【感想・ネタバレ】いとも優雅な意地悪の教本のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2017年09月24日

前著「知性の顛覆」で知性とモラルの関係について語り、今回も「暴力」と「意地悪」の違いから始まり、いつもの通りどんどん脱線しながら簡単に結論に行き着かない。この過程そのものが「巨大なる知性・思索」の結晶なのだけれど、自分にとっても、発達障害などの外来で子どもの行動分析にもとても役に立つ考察になっている...続きを読む

「言葉がなくなるとキレて暴力に走る」はその通りで、学校で友達に手を出してしまう子の多くは、言語性のIQが低い。人を罵倒する言葉は得てして2文字で、短い言葉の方が衝撃度が高いからなんてのは独特の思考回路で面白い。だから、暴力を避けるための知恵は、なるべく言葉を長くすること、なるほど! 「死ね」→「死ねばいいのに!」ですか。つまり、暴力は単純で、意地悪はもっとずっと複雑な行為であると。知性の伴った表現で、相手に瞬時に意味がわからないようなものが「意地悪」である。

 そして、意地悪は自分のしたことを隠そうとする方向性があり、社会の本流に属していない人が行う行為である。「社会の本流に属した人は暴力的になり、本流からズレたところにいるものは意地悪になる」

意地悪は、相手に考えさせる行為であるから、教育的な意味を含んでいる。生徒に「自分で考えろ」という導入だけして教えない意地悪な教師が教育的である。

そして、マスゾエ問題を通じて、知性とモラルが分離した現代の、モラルと離別した知性的な人間が下品になったことを説く。
 勉強のできる優等生は、モラルより「勝ち負け」が大事で、不適切な状況に直面して「恥」だと思わない。

 現代の知性人が捨てたモラルは、「自分の外にあって自分の利益を害するもの」で、そうするとエゴイズムをカッコつけて野放しにする方向にしか行かない。知性とモラルが同居していた頃は、内なるモラルが、外なるモラルの変質を修正する機能を持っていた。その発動形態の1つが「意地悪」であった。夏目漱石や樋口一葉。

 現代は、意地悪の批評性が失われた時代なのである。
きっと落語家や漫才師、コラムニスト、一部の言論人も同様に感じているのではないかな?
 知性を磨くだけでなく、知性を取り巻く「内なるモラル」に自覚的に、そしてつまるところ、他者への優しさとコミュニケーションにおけるユーモアを大事にしたいと思った。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2018年03月06日

こういう日本的な感性が書き留めておかれるように外在化されないとまずいと橋本治が思ったということなのかなあ。これ自体げっそりするようなこの日本的感性がやせ細ってネット化することで現状の狭量な感性が出てくるのだろうけれど、こちらには圧倒的な共感の根がない、ということか。
読んでいてしんどくて、今からをど...続きを読むうするのかは何もないけれど、分析としてとても正しい。
くたびれた。昭和は遠い、平成は終わりつつある。

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