【感想・ネタバレ】観光通訳ガイドの訪日ツアー見聞録 ドイツ人ご一行さまのディスカバー・ジャパンのレビュー

あらすじ

日本の自然や文化は海外からどう見られているのか。今後日本は国際社会の中でどんな国でありうるのか。著者は、ハーフリタイア後、ドイツでの駐在経験をベースに日本での観光通訳ガイドを始めて10年、この間、ドイツ語圏のドイツ、オーストリア、スイスなどの国々の人たちを中心に、世界各国の訪日観光客にナマのニッポンを紹介してきた。その知られざる日本再発見の数々をまとめたのが本書。日本の行く末を考えさせてくれるエピソードが満載だ。

亀井尚文(かめいしょうぶん)
群馬県前橋市出身。国立群馬大学電気工学科卒。トーメン(旧東洋綿花)入社、西ドイツ・ハンブルク駐在後、ミサワホームに移籍。ミサワホーム滋賀代表取締役・ミサワホーム販売建設社長・平成16年から山田建設監査役を歴任。現在、ドイツ語観光通訳ガイド、JGA日本観光通訳協会認定A級。主としてドイツ語圏からのお客さまを延べ1000人以上、日本各地へご案内している。外務省関連(社)国際交流サービス協会・エスコートガイド、日本観光通訳協会会員、ドイツ・東アジア協会OAG F.MITGLIED。リフォーム住宅会社まんまるハウス(株)顧問。エッセイスト。著書に「オジサンのノンビリ・タウンウォッチング」(碧天社)、「ゲルマンQ-ドイツ語初心者向けの雑学クイズ」(監修・アートン)。

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Posted by ブクログ

 商社の駐在員としてドイツのハンブルクで7年間過ごした筆者が、ハーフリタイア後に始めた日本での観光通訳ガイドの経験談を語ったもの。
 この本が書かれた2012には73歳だったそうで、70歳を超えてもこれだけ仕事ができて、そして経験談をまとめる本も書けるというのは、とても羨ましい。震災直後で観光業界が打撃を受けたという話が随所にあるが、今となってはやっぱりコロナの時の方が観光への影響という意味では大打撃だよな、ということと、もう一つはこれだけAIやらChat GPTで何でもできてしまう今、筆者がやっていた苦労(資料をドイツ語に事前に翻訳するとか、色々調べて知識を入れておくとか、急に変な質問をされても分からないとか)は、本当に昔話という感じもして、今の筆者がこの状況を前にして何と言うだろうか、と思いながら読んだ。
 今のランキングがどうかは分からないが、意外と広島・宮島が観光客のお気に入り観光スポットとしては1位(p.51)らしく、そして京都行って富士山見て銀座で買い物、みたいな流れが一般的?らしく、あらためて、日本人はそんな周り方しないよな、という感じのことをするんだなと思った。もちろん自分が海外旅行したらそういう感じなので、それの日本版はこんな感じ、というのを改めて知った。そしてこの著者は、これだけ日本中を巡っても東北にはほとんど行かないし知らない、みたいな偏りがあるのも興味深い。あとは面白かったことのメモ。まずトイレについての話、というのはポピュラーだそうで、「イギリスなら『Necessary room』(なくてはならない必要な部屋)とか、軍隊用語の『Shangri-la』(シャングリ・ラ=桃源郷)。」(p.96)って、一つも聞いたことないなあ、と思った。それよりドイツではゼロを表す「ヌル」とか「ヌルヌル」と表す(同)って面白い。けど本当に?って感じ。トイレといえば、「日本では小柄な私でもやっと座れるスモールサイズの便座が多い。とくにビジネスホテルなどによくあるユニットタイプのトイレはとにかく狭い。」(p.187)っていうのは本当そうだなと思う。でももしかしたら、外国の人だったら「これが日本のトイレか〜」みたいなカルチャーギャップとして受け入れてもらえたりするのかな。あとは、いろんな観光地で靴を脱がされるが、「アメリカからのお客さまも靴脱ぎは2回が限度で、あるガイドは3回目のとき、『torture(ドイツ語ではFolterqual)』つまり拷問じゃないかと詰め寄られた」(p.102)って、確かにおれも靴を脱いで下駄箱に入れるとか煩わしいし、足臭いの大丈夫なのか、とかいちいち思うから、靴を脱ぐ文化のない人たち、ましてベッドにも靴履いたまま寝そべったりする人たちには拷問というのは分かる気がする。いっそ傷がつかないように床を保護した上で全部靴というのはダメなんだろうか。でも確かに畳の間がアクリルボードみたいなものの下、というのは雰囲気はないかもしれないけど、可能なところはそういう感じで変えて行くというのもアリなのかも。客が怪我をして、その付き添いに病院に行くということもあるらしく、「医学用語の専門的知識がとくにあるわけではなく、通訳にひと苦労した。いわく、アレルギー、破傷風、傷口、抗生剤、麻酔、裂傷などなど。」(pp.136-7)の後に、ドイツ語でそれぞれの単語が紹介されているので、英語だったら、それぞれallergy, tetanus, wound, antibiotic, anesthesia, lacerationというのをおれも勉強した。同じように日本の庭園をめぐるツアーというものに同行すると、庭に関する用語も習得できるということで、例えば借景、枯山水、築山(p.139)。でもこれは築山(mound)以外はどれも説明的な感じになるのでは?と思う。あとは、いろんなコツやノウハウというのも面白いが、「寺の卍、何でナチと同じようなマークを使うのかとマジで聞かれたことがある。文字が反対でしょうと軽く流すのがコツ。下手にナチ問題に及ぶとまずい。政治の話はゲルマンとはしないことが鉄則だったが、今は様変わり。日本の政治のドタバタは常にドイツでも報道されていて、こちらよりも詳しいほど。(略)肩書。ドクター・博士とか、von(フォン)という旧貴族の名称は必ず使うこと。プライドは結構高い。一応『ドクターなんて言わないで』と謙遜するが、真に受けないこと。」(pp.177-8)だそうだ。あと本当にひどい「ドイツ人の女性同行ガイド」(p.145)の話は、読んでいるだけで滅入ってしまうくらい、こういう合わない人っているんだなと思った。社長とか代表取締役とかをこれまでやってきた筆者だからこそ余計に思うのかもしれないが、それにしても酷い話が載っている。
 ということで、観光客にずっとアテンドするって大変だし、天気で観光の成否が分かれて、それが直接ガイドの評価につながるというのも辛い話だよなと思った。でも筆者みたいに、時間やお金に余裕がある(ように見える)人だったら、アクティブな仕事として面白いのかもしれないが、筆者自身が述べているように、「生業には向かない。外国との接点、民間外交という視点で捉えると素晴らしい仕事である」(p.164)という仕事だから、お金じゃない、という人が就く仕事なんだろうなあと思った。おれは色々気を遣うし、その都度たくさん判断しないといけないし、そうやって自分が倒れそうになるんだろうな、って思うから、この仕事は怖くてできないなあと思った。(26/08/15)

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2026年08月20日

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