【感想・ネタバレ】大学とは何かのレビュー

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Posted by ブクログ

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大学を「コミュニケーションメディア(=媒介)」の一種と捉え、大学再定義を試みる。しかし、大学は「何々である」という普遍的な定義ではない。中世の都市、活版印刷(出版)の出現、近世の国民国家の出現と共に大学の定義は揺らいできた。ネットの出現により、メディアとしての大学の位相も劇的に変化しつつある。現在の最も大きな位相の変化は「国民国家の退潮」である。そして、国民国家の中で設立された旧制大学(特に帝国大学)モデルは、大きな転換が求められている。そのキーワードは「マネジメント力」であるようだ。
教育面でのマネジメント力の強化のキーワードは、「リベラルアーツ」である。従来の「教養」とは異なる、「リベラルアーツ」を中世のそれをモデルにして再構造化するというものある。つまり、上級学部である「神学も法学も医学も秩序の知で、様々な矛盾がひしめき合う中で、いかに秩序を保ち、その状態をマネジメントしていくかという問いに対する答えを、神の秩序と社会の秩序、そして人体の秩序の3つのレベルで提供してきた」が、ここで生じる「諸々の矛盾する要素を総合的に結びつけ、安定的な秩序を創出するマネジメントの専門知」としてのリベラルアーツに注目し、次世代の専門知として求められるのは、「すでに飽和しかけている知識の矛盾する諸要素を調停し、望ましき秩序に向けて総合化するマネジメントの知」であり、その再構造化としてのリベラルアーツの必要性を訴える。確かに中世の大学では、学生や教師の移動性や共通言語を有していた点も、現代の大学に通じる。グローバルな社会の中で、中世の大学の成功と失敗から学べる点は多い。

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2017年05月02日

Posted by ブクログ

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中世の大学の起源から、フンボルト型大学、帝国大学、戦後型大学と、その設置形態、目的、理念の変化をたどる。現代の大学がいくつかの改革を経てなお、70年代に提起された問題に完全に答えられていない、という指摘に頷かされる。

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2014年03月16日

Posted by ブクログ

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最初は非常に難しい(とわたしは感じた)昔の海外の大学の出来かたやいまの日本の基礎になった帝国大学のできかたなどについて非常に学問的に解説している。

戦後の大学改革について、筆者は「たくさんの分野を結びつけるのが真の教養主義」と言っていて、現在の日本の大学のもとになった部分を痛烈に批評している。つまり「大学は真の大学の体をなしてないのではないか?」ということを読み取った。
大学紛争と最近の大学改革についても言及している。

それでも大学は必要、でももっと頑張らなきゃね、という筆者の言葉には、もっと頑張らなきゃなと思わせてくれる。大学に関わる中級者向けかな。

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2012年03月19日

Posted by ブクログ

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岩波書店でこのタイトル。
しかも著者は教育学者ではない。
興味津々で読んだ。

目次だけ見ると「大学の歴史を振り返るのか」と思われたが、「メディアとしての大学」の視点があるため、これまで知らなかった大学像が立体的に浮かびあがってくる。

・キリスト教は、日本の大学システムの形成期と転換期の二度にわたり、ペリー提督やマッカーサー元帥以上に大きな役割を果たした (P186)

・(国立大の法人化について) 財務構造にすでに劇的な変化が生じているのに比べ、組織運営のあり方があまり変化していないように見える最大の理由は事務組織や職員の意識と能力が新しい体制に追いついていない点にある (P231)

・現在の状況に有効に介入しうるような新しい大学概念を、歴史と未来の中間地点に立って再定義していく (P239)

・ グーグルやアップル、フェイスブックといった新たなネット上の知識システムに対し、大学という相対的に古い知識形成の場が何を固有にできるのかを明らかにせざるを得ない時が来ている (P249)

など、多くの箇所を備忘録に留めた。

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2012年01月15日

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