【感想・ネタバレ】汝の名はスパイ、裏切り者、あるいは詐欺師 インテリジェンス畸人伝のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

【裏を見た裏のある人々】ジョン・ル・カレやキム・フィルビー,さらにはアサンジやスノーデンに至る,情報(インテリジェンス)の分野で名を残した畸人たちに焦点を当てた作品。時代の変遷と共に移り変わるスパイ像を垣間見せてくれています。著者は,『外交敗戦』や『ウルトラ・ダラー』等の作品で知られる外交ジャーナリストの手嶋龍一。

「こんな人物がいたのか!!」と楽しみながら,情報や外交に関する読み解き能力を高めてくれる一冊。それぞれのエピソードに人物紹介も挟まれるため,追体験的にもスパイの世界を満喫できるはず。ところどころに散見される手嶋氏ご自身のエピソードもどこか「芳醇」で◎。

〜あまりに精緻に近未来を言い当てた情報は,打ち捨てられ,無視される。これがインテリジェンスの哀しい性なのだ。溢れんばかりの人間的魅力で敵側からも信頼された者が手に入れる情報。それは凡庸な人々の烈しい嫉妬を買ってしまう。これもまた情報が持つ宿命なのである。〜

読書リストがついている点も☆5つ

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2019年02月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 もう遠い昔と思っていたけど、今年起こった騒動だった「パナマ文書」。そんな書き出しと、もくじをパラパラと見ると、スノーデンの名前もあるので、今年の世界情勢の反芻と来年初の映画鑑賞(『スノーデン』オリーバー・ストーン監督)の予習の意味で読んでみた。

 タイトルにあるように、事象というより、その騒動を彩った人物等、背景、歴史に焦点を当てていく本書。「パナマ文書」をとっかかりに、パナマという中米の小国が、世界的な要衝である運河を軸に、生存を懸けての生き残り策を、超大国アメリカや世界を相手に策謀を巡らせる。
 資源を持たない我が日本も参考とすべき戦略が見え隠れしている気がする。

 そんな話から、パナマ文書で名を馳せた?パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」の成り立ち、創設者2人の背景から、やがてそのパナマを舞台に編まれたジョン・ル・カレの「パナマの仕立て屋」へと話が広がる。

 1930年のパナマ運河条約、カーター政権時代の1977年の新運河条約へ、租借権の変遷からパナマを取り込もうと、その時代時代の列強がかの地に触手を伸ばしエスピオナージ・ストーリーにはうってつけの舞台が誂えられていたという話だ。

 次に、著者は「パナマの仕立て屋」の著者ジョン・ル・カレの生い立ちを語る。苦手な作者のジョン・ル・カレ、元英国の情報機関MI6の出とい話は知ってはいたが、壮絶な生い立ちの話はなかなか面白かった。

「作家の預金残高はその子供時代にあり ― 。」

 そんなグレアム・グリーンの言葉を引いて、ジョン・ル・カレの育った環境を記す。

 その後、世紀のスパイ、ゾルゲ、二重スパイ、キム・フィルビー、稀代のハッカー、アサンジ…と、時代を遡り、スパイ列伝という本書だ。

 ちょっと思っていたほど”現代”の諜報活動の話が少なかったのは残念だったが、最後はスノーデンの話へと、情報戦の主戦場がサイバースペースへという変遷を描く。
 とはいえ、最後は、濃密な人間同士のやりとりにいきつくと著者は記す。

 「人間力を駆使して持ち帰る情報こそ、ダイヤモンドのような輝きを放つ」

 ひょっとしたら、もうその発想(思い?)そのものが旧いのかもしれないが、IT技術と人間力の相克は今後もしばらく続くのだろうなあ。

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2017年02月01日

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