あらすじ
2008年フィリップ・K・ディック賞受賞作家
デイヴィッド・ウォルトン最新作
未知の菌の力によって知能が飛躍的に向上したニールの兄ポールは、アルツハイマー病の父チャールズまでをも菌に感染させ、ともに病院から姿を消してしまう。菌に感染して以来、ポールの行動は明らかに不自然だ。兄への不信を胸に、父を探すためアメリカへと帰国したニールだったが、無事に保護した父から衝撃の事実を聞かされる。 時を同じくして、菌の感染者によって勢力を拡大したブラジルの反政府組織〈リガドス〉が台頭。不可解とも思える拡散力で、ブラジルだけでなくアメリカ国内までをも混沌に陥れる。NSAにもその余波が押し寄せ、ニールによって解読されたリガドスの通信の暗号形式が、次々と別のものに切り替えられ、解読が困難になっていく。 菌の感染とともに影響力を拡げるリガドスの脅威は、世界規模の危機へと発展する。そしてその背後には、暗躍するポールの影があった。ニールが菌と人との狭間に揺れている間にも、リガドスはついにアルバカーキの核弾頭貯蔵施設への侵攻を開始する。
著者について
■著者略歴
デイヴィッド・ウォルトン
David Walton
アメリカ、フィラデルフィア在住。2008年にフィリップ・K・ディック賞を受賞した『Terminal Mind』でデビュー。著作に、量子物理学を扱ったSFミステリー『Superposition』と『Supersymmetry』、“平らな地球”が描かれるSFファンタジー『Quintessence』とその続編『Quintessence Sky』などがある。昼間はロッキード・マーティン社で働くエンジニアとして、そして夜には7人の子供の穏やかな父親として二重の人生を送る。
■訳者略歴
押野慎吾
Shingo Oshino
東洋大学国文学科卒業。卒業後いくつかの職を経たのち、現在は新聞社勤務のかたわら、フィクション・ノンフィション作品の翻訳に従事している。訳書に『地獄の門』(小社刊)などがある。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ジャケットに一目ぼれして購入。当たり。
菌が肺から脊髄へ菌糸を伸ばし、人の人格を変える。
フィクションだが、未だ見つかっていないだけで、近い未来本当に怒ってしまいそうな話である。
Posted by ブクログ
「天才感染症(下)」
脅威が世界規模へ。
南米の異常事態(もはや間違いなく戦争)に加え、家族の失踪、更に菌類は人類をコントロールし、菌類本来の生存本能によって拡大を続け、遂にはアメリカ全土を支配しようとする。ニール達は、誰が味方かは分からない中、菌類の支配を止める策を見出そうとする。が、その策は菌類を更に支配する菌類を投入することだった。感染した者から国を守る為には、菌類と同じことをしなければならないのかと苦悩するニール。しかし、苦難はそれだけでは終わらない。
怒涛の展開に加え、スリリング。下巻はそんな印象だ。ニール達の果敢な闘い、アメリカ上層部の混沌、菌類に支配されたポール達の暗躍。これだけ詰まって尻すぼみになっては困るくらいだ。
これに加えて、随所にはさみ込まれるチャールズとニールの親子愛がぐっとくる。アルツハイマー病が菌類によって回復したが、元に戻るには菌類を抑えねばならない。チャールズは、支配されていない自我の中でそれを感じ、また家族を忘れていくことを悲しむ。ニールは何もしてやれないのだ。しかし、そんな悲しみの中でニールに残す父の言葉がぐっとくる。
また、ポールも同様だ。ニールからすれば、菌類に乗っ取られたが、中身はポールなのだ。しかし、菌類の猛威と止めるにはポールを止めるしかない。
ニールと兄、父、そして母との人間模様がしっかりと描かれていて、単なるSFに留まっていないと感じる。また、人間模様と言えば、NSA局員との関係も見逃せないポイントだ。下巻の相棒的なブレナンとの関係は見所で、これで終わりかと思いきや、あの人の登場である。この点は実に海外小説っぽいなと思う。
王道ストーリーで、キャラも立ち、人間模様も描いてある。きっと映像化しやすいに違いない。一押しキャラはメロディとなるが、ニールの妙な人たらしと抜群のひらめき、突っ走る感も捨てがたい。
Posted by ブクログ
上下巻完結。
前半のじわじわと事態が明らかになっていく緊張感、中盤の被害が為すすべもなく拡大していく様子、主人公が感染してからの思考転換と解決に至るまで…と、起承転結がしっかりとしており途中で飽きることなく読んだ。
主人公が感染し、思考が侵されていく様子は、これがやりたくて作者は一人称で話を書いていたのかと納得。
抵抗しながらも受け入れて変わっていく思考が面白かった。
親子の話も大きな見せ所だと思う。
この親子にとっては、大変で被害は計り知れないが、一瞬の贈り物だったのかもしれない。
Posted by ブクログ
前編に引き続き終盤まではかなり面白い!けれども終盤にかけては、なんだか煮え切らない展開に。
オチの付け方がもっとワクワクする展開になると期待しすぎたせいか、少し物足りない消化不良感がありました。