【感想・ネタバレ】ニッポン 終着駅の旅のレビュー

あらすじ

その先には進めない本当の終点、そこから先バスやフェリーで乗り継げる終点、さらに不採算路線の廃止で中間駅が終点になった例など、さまざまな終着駅への旅を紹介する。

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Posted by ブクログ

 そこで終点になって、そこから線路がない「終着駅」の数々を紹介し、終着駅になった経緯を含めた路線の歴史や、その駅からどういった観光ができるのかといった情報を、いくつかの写真とともに紹介したもの。
 最初はただの紀行エッセイかと思ったが、割と旅の提案、というか読者も体験できそうな情報が含まれていて、いくつかぜひ実践してみたいと思ったところもあって、意外と良い本だった。どうも著者は「乗り鉄」に対して批判的らしく、乗ったら終わり、じゃなくてもっとそこでできることを何かしろよ、というスタンスなのかもしれない。でも実際、本当に駅周辺には何もない、という、ただ雰囲気とか風情を感じて終わり、という駅もあると思うので、事実上は乗り鉄と変わらなくなるところもあるのかなとは思うけど。
 以下は面白かったところのメモ。「鉄道」を「鐵道」と書く会社がある話で、真岡鐵道は、「以前は国鉄真岡線だった路線で、不採算路線ということから地元主体の鉄道となった経緯がある。『真岡鐵道』の『鐵道』の字が『鉄道』ではないのは、『鉄道』では『金を失う道』にとなってしまうからだそうで、同じ理由から小湊鐵道や大井川鐵道なども『鉄』の字を避けている」(pp.34-5)ということらしい。大井川鐵道とかよくテレビで出るから、鐵道ってかっこつけてるだけなのかとか思っていたが、ちゃんと理由があった。それから、読んでいると、個人的に京王をよく使うだけに、結構京王の車両がいろんな路線で使われてるんだなあというのを感じた。銚子電鉄とか伊予鉄道とか。また、最近読んだ『広島市のトリセツ』という本で知ったが、もともと廃止された区間が復活する例としての「可部〜あき亀山間」1.6km。「宅地開発が進み、利用者が見込まれる地域が北進したとでもいえよう。終着のあき亀山駅周辺は、宅地化がはじまってはいるものの、畑が多く残る風景で、中国山地もそう遠くないところにみえる、いわば宅地と山地の境目のようなところであった。だが、駅ができたことによって、今後は宅地化が加速するのであろう。広島駅から乗り換えなしで五〇分の地となったからだ。」(pp.170-1)というのが面白かった。でも今は熊問題があるから、山地との境目、って大丈夫なんだろうか。あと、そもそも背景として、もともと山陽と山陰を結ぶ予定だったが、その理由は当時、軍事輸送のため、つまり「ひとつの路線が攻撃されても、いくつかの路線を有していれば物資補給路を断たれることはない、という考え」(p.169)があった、というのが興味深かった。「たとえば、静岡県の二俣線(現在の天竜浜名湖鉄道)は、東海道本線が海に近い地域を走っているので、海からの攻撃を受けた場合のバイパスと考えられていた」(同)らしい。鉄道の廃止路線といえば、JR北海道が著しいと思うが、「列車がやってこなくなった終着の様似駅」(p.190)の写真があり、2016年の台風の高波で被害を受けて、2年以上運休、という状態だから、もう廃止になる可能性が高い、という話だ。って調べたら、5年前の2021年に廃止、ということらしい。いかに赤字路線の存続が難しいかという話も書いてあるが、栄えているものもいつなくなるか分からないな、という無常感。災害からの復旧は、「JRより、むしろ第三セクター鉄道のほうが自然災害に対する復旧には早い対応をしている」(p.194)というのは意外だった。「巨額の費用がかかる鉄道はJRといえども民間企業なので、無条件に復旧工事を『国が責任をもって』全額負担するというわけにはいかない。(略)たとえ赤字続きのローカル線であったとしても、企業全体として黒字経営だと、なかなか国がすべての面倒をみるというわけにはいかない。」(同)という事情で、さらに第3セクター鉄道は「実質的には県や市が管理する公営鉄道のような形態が多く、公的資金が使われやすいからである。」ということがあるらしい。車両の話はなかなか分からなかったが、なかでも見てみたいのは、鶴見線の車両。もともと山手線と京浜東北線で使われていた車両らしいが、「鶴見線を走る205系は、車体断面が寸胴なのに対し、都心を走る新型車両は、車体が少し膨らんだような断面をしている。(略)こうして車両の限界ギリギリの断面にしていて、その値は数センチメートルの差であるが、これによってラッシュのピーク時を思い出すと、足は入ってもお腹周りが車内に入らず、ドアがうまくしまらないという光景は見るような気がする。」(pp.154-5)だって。古い車両と今の車両でなんか違う、と思ったら、確かに古い車両が寸胴、というのはそうかも。「紀州鉄道」という名前の秘密、という話も面白い。「不動産業の信頼性を高めるために、小さな鉄道会社を買収し、紀州鉄道と命名したのである。つまり紀州鉄道の本業は不動産やリゾート開発であり、本社は東京にある。鉄道事業はほんの副業で、いわばあまり儲かる必要もないのである。東京の人のんかには『紀州鉄道』と聞くと、和歌山県のほうにたくさんの路線を走らせている鉄道会社と思う人も多いのであろう。」(pp.240-1)って、ふつう鉄道会社→不動産、だと思ってたら、まったく逆で、しかも名前を鉄道会社にする、ってそんなことあるんだ、と思った。最後に、空港に乗り入れるとなぜ高くなるのか、という話で、「空港へ到達する最後の区間に橋などがなくても、別会社の所有になっている」(p.250)ということがあって、その会社に通行料を払って運行する、という仕組みがあるらしい。例えば「成田国際空港に乗り入れる京成電鉄やJR東日本も、空港に到着する最後の区間は、成田空港高速鉄道という、聞きなれない線路や施設のみを所有する会社となっている。(略)しかし、この成田空港高速鉄道もJR東日本、京成電鉄、日本航空などの出資でできているので、利用者としてはいまひとつすっきりしない形態である。」(pp.250-1)って、どういう商売?っていう感じ。でもなんか空港に行くと運賃が高くなる、というのはなんかそんなに違和感を覚えないくらい慣れてしまって、そういうものなのか、としか思ってないのだけど。
 この本で紹介されている旅の中でも実践してみたい旅もいくつもあったが、1つは「女川駅から金華山」。「仙台から日帰りの旅には最適だと思う。東北に離島というイメージはあまりないかもしれないが、金華山は一見の価値ある島なので、一度訪れてみるのもいいだろう。」(p.85)という、確かに東北って日本海側は行きにくいし、なんか車じゃないといけないところは自分にはハードルが高すぎて、結局仙台と松島と盛岡とか行ったら、あとどうしよう、という感じがあるのだけど、仙台から日帰りの離島、って面白いかも、って思った。やってみたいけど、さらにハードルが高いのは「境港からロシア」。「境港の駅前にあるフェリー乗り場からは、一日一便ずつだが、隠岐汽船のフェリーと高速船が出ている。境線から隠岐に乗り継ぐのも充実した旅になる。」(p.102)とここまでだったらできそう。「さらに、境港からは、韓国籍のDBSクルーズフェリーという船会社が、韓国の東海市経由でロシアのウラジオストク行きの定期船を運行している。(略)もともと鹿児島〜沖縄間で使われていた船で、つまりは日本の中古船である。」(p.103)ということで、今は知らないけど船で韓国経由でロシアに行く、ってすごいレアな体験だと思う。「日本とロシアには領土問題があるが、この地域に関しては、完全に日本は『蚊帳の外』で、韓国とロシアの間は人、ものともに多く往来しているのを感じた。」(p.104)ということだが、さすがにウクライナの後からはもう無理なんだろうけど。もっと簡単に実行できそうな例は、下関〜門司をフェリーで行くこと。「列車で関門トンネルをくぐるより、観光にはこの船を利用したほうが、関門海峡が強く印象に残るだろう。」(p.175)というのは、実践してみたい。なんかもはや鉄道じゃなくて船の話になっているが、こうやって終着駅からの展開を知れるのがこの本の面白いところ。あと筑波山の日帰りハイキング、とかやってみたいかな。ところで「『つくばエクスプレス』を正式名称の『首都圏新都市鉄道』と呼ぶ人はいないであろう。」(p.216)って、初めて知った。本当に聞いたことない。旅ではないが、乗ってみたい路線としては、博多〜博多南。「車両は新幹線そのもので、路線は8.5キロメートルあり、その間をノンストップで運行する。大都市周辺で満員電車を利用して日々通勤しているサラリーマンなどにとっては夢のような通勤風景であろう。また、九州内で完結する路線なのに、JR西日本が運転するというユニークな存在でもある。運賃は距離相応の二〇〇円+特急券一〇〇円」(p.224)って、300円で新幹線乗れる、って貴重な体験だと思う。
 いくつか不満があるとすれば、1つは路線図がないから、そんなにおれは鉄ちゃんではないので、どこの路線のどこの話なのか分からないとちょっと難しい。中には駅名の読み方すら分からないのもある。もう1つはとても個人的な理由なのだけど、路面電車をもっと入れてほしいなあ。やっぱり路面電車こそ独特の雰囲気とか、廃止や地下鉄に置き換わらなかった独特の経緯がありそうだから、この著者に分析というか解説というか、体験を聞きたいなあと思った。もちろん普通の電車の終着駅がたくさんあるから、それも入れたら大変、ということなのだろうけど(『路面電車終着駅の旅』とか出してくれないかな)。ただ唯一取り上げられているのは富山の万葉線。万葉線って面白い名前だなと思っていたけど、この名前は「あの『万葉集』が関係している。万葉集を編纂した大伴家持が、高岡近くの伏木(JR氷見線沿線)に国守として不妊していたことに由来している。線名の由来が地名などではなく、ユニークな命名だったといえる。」(p.95)ということで、そういうことだったのか、と思った。確かに聞いたことのない地名の路線名よりは「万葉線」の方が確かに覚える。
 ということで、この本を買うときには、なんかユニークな駅とかについて知れて、ちょっと旅情を感じられればいいかな、くらいに思っていたけど、それ以上に収穫のあった感じの本で、今後の旅のためにもちゃんと取っておきたい本だった。ただし、2026年時点でどうなっているのかはよく分からないけど。本屋で『全国鉄道地図帳』っていう廃線の駅まで載っている本をだいぶ前に見つけたが、それを見ながらこの本を読むともっと面白いのかなとか思った。(26/08/23)

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2026年08月23日

Posted by ブクログ

「終点」ではなく終着駅。海岸沿いだったり、開発計画の都合そこで途切れてしまったりの日本の終着駅を筆者が旅して、それぞれの風景や成り立ちなどを紹介している。

筆者個人の主観がかなり入っている。「侘しい」「盲腸線」といったワードや、運営に関する率直な苦言など正直に書かれている。しかし寂れてしまった路線にもそこが持つ旅情やノスタルジーなど魅力があることを愛情を持って伝えている。

仕事柄日本各地に出張に行く機会があるが、どうしてもスケジュールの都合で効率的に動かざるを得なくなる。不便でも移動自体を楽しめるような、時間を気にしないで良い旅をしたいものだ。

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2024年09月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

<目次>
第1章  終着駅からバスに乗り継ぐ
第2章  終着駅からフェリーに乗って
第3章  行きどまりの終着駅
第4章  廃線、計画頓挫、長期運休で終着駅となった
第5章  終着駅も千差万別

<内容>
終着駅に絡むお話。でも、言わゆる寂しさを誘うようなものは少なく、実践的というか、1,2章はさらにその先を目指す。また、第4章を読んでいると、時間の流れを感じる。東日本大震災の結果の終着駅だったり(常磐線)、最近の災害の結果だったり(只見線、日高本線など)、哀しい終着駅もあるし、JR北海道はもはや鉄道会社ではないのかなと思ったり(収益重視では、北海道で鉄道は運営できないだろう…)。一方で、つくばエクスプレスの終着駅つくば駅の話とかは、新しいなぁと感じる。

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2018年06月30日

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