【感想・ネタバレ】遺伝人類学入門 ──チンギス・ハンのDNAは何を語るかのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

遺伝人類学の紹介。難解そうな部分もあまり手を抜かずにきちんと書かれている。数式は出てこないが統計の考え方などが分かってないと難しいかも

・ミトコンドリアは女系でY染色体は男系で、それぞれ遺伝していく。しかし集団内のミトコンドリアとY染色体を解析してみると、それぞれの遺伝的多様性が全く異なっていることも多い。

・遺伝的な距離と地理的な距離との間には線形な関係がある。遠方に住むもの同士ほど遺伝的な変異の違いも大きい。が、ミトコンドリアは地理的な距離が大きくても遺伝的な距離は比較的小さいのに対し、Y染色体は地理的距離が離れるにつれ遺伝的距離が大きくなる。筆者らの研究によると、この原因は婚姻制度にあるという。男性は家を守るとして土地からあまり離れない(遺伝的多様性がなくなる)のに対し、女性は嫁入りで他の土地にいくのでミトコンドリアの遺伝型も様々になる(多様になり、地域による遺伝的差異がなくなる)

・また、アジアを中心に、広範囲に渡るY染色体の一群があり、チンギス・ハーンのものだとされてきたが、遺伝子を詳しくしらべてみたところ、このY染色体が広まったのは4-6000年前で、チンギス・ハーンの時代とは合わないということが分かっている。

・多型にはいくつかあり、100塩基ほどの配列が繰り返されるVNTR(Variable Number of Tandem Repeat)、2-7塩基の短い配列が繰り返されるSTRP(Short Tandem Repeat Polymorphism)などがある。犯罪捜査のDNA鑑定ではSTRPが使われることが多い。ある部位のGCTの繰り返しが三回の人と四回の人など区別される。Snipは所詮、四塩基のどれかに変わるだけなので四通りしかない。STRPはのほうがバリエーションが多く、だいたい20座位ほど見れば個人の同定が可能だとされる

・人類の起源に関して、かつては多地域進化説(アフリカからでて各地に散らばったホモ・エレクトスが各地でホモ・サピエンスに進化したという考え)が優勢であったが、現在はアフリカ単一起源説が正しいとされている。この説によると、70−170万年前にアフリカを出たホモ・エレクトスはいったん絶滅し、その後アフリカで誕生したホモ・サピエンスが6-7万年前アフリカを出て世界に拡散した。DNAの研究からも、ミトコンドリアの多様性はアフリカ人のそれが一番大きく、かつ、その他の地域の人種のミトコンドリアはアフリカ人の子孫になっていることがわかっており、アフリカ単一説の根拠とされる。

・生物学的に別種とは、交配しても子孫が残らない(子供の世代はできても孫の世代はできない)こととされている。ネアンデルタール人とヒトとの間には交雑した痕跡が認められるため、ネアンデルタール人を別種と考えることをやめるべきではないかという議論もある。

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2018年08月26日

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