あらすじ
「キッシンジャーにやられた」
オヤジは言った。
そして
日本は「田中角栄」を失った。
逮捕から40年!
側近中の側近がはじめて明かす!
「田中軍団の青年将校」としてロッキード裁判に深くかかわり、
米国の敏腕弁護士招致のため、
また、フォード元大統領やロッキード社のコーチャン、クラッターを追って、
アメリカをも走り回った著者。
アメリカの真意、事件の真相、間近で見た角栄という人物。
自らも「郵便不正事件」で特捜部による「冤罪」を
目の当たりにした著者が、あの事件の司法、
マスコミに改めて問う角栄の無実。
【主な内容】
はじめに――あれから四十年
第一章 オヤジの側近として事件の渦中に
第二章 ロッキード裁判は間違っていた
第三章 真相を求め米国へ
第四章 米国の「陰謀」――その構図
第五章 何がオヤジを「闇将軍」にしたか
第六章 苦悩のゴルフとオールドパー
第七章 オヤジが枕元に置いた小冊子
33年前、「オヤジ」が枕元から離さなかった
著者作成の「極秘資料」全文を初公開!
《冤罪事件には、共通する構造があります。……私が故なく巻き込まれた郵便不正事件を改めて考えた時、それがロッキード事件の捜査と裁判に酷似していることに、私は気がついたのです。事件の底流には何者かによる政治的意図が働いている。……一貫して無罪を主張した田中角栄と、やはり無実の訴えを貫いた村木厚子。裁判の結果は全く逆になりましたが、私には二つの事件がダブって見えるのです。》(「はじめに」より)
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Posted by ブクログ
よく分かっていなかった、ロッキード事件がよく分かった。
田中角栄を追い落としたい三木さん、アメリカのいいなりにならず中国と友好関係を結んだ田中角栄に憤怒の念を持っていたキッシンジャー、社会の正義として金権政治の象徴の田中角栄を懲らしめたい検察、哨戒機P3Cのことについて触れられたくないロッキード社、これらの登場人物の利害が一致したのが、田中角栄の逮捕だったんだなぁ。
石井一氏は少し前の国会の答弁を見て、いい感情を抱いてなかったんだけど、少し印象変わりました。
しかし、この時から裁判に関する問題点と言うのは変わってないよね。恥ずかしく思います。
Posted by ブクログ
政治家というと、オヤジ・金に汚い・声だけでかい等々、私にとっては余りよいイメージはない。不信感という単語しか思い浮かばない。
しかし本書の第一印象は、政治家のそれに反し、なかなか良かった。率直に申し上げると、書きぶりが非常に真摯かつ誠実、しっかりとした調査と論証に基づいていたからだ。
昭和50年生まれの私にとって、物心ついたときには田中角栄はすでに院政状態で、テレビでも見かけることはあまりなかった。現在の令和ともなると、もはや歴史上の人物である。しかしながら、本作品の舞台はたった50年前の日本である。ついこの前であった昭和時代に、恐ろしい不正が起きていることに愕然とせざると得ない。
本書のメインテーマ、ロッキード事件だ。これが冤罪であるという。ロッキード事件での田中角栄の錠剤は受託収賄罪であった。この罪状が成立するにあたっては三つの条件があり、1.請託があり、2..金銭の授受および日時が確定され、3.職務権限がある、がそろわねばならないとしている。
ロッキード社から『ねえ買ってよー、お金こっそりと個人宛てで渡すからからさあ』とお願いがあり(請託)、実際にロッキード社から田中側にお金が渡された時間と場所が確定でき、そして田中角栄が権限者として『よっしゃ、したら航空機購入はオタクの会社で決定ぃー』と決めることができる、という三つがはっきりしているかだ。
しかし、このどれもが成立しない代物であった。
詳しい内容は本書に譲るが、検察の無理くりストーリー、それを許してしまう裁判所、更には状況に火に油を注ぐごとくワンサイド報道をしたマスコミ。この三者で誰もが罰を受けていないのであるから、本件のごとき事件は再び(ひょっとしたら我々の身の上にも)起こりうることなのだ。そう考えると背筋が寒くなる思いになる。
不正な検挙や裁判が起こってしまった背景(というか発端)は米国である。陰謀論的にまことしやかに言われる、田中角栄ははめられたというのは、本書を読む限りでは夢物語ではないと実感する。筆者が試みる関係者との面談はことごとく潰され、口を割ると殺されるといって話してもらえない。
事実は米国公文書館(NARA)での資料公開等を待つほか無いのかもしれないが、本書を読む限りは米国の政治的意図は明らかであろう。
法治国家でこのようなことが可能なのかと言われるが、それこそがインテリジェンスの存在意義であり、逆に日本の外交が弱いところでもあろう。
・・・
まとめると、昭和最大の疑獄事件であったロッキード事件について非常によく書かれた本だと思う。後半には戦後の天才政治家への回想が幾分続くものの、基本的にはジャーナリスティックに真摯に書かれた作品に思う。
私は陰謀論的な背景から読んだものの、日米近現代史を学びたい方、インテリジェンスに興味がある方、政治について興味がある方にもにお勧めできると思う。
Posted by ブクログ
田中角栄について語る時、「ロッキード事件」を抜きにして語ることはできない。本書はロッキード事件に焦点を当て、又、田中の金権体質についても自らの経験を率直に吐露しながら「親分 田中角栄」の無念さを代弁した一冊。
◎「ロッキード事件」についての著者の見解
「日本政府の対潜哨戒機(P3C)調達に絡んだ日米両国に横たわる巨大な利権スキャンダルを揉み消すために田中角栄がスケープゴートにされたのでは?」。この仮説の検証をすべく、幾度も渡米を重ね公文書の収集・関係者への取材を積み重ね、その証拠固めに奔走する。この抜かりのない調査は気鋭のノンフィクション作家顔負けである。
◎「田中角栄は本当にはめられたのか?」
事件の背景には、日本政府とP3C購入に暗躍する13名の灰色高官が存在し、この利権スキャンダルの発覚は日米の両政権を揺るがしかねない。その揉み消し工作の陣頭指揮を取ったのが国務長官キッシンジャー。田中政権になるや否や、中国との国交正常化、積極的な資源外交を行ない、陰で❝デンジャラス・ジャップ❞と罵り、田中の決断と実行力が癇に障っていたキッシンジャー。この大疑獄事件は田中を蹴落とす好機と捉え、ターゲットを田中角栄ひとりに絞る。そこで、民間旅客機トライスター購入に際して現総理大臣 田中角栄は5億円の賄賂を受け取ったという汚職事件にすり替える。
◎「四面楚歌の田中角栄」
この謀略を首相の三木武夫は脆弱な政権基盤の強化につながると考え、クリーン三木を標榜し、田中をターゲットに捜査を進めさせる。今太閤ブームは一気に去り、メディアは「反角」で世論を煽り、その世論を追い風に東京地検特捜部は、首魁を上げるべく「田中有罪ストーリー」を作り上げ、最高裁判所は賄賂を送った側の罪は問わないという、所謂「免責宣明」して証言をさせる…。北朝鮮ならいざ知らず、三権分立の国家がここまでするかと戦慄が走る。
◎「この謀略が事実だったとして」
政治家として<理想と志>を持ち、数多くの議員立法を成立させ、総理大臣へ。「これから我が国は米国追従から独自の道を!」の思いを胸に進みだした矢先に、アメリカに疎まれ収賄容疑を着せられ逮捕、刑事被告人へ。自派の勢力を拡大するも、子分の反乱にあい、酒に溺れ、病に倒れ、失意のうちに亡くなる。「今、田中角栄が生きていれば~」「稀代の政治家」の称賛の声をあの世でどう聞いているんだろう。田中角栄を深い虚しさの境地で聞いているにちがいない。
※巻末に併載されている著者が記述した「政治家として考える ロッキード裁判に関する一考察」の論文は読み応えあり。「世論の状況を考えると公開したら逆に反発を受けかねない」と考え、田中角栄とその周辺の5名だけに密かに手渡した小冊子。B4判・53頁・10章で構成された論文は、ロッキード事件と裁判の問題点・疑問点を多角的かつ論理的まとめた「無罪ペーパー」。著者の親分に対する深い愛情が書かせた論考。
Posted by ブクログ
田中角栄ブームの中で一冊読んでみた。
ロッキード側の証拠書類の誤送から始まり、法律的にも嘱託尋問+日本の刑事訴訟法にない免責を与え贈賄側に証言(それに反対尋問まで許されない)と言う、全くデューデリジェンスを無視した捜査で田中を捕まえた。
米国国務長官のキッシンジャーが韓国系記者から「ロッキード事件はあなたが仕掛けたものか?」の質問に対して、"Off course(もちろん)"という回答があったとは、この本で初めて知った。
Posted by ブクログ
ロッキード事件、前首相が逮捕されるという、昭和の一大事件。事件の名前、大方のあらましは知っていたが、この本読むことで、大体の経緯は理解できた。
田中角栄の側近が書いた本なので、明らかに冤罪を主張して、裁判の公正さが欠如していることを強調している。この辺りは、日本の司法システムは、方法論の正しさというより、世論の感情論に流されているところはあると思う。ただ、そのような世論形成に至ったのは、田中角栄のお金にまつわるイメージが悪い方向に働いたのは間違いない。クリーンな政治家というイメージと対極にあったことこそが、ことの発端だったのだろう。
田中角栄は無罪!!
2021年9月読了。
数年程前にNHKの「未解決事件」で、ロッキード事件について扱われ興味深く見たのだが、その内容たるや、
「アメリカが真面目に資料を見せてくれない」だの、「丸紅ルート、全日空ルートはともかく、児玉・小佐野ルートが皆目掴めない」…等と云う、「検察側のグチ」に終始し、田中首相の「犯罪」については殆ど触れず仕舞いで、えらく肩透かしな内容で腹立たしい記憶ばかりが残ったため、本書を手に取った。
事件関係人物や当時の政治家名を読んでいるだけで、あの頃の懐かしい思い出が甦ったが、確かに当時の世間は「田中派=金権政治=悪」と云う事が、世間では当たり前のように人口に膾炙されていたことを思い出す(今となってはごめんなさい)。
読後の感想としては、一連の事件全てがアメリカCIAによる謀略であり、クリーンでも風見鶏でも、誰であっても当時では(現在も?)逆らえない状況下に起こった、悲しい「安全保障上の政治悲劇」だということだ。日本の司法制度もメチャクチャにされた。
アメリカと云う国家組織は、自国の大統領ですら暗殺したり、わざと落選させたり出来、その記録を半永久的に非公開にしてしまう様な国家なのだ。アメリカの傘の下に居る日本等では一溜りも無かった事だろう。その冷徹さは、彼の国の同盟国として、私達自身も肝に銘じて置かなければならないのだ。でなければ「ファイブ・アイズ」になど今後入れて貰える理由が無い。
しかし、アメリカはこういう事ばかりしてきた事の対価として、現在ウィキリークスや、敵対国からのサイバー攻撃等のしっぺ返しに遭っている事を思うと、やはり「因果応報」と云う言葉を想起せざるを得ない。何十年経っても、「見せたくないモノは見せない」積もりだろうが、いずれ更にみっともない形でバラされる日が来る気がする。ちなみに、キッシンジャー氏もユダヤ系であることを付言しておく。
最後に、石井さんの個人的な「俺とオヤジとのアツい想い出」は、別の本か何かで書いてくださいよ。ロッキード事件と関係無い部分を取り除いたら、この本の文量はきっと半分ぐらいに成りますよw。その分だけ★はマイナス。