【感想・ネタバレ】リベラルという病(新潮新書)のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

私が思う、日本でリベラルと名乗る人たちのイメージは、ちょっと自分と考えの違う人たちを見るとすぐ差別だ差別だと「レイシスト」のレッテルを貼るやっかいな人たちというイメージしかなく、まあ、この本を読んだらその「リベラル」とやらの元ネタがわかるのかな、という気持ちで本書を手に取った。
思ったよりも深くアメリカの歴史や人種観などがわかりやすく書かれていてよかった。予備知識がなくてもある程度理解できるように書いてあるところは、さすが、頭のいい人のなせる技だ。
LGBTQQIAAPPO2Sのくだりは本当に今のアメリカの現状をよく表していて、発言ひとつにどれだけ気を遣わねばならないのか、という感覚が理解できた。日本でも、議員があくまで「優先順位」の話をしただけで大炎上して脅迫騒ぎにまで発展したことは記憶に新しいが、このことは差別を懸念するあまり物事の本質が見えなくなってしまっている危険な事態だと思う。
また、著者は2016年を日本のPC(ポリティカル・コレクトネス)元年と振り返られる年になるかもしれない、としていて、2016年と言えば電通の女性社員が自殺し、彼女が上司から「女子力がない」と国際社会からすればとんでもないセクハラを受けていたことも明らかになり、また、資生堂インテグレートのCMが女性の美しさ、生き方に対して非常に押し付けがましいCMを打ち出して炎上したのもこの年だ。
このように日本人の意識が良い方向に「向上」している面があるのも認めるが、オリジナルのアメリカでも抱えきれてない矛盾のある「リベラル」をなんでもかんでも輸入していては、この島国がそれとうまく共存できるはずがない。
黒人に対する差別も、また、解消しきれない芽がどんどん水面下で育っている。「対話」の時間では、黒人の生徒が「今まで白人が黒人に対してどんなにひどい扱いをしてきたか」を語り、白人の生徒はただ目を伏せて聞くという光景が見られるそうだ。それもまた新たな憎悪を生むきっかけとなってもおかしくないのである。
また、アメリカの9人の最高裁判事は大統領によって任命される、しかも40代くらいで選ばれると、亡くなるか引退するまで40年くらいは判事であり続ける。よって、アメリカの大統領になったからと言って、最高裁判事の任命の機会に恵まれることはそうそうない。逆に言えば、もうまもなく引退しそうな判事がいる、というタイミングで大統領選が行われた場合には、有権者たちは、この候補者が大統領になったら、最高裁判事として誰を任命するか、というところまで視野に入れて投票しなければならない。最高裁判事がリベラル派かコンサバ派かというのは国民の生活にダイレクトに関係してくることだから。
つまり、Aという候補者には大統領になってほしくないけれど、Bという候補者にすると変な判事を選びそうだから、ここは4年我慢するつもりでAに入れておくか、という考え方もあるらしい。
全体的には同性愛をどこまで認めるか、結婚は?親権は?日本の政党とアメリカの政党の違いはなにか?というテーマで、非常に興味深く読めたが、一番印象に残ったのは上記に記したものである。

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2018年11月04日

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