【感想・ネタバレ】柳橋物語のレビュー

あらすじ

気丈で働き者のおせんは、おとなしく控えめな庄吉と、乱暴者だが闊達な幸太の2人から相次いで求愛を受ける。幼さゆえに同情と愛とを取り違え、上方に修行へ行く庄吉の「待っていてくれるか」という言葉を受け入れた彼女は、しきりに会いに来る幸太のことをすげなく突き放す。たいへんな大火事が起きたのはそんな時だった。おせんは病気の祖父をかばって逃げ遅れ、窮地を救ってくれた幸太は、火に追われ逃げ込んだ川の中で、濁流にのまれ命を落としてしまう。火事で一切の身寄りをなくしたおせんは、幸太と不義を働いたという根も葉もない噂で心身ともに追いつめられてゆく。追い打ちをかけるように、月日を経て再会した庄吉からも幸太との不義を疑われ、婚約破棄を言い渡されて――。火事から町が復興し、柳橋がかけられるまでの日々に起きた、おせんという一人の女性の哀しくもたくましい愛の物語。他「生きる」ことへの悩みに真正面から向き合った『しじみ河岸』を加えた中編2作による名作集。

※本書は二〇一三年九月に新潮社より刊行された「山本周五郎長篇小説全集第五巻」、二〇〇五年十一月に小学館より刊行された「山本周五郎中短篇秀作選集2」を、文庫化したものが底本です。

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Posted by ブクログ

柳橋物語としじみ河岸
柳橋物語はもう、悲惨。泣きっ面に蜂という感じ
火事で祖父を失い、ショックで記憶喪失、洪水でお世話になったひとを失い、
結婚を約束した庄吉に勘違いされ、裏切られる。
しかし、最後には避けていた幸太の愛に気づく。
強い女性

しじみ河岸はもっと悲惨。救いがない。
家族を養うのに疲れて、犯してない人殺しの罪を被る。
律之助の操作により、罪を犯していないことがわかり、また元の生活に戻っていくり
救いがない。。

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2021年06月07日

Posted by ブクログ

柳橋物語
宝塚"川霧の橋"の原作ということで読んでみたけど、おせんちゃんに次々と災難がふりかかってくるし、そこに折れないところと最後の決断が本当に強いな…と。

しじみ河岸
事件の結末に何が幸せなのか…となるような苦しさ。「生きることに疲れきって、ただもう疲れることから逃げたしたいという気持ちで、ーああ、おれにはそれがよくわかった、おれはそのことだけでまいったよ」
この言葉に全てがつまってる

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2021年11月23日

Posted by ブクログ

元禄の大火と地震、日本は災害の国だ。江戸時代は燃えたり流されたりしたら住み替えも日常茶飯事でそのまま行方不明になってしまうことも多かったのだろう。おせんは火事でたまたま救った赤ん坊に縛られて庄吉の愛を失うが、その子があるゆえに亡くなった孝太の愛を得る。あまりに悲惨なおせんの境遇がしんどく、読み続けられるか不安だったが、最後の淡い光のような明るさに心底ホッとした。おせんの一歩一歩はとてもゆっくりとした歩みだけれども、なにか絶対に揺るがない心の強さがあって、こうして粘り強く生きていくことが価値なのだと思えてくる。

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2021年11月06日

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