【感想・ネタバレ】英語化は愚民化 日本の国力が地に落ちるのレビュー

あらすじ

英語化を進める大学に巨額の補助金を与える教育改革から、英語を公用語とする英語特区の提案まで。日本社会を英語化する政策の暴走が始まった。英語化推進派のお題目は国際競争力の向上。しかし、それはまやかしだ。社会の第一線が英語化されれば、知的な活動を日本語で行ってきた中間層は没落し、格差が固定化。多数の国民が母国語で活躍してこそ国家と経済が発展するという現代政治学の最前線の分析と逆行する道を歩むことになるのだ。「愚民化」を強いられた国民はグローバル資本に仕える奴隷と化すのか。気鋭の政治学者が英語化政策の虚妄を撃つ!【各界の識者が絶賛!】●佐伯啓思(『さらば、資本主義』著者・京都大学名誉教授)公共精神を失ったグローバル・エリートが日本を破壊する。それが英語化だ。その欺瞞を本書は見事に暴き出した。●水野和夫(『資本主義の終焉と歴史の危機』著者・日本大学教授)日本の経済と民主主義を破壊する「英語化の大罪」を明らかにした力作。凄い本だ。●中野剛志(『TPP亡国論』著者・元京都大学大学院准教授)日本人が抱く直観的な不安に確かな根拠と論理を与えてくれる。これぞ名著。●白井 聡(『永続敗戦論』著者・京都精華大学専任講師)社会の根底から対米従属構造を強化するのが英語化だ。本書は、これと闘うための優れた『武器』である。【目次】はじめに/ 英語化は誰も望まない未来を連れてくる/第一章 日本を覆う「英語化」政策/第二章 グローバル化・英語化は歴史の必然なのか/第三章 「翻訳」と「土着化」がつくった近代日本/第四章 グローバル化・英語化は民主的なのか/第五章 英語偏重教育の黒幕、新自由主義者たちの思惑/第六章 英語化が破壊する日本の良さと強み/第七章 今後の日本の国づくりと世界秩序構想/おわりに ――「エリートの反逆」の時代に

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Posted by ブクログ

ネタバレ

日本の公用語を英語やフランス語に変えるべきという意見は、明治期以降これまで幾度となく議論されたが、世論を得られず実現しなかった。しかし、新自由主義の考え方が一般的になった昨今は事情が異なる。新自由主義が一因となって進行する「グローバル化」は、「時代の流れ」という認識(歴史法則主義)のもと、各国の経済政策は、自国の状況に合わせた政策を打つ自由度を失い「拘束」される。結局、外国資本の比率が高くなった経済界の論理が絶対視されるのである。下(現場)からの反発があっても、意思決定のスピードが優先され、多様な意見に耳を傾ける民主的意思決定のプロセスが切り捨てられてしまう。
このような中で進められる英語の公用語化は、自由民主主義を破壊し、国民の知的成長の機会を奪い、結果的に国力が退化させるというのが、本書の批判の肝である。その主な理由は、次のとおりである。

・民主主義の前提条件となる国民の連帯意識を奪う。
・連帯意識がなくなると福祉政策が成り立たない。
・日常の言葉(母語)で政治を論じることが大切。
・言語の分断(英語能力の有無)が格差を生み出す。
・職業選択の自由を奪う。
・自分たちの潜在能力を発揮できるに至らない。
・英語を身につけるための莫大な時間と労力。

土着語で学ぶことが社会全体の活性化を促した重要な前例として、宗教改革がある。贖宥状の販売に代表されるようなカトリックへの批判を強め、1517年にマルティン・ルターが、ヴィッテンベルク市の教会・城内に「95ヵ条の論題」を張り付けたことが始まりとされる。しかし、宗教改革では、聖書をラテン語から土着語に翻訳したことも重要だ。ルターはドイツ語に、ティンダルは英語に、オリヴェタン(カルヴァンの従兄弟)はフランス語に翻訳した。こうして、当時の「ラテン語という『国際語』『文化語』『学術語』『書物の言語』に対してひたすらコンプレックスを持ち続けていた人々」が、自分たちも、日頃使って暮らしているごく身近な言語を通して、最高度の道徳や知識に触れ、活動することができるという自信を獲得した。これが近代化への原動力になったのだ(pp.46-66)。

英語偏重の教育改革提案は、児童・生徒の将来の幸福や日本の長期的な安定や発展、日本の学術文化の興隆といった観点からではない。「新自由主義的」な経済の論理から発しているのである。しかし、英語偏重の教育改革は結局、世界の「英語支配の序列構造」の中で、日本が非常に不利な立場(搾取される植民地のような立場)に置かれるのは必至であるというのが、著者の主張である(p.218)。

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2018年02月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ぜひ読んでください!としかいえない気がします。
『このままではインド版アントニ・ガウディは永遠に生まれない。専門教育が英語でしか提供されない環境では、他人のコピーしか作り出せない』
『他方、英語を公用語の一つに加え、日本よりも英語が堪能な人々が数多くいるフィリピンなどのアジア諸国、あるいはケニアなどのアフリカ諸国は、さほどの経済力を備えていない』
『英語化が日本人の愚民化を招くと半ばわかっていながら、エリートたちは、日本の社会の英語化に躍起になっている。本書の批判は、英語が得意な人々へのものではなく、国民の知的成長の機会を奪い、国力を低下させようとする人々に向けたものである。』

そして、もっと日本語に接してやさしくなりたいとも思いました。
『海外の日本語研究者や日本語教師、あるいは日本語学習者の間では以前から、「日本語を学ぶと、性格が穏和になる」「人との接し方が柔らかくなる」ということが指摘されていたそうだ。』

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2017年08月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

英語化は愚民化 施光恒

母国語を捨て、外国語による近代化をはかった国で成功したものなどほとんどない。学問を英語で教えることにより、英語に時間をふんだんに割ける少数の特権階級だけが文化を独占することになってしまい、一般大衆と大きな格差と断絶が生じてしまうだろう。

モルレーは教育とは全世代までの伝統の蓄積にたって行われるべきものであり、まったく新しい基礎の上で成り立つものではない。

教育政策で変えていいものと悪いものがあるが、教育で用いる言語はもっとも変えてはならぬものと述べている。

近代化のプロセスで不可欠だったのが翻訳である。普遍と目された多様な外来の知を翻訳という作業を通じて各社会の既存の言語や文化のなかに適切に位置付ける。つまり、土着化さる。この翻訳と土着化は、言語的翻訳だけではなく、外来事物を解釈し、自分たちになじみやすいように、変容させ、それぞれの言語や文化のなかに適切に 位置付けられる。

日本人が英語が下手なのは。日本が近代化に成功し、英語を用いなくても生きていけるからである。

日本が目指すべき世界秩序は、それぞれの母語で豊かな人生を送る事ができることだ。

創造性は母語で思考する事によって磨かれる。

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2015年08月07日

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