【感想・ネタバレ】見えないものに、耳をすます―音楽と医療の対話―のレビュー

あらすじ

ノイズ、即興音楽から「あまちゃん」まであらゆる枠を超えて活動する音楽家・大友良英氏と、幅広く「医療」をとらえこれからのあり方を模索する、今注目の東大病院医師・稲葉俊郎氏。異分野で活躍するふたりは、お互いに「未知の扉を開けてくれる」存在としてリスペクトし合っています。それぞれの原点、受け取ってきたものや今を形づくっているもの、ふたりの活動にも大きな影響を与えた3.11当時のこと、そしてこれからの果たすべき役割について語り合った記録。お互いに投げかけた「10の質問」や好きな音楽と本のセレクトと解説など、書き下ろしも満載。
書籍デザイン:木村 豊(Central67) 撮影:齋藤陽道

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Posted by ブクログ

音楽と医療の重なるところが興味深く浮かび上がってくるお話でした。

部分と全体。全体と部分。
多様性と調和。
専門分化と協働。

視野が広がり、思い込みが緩む感じがして、おもしろく読みました。

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2025年04月05日

Posted by ブクログ

おふたりの空気感が心地良すぎて
読み終えるまでの2時間が一気に過ぎました。
私と誰かの対談が書籍化される世界線は今世ではなさそうですが
それでもいいかなと思えてしまう、諦観のようなものも残っています

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2024年01月27日

Posted by ブクログ

P64
稲葉 姿勢を整えて、体と心の状態を整えて、そこで初めて自分の字が書ける。僕はそれって極めて医療的だなと思ったんですよ。体や心を整える技そのものが。
大友 つまり文字を書くことを通して、まず体の「型」を作るところから整えていくと。
稲葉 そうなんです。「型」さえ作れば、あとは自ずからその人の文字が表れてくる、という発想なんですよ。弓道にしてもアーチェリーみたいに力や道具に頼るんじゃなくて、体の「型」を整えて、その動きに従ってやると、本当に90歳の人でもパット弾けて真ん中に当たる。それは当てるんじゃなくて、自然とそこへ向かっていく、という発想なんです。「道」というのは、自分の体をいかに使うかということを追求した技術や叡智の集大成なんですよ。

P210
稲葉 まさに民俗学者の折口信夫が言っていた「まれびと」に近い存在ですね。全然違う文化からやってきた人はまれびとで、何かよきものをもたらしてくれる存在だと考えられていました。全然違う文化の人が入ってくると関係性が変わると思うんですよね。それを大切にしましょうね、ということが日本のあちこちに残っている。それを恐れとして捉えてしまうと、排除するしかない。秩序を壊す恐るべき存在になってしまう。

巻末で紹介されていた本・音楽
大友良英
・殿山泰司『三文役者あなあきい伝 Part1 Part2』(ちくま文庫)
・田中克彦『ことばと国家』(岩波新書)
・ビル・エヴァンス&ジム・ホール『アンダーカレント』
稲葉俊郎
・井筒俊彦『意識と本質』(岩波書店)
・河合隼雄『昔話の深層』(福音館)
・加藤周一『日本その心とかたち』(徳間書店)
・武満徹『音、沈黙と測りあえるほどに』(新潮社)
・ねじまき鳥クロニクル
・ジョン・レノン『MIND GAMES』
・ニーナ・シモン『Nina Simone and Piano』
・ローランド・カーク『Volunteered Slavery』

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2019年09月23日

Posted by ブクログ

全ての芸術家にとって、その人間性というのは作品の評価とは無関係であるはずであり、極論を言えば、ある芸術家が殺人の罪を犯したとして、その罪が罰せられることと、彼の作品の評価は切り分けて考えなければならない(自らの妻をピストルで撃ち殺したウィリアム・バロウズの罪と、「裸のランチ」に代表される彼の作品の独創性が全く別個に語られるように)。

ただ、そうした前提を置いても、僕にとって、大友さんは優れた音楽家であり、かつその人間性を尊敬できる唯一の芸術家である。生まれ故郷の福島の復興を”祭事”という観点からコミットした「プロジェクト FUKUSHIMA!」や、直近の「札幌国際芸術祭」(この夏に幾つかの会場を訪問したが、どれも非常に素晴らしかった)など、その活躍は枚挙に暇がない。

前置きが長くなったが、本書は大友さんが、東大で心臓内科の専門医として活躍しながら、西洋医学だけに留まらない医療の形を模索する独自の医師である稲葉俊郎氏を迎えて、音楽と医療を主軸に自由な議論をまとめた対話集である。

音楽と医療といっても、音楽療法というような手垢にまみれた古い議論が行われているわけではない。議論のテーマはあるようでないようなものであり、自由な議論の中で読者にとって刺激を与えるような様々なフレーズが出てくる。

例えば、自らの親に対する介護の大変さについて、親と子という1:1の関係性を引きずる形での介護はどうしてもしんどくなってしまう。そこであえて関係性を変えるという観点から、友人の母親の介護を見てみるとか、全く関係のない第三者を入れることで、その大変さが変わってくるのではないかという指摘が稲葉氏から出される。その議論に対して、大友さんからは、それは音楽においてもそうで、80年代後半の即興音楽シーンの中で、ニューヨークからやってきたジョン・ゾーンによって、津軽三味線と現代音楽とロックのミュージシャンを同じステージに上げるというような異種混合が自然とできるようになった、という話題が出される。硬直的な関係性を壊すために、あえて異物を入れてみるという考え方は汎用的なものとして成立し得る気がする。

読み手によって面白いと思うポイントは様々だと思うが、なにか新しい世界に触れてみたい、と思う人にとってはヒントが得られるのではないか、そう思える一冊。

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2017年11月19日

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