【感想・ネタバレ】江戸川乱歩と横溝正史のレビュー

あらすじ

日本の探偵小説を牽引した二大巨頭、江戸川乱歩と横溝正史。盟友として、ライバルとして、お互い認め合い、時に対立しつつ、一方が作家として執筆するとき、他方は編集者として支えた。太陽と月にも喩えられる日本文学史上稀な関係は、どのように生まれ育まれたのか。二人の大作家の歩みを辿りながら、日本のミステリ史のみならず、日本の出版史をも描き出す、空前の対比評伝! 【目次】はじめに/第一章 登場―「新青年」 ~一九二四年/第二章 飛躍―『心理試験』『広告人形』 一九二五~二六年/第三章 盟友―『江戸川乱歩全集』 一九二六~三一年/第四章 危機―『怪人二十面相』『真珠郎』 一九三二~四五年/幕間―一九四〇~四五年/第五章 再起―「黄金虫」「ロック」「宝石」 一九四五~四六年/第六章 奇跡―『本陣殺人事件』 一九四六~四八年/第七章 復活―『青銅の魔人』 一九四八~五四年/第八章 新星―『悪魔の手毬唄』 一九五四~五九年/第九章 落陽―乱歩死す 一九五九~六五年/第十章 不滅―横溝ブーム 一九六五~八二年/あとがき

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Posted by ブクログ

「松田聖子と中森明菜」「阿久悠と松本隆」そして本書「江戸川乱歩と横溝正史」、著者は二項対立による文化セクター勃興史というアプローチにますます磨きをかけているようです。今回のセクターは探偵小説。松本清張が登場し探偵小説が推理小説に変わっていくまでの乱歩と正史「ふたりでひとつ」の物語です。いや推理小説時代においてもポプラ社の少年探偵団シリーズや角川映画の金田一シリーズなどのように時代を超えたコンテンツになり得ていることがこのふたりの巨人の凄さです。だけど「明智小五郎と金田一耕助」のお話しで終わってはいません。「ふたりでひとつ」の物語とは、横溝が「新青年」編集者として乱歩の『パノラマ島綺譚』と『陰獣』を書かせ、乱歩編集長の「宝石」が『本陣殺人事件』『悪魔の手毬唄』を送り出していくという「ふたりの作家」の関係ではなく、「編集者と作家」という関係のことです。お互いの才能をお互い認め合って刺激しあって意識し合って批判し合って語り合っての、日本探偵小説史。それが日本出版社興亡史にダイレクトに繋がっているのも面白かったです。文化セクターの勃興ってオタクのコミュニティの顕在化だとすると探偵小説に魅入られたふたりのオタクの物語の愛の物語でした。ふたりで美少年見に行ってたりしてるし…びっくり!

1
2018年03月29日

Posted by ブクログ

乱歩と正史を軸に、探偵小説に関連した出版社の興亡史が楽しめ、また、探偵小説家のキーマンである乱歩の交遊を通して、その他数多の探偵小説家の活躍状況も垣間見られて、探偵小説史(探偵小説業界史とでも言えば良いか…)としても楽しめる一冊でした。
二人がタイトルになっていますが、下手に想像を駆使したりしてエモーショナルな方へとは筆を進めず、手紙、随筆や日記、出版実績などデータとして読み取れるところからの話を淡々と整理されているのが良かったですね。

0
2020年12月25日

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