【感想・ネタバレ】イスラム唯一の希望の国 日本のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

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イスラムで日本に敵意を持っている人はごく例以外的(b15)であり、イスラムと日本との似通った心情やイスラム世界から日本への尊敬・畏敬・親近感でつながってきた(b19)。なぜなら日本は欧米諸国のように中東イスラム世界を軍事的に侵略したことはなく、インドやパキスタンの分離独立のように植民地主義の負の遺産をもたらすことはなかったから(b21)。
また、日本人がイスラムで評価されるのはその社会貢献に対する姿勢で、日本人は対等に付き合うから信頼される(b47、49)。
ヨーロッパでもムスリムを拒絶するだけではなく、デンマークのように元過激派の帰還兵たちに対して社会に順応するためのプログラムを行っている(b190)。なぜなら彼らをテロへと駆り立てるのは社会からの疎外感や貧困だから(b206ー208)。(実際、イギリスのムスリムたちの生活環境は良くない(b242)上に、教育を受けたムスリムたちは第三国に適応しているものの、そうでない人たちは社会的疎外感があり彼らを宗教的イデオロギーをつかって戦士として駆り立てようとしている(b274、b297))。また、アメリカのムスリムたちに関して言えば他の宗教にも寛容で時と場所に応じて柔軟に対応しており穏健な人が多いが2017年にトランプ大統領が就任してからはグリーンカードを持っていても海外渡航をすればアメリカに戻れないという状況になっている(b332、334、340、342、343)。
そんな中日本は着実にイスラム世界との関係を築いてきた。日本の「相互扶助」の精神がイスラムの喜捨と通じていて高い評価をうけている(b810)また、マレーシアは日本製品や文化を通して親日になり(b1076)、パレスチナやイスラエルでは柔道が盛んでそれが閉塞感をぬぐっているのかもしれない(b1106、1114)。
日本は当然それ以前からシルクロードを通じてイスラムとのつながりもあった(第四章)し、琉球列島においては日本本土よりも交易を開始したのが早かった(オスマン帝国の銅貨と琉球列島、b1272)。
ハンチントンは『文明の衝突』の中でスペインとイスラム文明の共存の姿を見出している。イスラム王朝はユダヤを差別することもなく、両者の通婚も自由で外敵ではなく、だからこそスペイン語の10%はアラビア語を語源としており、ファウストやじゃじゃ馬ならし、裸の王様の原型はすべてペルシャ・アラブからスペイン経由でヨーロッパに持ち込まれた(堀田善衛:『ゴヤⅠスペイン・光と影』)。

リサーチ項目
大川周明:イスラムとの連携が必要と訴えた(b35)、イギリスのイラク支配に激しく反発した(b1604)
レシャード・かレッド(アフガン人医師):カレーズの会(b66)
森永堯(たかし):日本トルコ協会(b711)
カタールのタミム首長:モットー「日本に学べ」(b883)
日本のアニメとハラールを合わせたら商機になるかも(b1106)
山田寅次郎:エルトゥールル号の募金を募って取ること関係を深めた(p1382)
アブデュルレシト・イブラハム:林銑十郎と「大日本回教協会」を設立
大久保幸次:イスラムの平和イメージを広めた(b1797)
尾崎三雄:(『日本人が見た30年代のアフガン』石風社2003年参照に)
モハメッド・ヘイカル:エジプト人ジャーナリスト(b2012)
堀田善衛:『ゴヤⅠスペイン・光と影』集英社
ハンチントン:『文明の衝突』の中でスペインとイスラム文明の共存の姿を見出している。
村上春樹:影との共生
中近東文化センター、三鷹にある
難民を助ける会

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2020年01月24日

Posted by ブクログ

イスラムと日本はこれまでの歴史においていい関係を作ってきたという事がよく分かった。この遺産を食いつぶすだけでは情けないと思った。偏見はなくさないとなあ。

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2017年04月06日

Posted by ブクログ

互いを理解しなければ真の友情は生まれない。表面上の付き合いはちょっとした勘違いや、誤った情報により簡単に壊れてしまう。我々は多くの情報をニュース報道やインターネット上の(日本語で流れる)記事から入手する。それは要点を絞って上手く纏められる事で、分かりやすく感じる。仕事や学業で疲れた頭でニュースソースの信頼性を疑う事までして脳の疲労をさらに加速させるような事をせず、ただ(何となく)受け入れる状態になっている。それが積み重なると、一つ一つの問題や事象を表面に露出した分かりやすい部分だけを掻い摘んで見るような癖がつく。当たり前だが、ニュースで流れてる映像は大半が物事の結果であり、背景や事情よりも「だからどうした」の結果部分の比率が大きい。そして過激な映像や事象ほどその結果のインパクトは脳裡に深く焼きつく。911の同時多発テロを思い浮かべるとき多くの人はワールドトレードセンターへ突入する飛行機の映像がまず出てくるだろう。「ほら、言わんこっちゃない、イスラエルをアメリカが支援するからこんな事になるんだろう」と犯人が誰であるか、その思想は、きっかけは、結末に至るまでの背景や原因を、時代の変遷と共に流れで追い掛ける人など僅かであろう。結論部分のインパクトばかりが強調され、結局原因部分を忘れてしまうから、同じようなテロ行為が世界各地で繰り返され、その多くは実行犯側への憎悪の助長に繋がっていく。勿論、多くの人々を死に追いやる様なテロ行為は実行犯を擁護する必要性はなく、単なる悪であることは間違いない。問題はそうした事象を起こした犯人の考え方を同じ宗教を信仰する人々にまで拡大して解釈してしまう事だ。この場合イスラム教をまるで一つの大きな括りで危険視するような動きがそれにあたる。一時期、ニュース報道ではイスラム教原理主義をあたかも危険な思想と勘違いするような映像が繰り返し流されたが、危険なのは原理主義では無く、単なる過激派の思想であり、当たり前だが原理主義イコール過激主義ではない。けれども多くの人が勘違いしてしまうのは、流す側の手法と受け手側の単純思考が一致した結果だと感じる。
本書はイスラム世界の現代の潮流と過去からの日本の関わり合い方について、実際の活動者や影響を与えた事情を例示しながら、分かりやすく解説していく。それらが、イスラムの教えのどの部分に該当するかを合わせて記載し、単なる表面上の仲良しこよしでは無く精神的な繋がり合いに起因する事を教えてくれる。そしてそれらが、固い絆でありながら、日本の現代の外交の在り方によっては、徐々に失われて行く危険性を孕んでいる事も同時に伝える。時にアフガンで灌漑活動に従事した故中村医師の様に、誠心誠意尽くしてきた活動家ですら、当時の勢力争いの中で無常に失われて行く。それがまた新たな負の感情のうねりになり、亡くなった中村医師の希望や想いとは全く別の方に向いてしまわないか不安に陥る。だがイスラムと日本の深い関係性を時系列で理解し、その絆の固さを知っているなら、加えて現地の今の状況を政治的に押さえているなら、修復も回復もできると信じることができる。
そうしたイスラムとの一つ一つの繋がりの理解につながる点では、こうした書籍は参考になる。

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2024年05月12日

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