにしている1人です。
東京都では、清宮君が出てきた1年生から3年生までは、東京都高野連の対応、メディアの対応は異常なほどでした。両者からは何がなんでも早実を甲子園へという雰囲気が感じられました。本書で指摘しているとおり当時はメディアの力は凄いなと感じていました。
...続きを読む書を読み、また違う角度から高校野球を楽しみたいと思いました。

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Posted by ブクログ 2021年08月17日

高校野球ファンなので興味深く読みました。

甲子園での試合は素晴らしい事に異論はないですが、勝利至上主義、投手の酷使やメディアの騒ぎ過ぎなどには以前から疑問を持っていました。

本書を読んで、指導者やメディアを初めとした周りの大人たちのエゴから問題が引き起こされていると分かりました。

特に深刻なの...続きを読むは指導者の問題だと思います。本書での「プロ野球選手は経験が豊富で技術はあるけど、それは能力であって指導力ではない」「指導に関する基軸がないから日本の指導者は経験論でしか語る事ができない」という指摘は重要です。

日本では現役で活躍したアスリートをすぐに監督やコーチにしてしまうケースが野球以外にも多いですが、彼らが自己流の指導を押し付けて選手を潰している事が少なくないと思います。

本書でも指摘されていますが、やはり指導法が学べるような機関を作って、きちんと論理的に指導できるような指導者を育成する必要があると思います。


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Posted by ブクログ 2019年08月05日

近年、甲子園への注目はすごいものがある。
地方大会でも、注目選手がいたり、好カードであればプロ野球並みに人が入る。
そんな中、今年注目の大船渡高校の佐々木朗希投手が、地方大会の決勝でマウンドに上がらなかったことが話題になった。学校にはなぜ投げさせなかったのかと抗議の電話があったようだ。
投げさせなか...続きを読むったのは、その4日前の4回戦で194球、前日の準決勝で129球投げたからに他ならない。
それだけの投球数を考えたら、翌日の決勝で投げさせるわけにはいかないだろう。疲労が重なりケガにつながるかもしれないからだ。
そんなことも分からず(分かっていながらかもしれないが)投げさせろと抗議の電話をする人たちには、ぜひとも本書を読んでいただきたい。
指導者、選手、それぞれの立場から甲子園というものが語られている。
最終章で、筆者が「本来の高校野球は「教育」の一過程であり」と書いている。
そういった本来の意味に立ち返って、今一度高校野球のあるべき姿を考える必要がある。
著者の提案する試合スケジュールに余裕を持たせるということには大賛成だが、高校野球に充満している嫌な空気や価値観を変えていかなければいけない。
勝利至上主義である今の高校野球に、一石を投じる内容であった。
ファンも選手ファーストの価値観で応援するべきである。

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Posted by ブクログ 2018年10月04日

最近、甲子園野球の闇の部分が注目されている。真夏の炎天下での試合、エース投手の過剰な投球数、指導者や学校の勝利最優先主義、高野連の選手軽視などなど。高校野球とはしょせん、部活動の一つのはずなのだが、そこに甲子園というものが存在していることで、青少年教育とはかけ離れた行為が介入し、周囲もそれを異常なこ...続きを読むとだと認めなくなっている。

ベテランの高校野球記者である著者は、こうした高校野球の裏を監督側、選手側からの取材を通して明らかにする。

甲子園での優勝を目指すという理由があれば、少々のことは許されてしまうし、選手がそれを受け入れてしまう高校野球は確かに問題だ。もはや宗教に近い。

が、そもそも野球というスポーツシステムにも問題があると思う。9人のスポーツなのに、投手への精神的、肉体的負担が多すぎる。本書で登場する選手もほとんどが投手。高校レベルであれば、強力なエース投手1人がいれば、勝ち続けてしまうというスポーツに、甲子園という利権が絡んでしまったことが、高校野球の悲劇だ。

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Posted by ブクログ 2019年10月20日

15年のフリーランス取材経験があるスポーツジャーナリストが、日本の高校野球界に身を置いたことのある選手や指導者たちへのインタビューを通し、日本の高校野球界にまつわる不合理なシステムや問題点についてあぶりだす。

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Posted by ブクログ 2018年12月11日

勝利至上主義の指導者、肩や肘を壊してもエースに投げさせるシステム…。甲子園の魅力と魔力を知り尽くしたジャーナリストが、甲子園の「病理」を徹底解剖し、「甲子園改革」を提言する。

投手の酷使をはじめ高校野球の弊害はさんざん言われてきたが、今年ようやく延長戦でのタイブレークの導入などがあった。でも米国な...続きを読むどに比べれば少年虐待ともいえる実態は変わらない。高校野球ファンとしては何とももどかしいく、NHKも朝日新聞も高野連も動かざるを得ないような何か画期的な提案が本書にあったらよかったのに、と思う。(Ⅽ)

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Posted by ブクログ 2018年09月29日

元々阪神ファンなので甲子園に興味はあるのですが、それ以上に、虐待というイメージを持っている高校野球への関心が、読むきっかけになりました。P86 態度や行動は人の心を変える。マウンドや普段の生活でもやることを一定にさせていくと、気持ちも一定になっていく。人としての姿勢が向上すると、成長が伴う。P96 ...続きを読む日本では指導に対する機軸が無いので、指導者は、経験論でしか語ることができない。それが、プロ野球の監督を指導未経験の人物が勤めることや怒号・罵声を響かせる少年野球の指導環境へとつながっているのではないか。P134 元阪神のマートン「一つのことに集中する日本人は、野球の練習を8時間することもある。
半面、人生において大切な教育がおろそかではないか。スポーツだけを続け、20代後半から30代でやめたら、どうやって生きていくのか、ぼくも野球を終えた後の人生でやりたいことが沢山ある。少し残っている単位をとるために、また、大学へ戻って勉強をしたい。残りの人生を豊かにしたい。」P137 甲子園出場やプロ野球に入りたいという夢を持つことは大切だが、実際にプロになれる選手は限られているし、プロに勧めたとしてもいつかは引退する。野球を取っ払った時に何ができるか、育るための目標を失ってはいけない。将来、人生の勝利者になれるか?いかに社会に出てから仕事をちゃんとやって幸せな人生を送るか。今の勝ち負けではなく、生涯賃金が大切。P140 工業高校の資格取得は簡単ではない。1つ取れば、それが成功体験になって、勉強するようになる。P143 甲子園という目標と将来の生き方の両方追うと、人としての幅が広がる。野球しかやっていなければ、野球がダメなら全部だめ。全体の生き方を考えながらやっているからこそ、周りを見る目が生まれる、工支援という役割。P144 甲子園へ行くことはできた、その代償として仕事も何もできない人間になった、では何のために高校へ通わせたか分からない。P181 野球で頑張る力のある選手は、勉強や日常生活など他のことでも同じような成果を挙げられるし、勉強をやり遂げる集中力を持った子は、運動をやらせればある程度のレベルには行くのではないか。人間の能力には、それくらいの幅と対応力があるはずだが、「甲子園に行かせたい」「有名な大学に行かせたい」と大人の都合によって可能性を狭めているのが、今の教育の現状になっているように思える。

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Posted by ブクログ 2018年09月26日

もっとも暑い季節に、
もっとも暑い月に、
もっとも暑い場所で、
もっとも暑い時間に、
行われる全国高校野球選手権大会。

夏の高校野球開催中の放映される「熱闘甲子園」。
そこに描かれるのは「勝敗」を超えたところにある、
仲間との友情、控えで終わった3年間、怪我で裏方に
回り仲間を支えた…と言ったもの...続きを読むが格好のネタとなる。
悲哀・明暗・陽陰、勝負の裏にあるコントラストを
情感たっぷりに「爽やかさ」という文脈ですくい上げる。

この視座はメディアに限ったものではない。高校野球
ファンしかり、今や国民感情にまで昇華していると
言っても言い過ぎではない。

夏の甲子園大会は100回を経た今も「感動」「清廉さ」
を希求し続けられる神話的な世界そのもの。
甲子園が「聖地」と言われる所以はこれなのか…と、
思えば妙に納得も行く。

著者は15年にわたる取材を通じて得た美談溢れる
感動の裏にある高校野球の「勝利至上主義」の名の下に
漂着した「不都合な真実」ー炎天下での開催・肩や肘を
壊しても連投させる酷使・絶対服従を前提にした
長時間練習・野球留学等ーをつまびらかにしていく。

結びとして、これまでの高校野球の現場で日常的に
行われてきた常軌を逸した様々なことが総括される
ことを望むと著者は綴る。

確かにそうではあるが、その一方で、その過酷な練習
と理不尽な環境を生き抜いた屈強なプレイヤーは、
プロ野球レベルのスキルを持ち備え、甲子園で
目覚ましい活躍ができればプロ野球入りが確かなものと
なり、そのレベルが超高校級ともなれぱMLBのスカウト
まで大挙して押し寄せるオーディションの場でもある。

僕はこうした事実と現実を主催者の朝日新聞社はどう
見ているのかと思う。社会正義を自認し厳しく筆誅を
下してきた朝日新聞が称揚するのはあくまでも涙を
誘うドラマであり、教育の一環としての高校野球。
このアンビバレンツな現象そのものが今の甲子園大会
の置かれた状況を端的に表してるように思う。
甲子園という病は罪深く、その病巣は根深い。

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